嵐の前の静けさ #6
「でさ、どうする? 1層の他のダンジョンか、2層に行ってみたりとか、色々案はあるだろうが……」
ハルは立ち上がると、シュッシュッとシャドウボクシングをしながら、わくわくとした雰囲気を醸し出していた。
「私はどっちでも良いよ。ハルについていくから」
「そ、そうか…………? 」
「うんっ」
ハルの言葉にトモは、微笑みを返す。
Elysionは、1層から90層まであり、それぞれ第1区画から第9区画に分かれている。
その場所それぞれに沢山のダンジョンが存在しており、1層、2層と下っていく毎に、当たり前だが出てくる敵のレベルは上がっていく。
下に下るというように、このエリュシオンの全体は上に登って行く塔ではなく、下に行くほどその大きさが小さくなっている漏斗状のものになっている。
「うーん……。トモ」
「ん? 何? 」
「私のレベルは10なんだけど……、トモはどうなの? 」
「…………ふふ」
普通に「私」と言ったハルに、トモは少し笑ってしまう。
「どうした……? 」
「いや……、何でもないよ。7。これが今の私のレベルだよ? 」
昨日イルヴァーナを倒したことにより、レベルが5から7に上がったのだ。
「私より下か…………」
「ハルが【深淵なる森】以外に行きたいなら良いんだよ? 」
「【セル】を稼ぐってもあるよね? 」
「そうだね。あの殺風景な部屋ではちょっと……」
「そう……? 私はあれでもいいけど……」
「それはハルが男だからそう思うんじゃないの? 今は女の子だけどさ……」
「そうかも…………」
トモにはレベルを上げたいというよりも、あの部屋を綺麗に可愛くしたいという思いもある。
「ハルはどこに行きたいの? 」
「【アーロン川】って所があるんだけど……、そこにしようかなって」
「アーロン川? 」
「うん。場所的には深淵なる森の先にあるんだ。深淵なる森にまず行かないといけないんだけど……」
「そう。なら行ってから話を詰める? 」
「うん。それで良いと思うよ」
「すぐ行く? 」
「うん。その前にパーティ組まないと。そうしないと別々の場所に飛ばされてしまうし」
「へぇ……。そうだったんだ」
パーティ申請のシステムメッセージが、ハルから届く。
「承認っと……」
承認してすぐに、視界の左端上部、Elysionと現実の時間が表示されている部分の下に、ハルの名前とレベル、そして体力が表示されている。
ハルの視界にはトモのこの情報が表示されていることだろう。
「リーダー。私で良い? 」
トモはそうハルに尋ねた。
「うん」
「ありがとっ」
座っていたトモは立ち上がり、噴水に右手を翳す。
その動作に合わせるように、1つのウインドウがトモの目に映る。




