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Elysion Online  作者: 乾 碧
2章
43/60

拓斗の日常 #4


「ねぇ、たっくん……」


放課後。拓斗(たくと)美樹(みき)はいつものように帰り道を歩く。手を少し差し伸ばせば届く、そんなもどかしい距離を保ちながら。


「うん? 」


いつもならここには(とも)がいて、そんな間に割って入ろうとする。


しかし、今日は智がいない。友達の家に寄るかもしれない、と昼休み、美樹がギリギリに昼飯を食べ終え、急いで教室に向かっていた時、何故か拓斗達の教室の前で待っていた智はそう言ったのだった。


「手……、繋いで良いかな……? 」

「どうした? いつもならそんなこと聞かずにしてくるだろ? ほら」


いつもと調子の違う美樹にちょっと驚きながらも、拓斗は美樹の左手を握る。


「はは、そう言えばそうだね」


美樹は、優しく包まれている自分の左手を見ながら言う。


「ねぇ、たっくん……? 」

「今度はどうした? 」

「今日、たっくんの家……、行っても良いかな? 」

「別に良いけど……、どうしてだ? 」

「Elysionやりたいなぁって……」

「それなら、俺の家に来なくても出来るだろ? 」

拓斗は何で美樹がこんなことを言い出したのかが、分からなかった。

「たっくんの隣にいたいの……」

「え…………? 」


……俺の隣……?


「Elysion始める時も、終わった後も、たっくんに隣にいて欲しいの。その方が何か……、心強いから……」

「分かった」


美樹に心を揺さぶられた拓斗は、美樹の言葉に頷くしかなかった。


「ありがとっ。たっくん」


元気良くそう言うと、美樹は拓斗を引っ張りながら走ろうとする。


「こら、美樹。そんなに急がなても」

「良いの。私は早くたっくんとしたいんだから」


そう言うと美樹はかけている眼鏡を外し、着ている茶色のコートのポケットにしまいこんだ。


「おい、美樹……」

「ん? 何……」


隣を走っている眼鏡をしていない美樹の顔は、拓斗にとって新鮮だった。


「眼鏡無くて見えるのか……? 」

「うん。見えるよ? 」

「じゃ、その眼鏡は何なんだよ……」

「キャラ作りだよ、キャラ作り。この方が賢そうに見えるでしょ? 」

「そりゃそうだけどさ、美樹はそんなことしなくても頭良いだろうよ」


クラスではトップ。学年でも上位10位以内には入る実力の持ち主なのだ。ちなみに拓斗はどちらの順位も美樹の下で、テストの度に歯痒い思いをしている。


「そうかもしれないけど……、そっちの方が面白いからさ」

「そんな理由かよ……」

「たっくんは、どっちの私が良い? 眼鏡してる方か、してない方か」

「うーん。それは難しい質問だな……」


そう言いながらも、拓斗の中にはもうすでに答えは出ていた。

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