嵐の前の静けさ #9
Elysionでは、ゲームの中でもファッションを楽しんで欲しいという運営の意向により、様々な服が用意されている。そのファッションは現実での流行や、季節によっても変わったりする。
何故そんなに戦闘等には、全く関係のない服等が重要視されているのか。
それは、【ディティ】等、全ての街において、武器、防具などの装備が認められてないからだ。
例外で認められているのは、プレイヤー同士の決闘の時や、ギルドの最重要役職等に就いている物。この2つだけである。
「トモはどうなの……? 」
「ん? 」
「トモは服……、気にしてるの……? 」
現実では男であるハルは、それほど服やアクセサリー等には興味がない。この世界で女になってみても、それが変わる事が無かったのだが、トモに言われ少しは興味が湧いてきたのだ。
「今着てるやつは、最初のままだね。セルが貯まったら買うつもりだよ? 防具とかよりもさきにね」
「ふぅん…………。そうなんだ…………」
少しばかり興味が湧いたハルであったが、服を先に買うという発想はなかった。どうしても、戦闘の事で頭が一杯になってしまう。
「このダンジョンから帰ったら、買いに行く? 」
「服を…………? 」
「うんっ。ここでしかこの身体でいられないんだからさ、楽しまないとね? 」
トモはハルに詰め寄るようにして言う。
「ち、近いって…………」
「あ、ゴメン……」
トモは少し距離を取る。
「買いに行くのは良いよ。楽しそうだしね」
「良いの? 」
「うん。でもさ、武器屋も覗いて良いよね? 」
「良いよ。それじゃ、速く行こうっ! 」
トモが右手を天に向かって突き上げたので、ハルもそれに倣って、気合を高めてみる。
「よしっ。行こうか」
ハルを先頭に、アーロン川のほとりを歩く。
「この川ってさ……。普通の魚もいるんだよね? 」
トモはそうハルに尋ねた。
「そうだけど……、それがどうしたの? 」
「じゃあさ、釣りとか……、出来るの……? 」
「どうなんだろうね…………」
そう言うとハルはウインドウを開き、なにやら調べ始めた。
トモはそんなハルの横に並び、ハルのウインドウを覗き見る。
ハルが開いていたのは、Elysionの公式攻略サイトだった。




