プロローグ #2
「Elysion スタート」
そう発せられた言葉に合わせて、智の身体はふわっとした感覚に包まれる。
「初めまして。Elysionへようこそっ! 」
自分の身体が真っ白い空間に出たかと思うと、智はある物を発見した。
「わっ!! 」
「驚かせちゃったかな? ゴメン」
智の前に突然現れた人型の妖精はそう言う。
「そんな事ないけど・・・・・・、もしかしてあなたが・・・・・・」
「そう。僕はカロン。これからキミをElysionの世界に案内するために作られた人工知能、所謂AIってやつ」
・・・・・・すごい・・・・・・。
智は端的にそういう思いをいだいた。
発売日の前日、つまり昨日に兄の拓斗と一緒にElysionの公式サイトで案内人がいるというのは、確認していた。
「それで、キミを早く案内しないといけないから、色々聞いていくね」
「あ、うん」
「まずはキミの名前と、あっちで使いたいキャラクターネームも一緒に教えてもらえるかな」
「鷺ノ宮智が本名で、使いたい名前は・・・・・・」
・・・・・・にぃに気付かれやすいほうが良いかも。
「トモでお願い
「うん。トモだね。本名を使ってるという事は友達とかと待ち合わせでもしてるのかな? 」
「ま、まぁそういう感じ・・・・・・」
「次は身長と体重、後嫌かもしれないけど、3サイズも教えてもらえるかな・・・・・・? 」
「えっ!? そんなところまでっ!? 」
「うん。ゴメンね。これも【友好数字の悪戯】に必要な事なんだ」
「そうだったね・・・・・・・」
公式サイトのシステム一覧にそんな事が書いてあったのを智は思い出した。
・・・・・・恥ずかしいけどこれが自分のキャラに投影されるんだったっけ・・・・・・。
【友好数字の悪戯】。
それはElysionの世界で友好的に、楽しく過ごせるように置かれているシステムだ。
今まで作られたキャラの男女比に合わせて、その新しく作られたキャラの性別を決めて行くもの。女キャラの場合は3サイズにも変化が現れる。
短くまとめるとこうだ。システムの都合上、男が女になったり女が男になったりするのだ。
「身長は156cm、体重は45kg。す・・・・・・3サイズは上から82/55/79・・・・・・」
「うん。ありがと。後は・・・・・・年齢だ。それで最後だよ」
「16歳です」
「ん、分かった。よしっ。これでおしまい。すぐ始める事が出来るけど、どうする? 」
「やりますっ」
「そうか。じゃ、一回目を閉じてね。今からキミをElysionの世界に送るから」
「分かった」
智はAIのカロンの指示に従い、目を閉じる。
「行くよ。楽しんできて」
その声とともに、智の身体は強い光に包まれた。