嵐の前の静けさ #8
だからこそ、トモも周りの気配を感じ取ろうとする。主に後ろからの。
前からの敵については、心配する必要はない。なぜなら、ハルが守ってくれるからだ。
ハルはそう言ってくれた。トモは昔からの付き合いで、ハルが嘘をつかないということを知っている。
それ故、安心して前衛を任せることが出来のだ。
「もうすぐだよ」
5分くらい経っただろうか。ハルがそう声をあげた。
それに合わせて、トモは薄暗いこの【深淵なる森】に、少し光が射し込んできたことを確認した。
「わぁ…………」
トモ達の視界に広がったのは、流れる1つの大きな川と、そのほとりに咲いている花々だった。
「【アーロン川】マップデータ更新」
システムがそうトモに告げる。
【アーロン川】
【深淵なる森】の先にあるダンジョンで、魚系のモンスターが沢山に出現する。チュートリアルで使われるダンジョンの1つでもある。
アーロン川のほとりに咲いている花々は薬草で、合成技能と組み合わせて使うことによって、効果を発揮する。
「花だ……」
トモはそこに駆け寄り、しゃがみ込む。
「綺麗なのは分かるけど、気を付けてよ。普通の魚も泳いでるけど、その中にモンスターもまじってるから……」
「うん。分かってるよ」
そう口では良いながらも、ハルの目には全然聞いていないように見えた。
「はぁ……。全く……」
そんなトモにため息をつきながら、ハルも川岸に自分の身体を運ぶ。
花達は単純にアーロン花と呼ばれるものだ。
赤や青、紫や黄色等、様々な種類の色が存在し、赤なら体力ポーション、青なら魔力ポーション、といった具合にその用途を変化させる。
ハルもトモと同じように、アーロン花を手に取って、その匂いを嗅いでみる。
「パンジーとか、それに近い匂いがするよね……? 」
「そう? あまり興味ないから分からないけど…………」
「ハルはこれを気に、女の子っぽい趣味を見つけると良いと思うよ? 」
「そうかもね」
まだ花を真剣に、楽しそうに見ているトモを横目で見ながら、ハルはアーロン川を泳いでいる魚に目をやる。
どちらかと言うとこっちの方が自分に合ってると、ハルは思う。
「ちなみに聞くけど……、女の子っぽい趣味ってどんなのがある? 」
「んーと……。そうだね…………」
「あ、こっちの世界での趣味だからね? 」
「あ、うん。分かった……」
トモは額に手を当て。
「今の私みたいに花を愛でてみるってのも良いと思うし、自分の服装に気を配ってみるのも良いかもね」
「服か……。なるほどね…………」




