嵐の前の静けさ #5
トモは昨日、初めてここにElysionに来た時と同じように、ベットの上で身体を起こした。
基本的にログアウトした場所で目覚める事が出来、その場所からゲームを始められるようになっている。
だが、例外が存在する。
ボスフィールドにいる時だけはログアウト出来ない。ボスと戦っている時に逃げるようにログアウトされたら、仲間もシステム側もたまったもんじゃない。
「よしっ……! 」
装備品なのかどうかよく分からない【スツール】を身に付け、トモはゲーム内自宅から飛び出す。
トモが向かう先は、昨日と同じで第4広場である。
【ディティ】の街は広く、広場等を使わなければ、待ち合わせなんて出来たものではない。ましてそれぞれが初心者である今なら、尚更だ。
「まだ来てないか……」
トモは勢いよく第4広場に入り、噴水の前で、その勢いを弱める。
待ち合わせ場所は、第4広場の噴水前ということにしている。
そうした理由は1つだ。
春樹も最初に呼び出された場所がここだ、と言ったのでそうしたのだ。
昼休みにチュートリアルの時の話を、先生が止めに入ってくるまでやった。
春樹がチュートリアルをした場所も【深淵なる森】だったらしく、道中に出てきた敵の話等をした。
やはりというか、盛り上がったのは【イルヴァーナ】の話だった。
春樹のパーティも前衛、中衛、後衛ときっちりとなっていたらしく、自分達が思ってたよりも速く倒せたらしい。
春樹の武器は【拳】で、かなりリーチが短く、イルヴァーナに攻撃を当てるのが大変だと言っていた。
「トモ〜」
トモの右斜め後ろから、トモを呼ぶ女の子の声が聞こえる。
この世界において、トモの事を知ってるのは杏奈、朱音、そして春樹である。
そして今聞こえてくるのは、この世界で聞いたことのない女の子の声。よってそれは、春樹である。
「春樹……ね? 」
「おぅ……。あ、うんっ」
春樹は言葉使いを女っぽいものに戻す。
……ハルか……。何も捻ってないのね……。
男が女になる場合、女が男になる場合、システムが、現実の名前とゲームに登録した名前とを考慮して、名前を変化させる。
「無理に戻さなくても良いと思うよ? 私は……」
「そうだよな……。でもあれだ。見る目がなぁ……」
「まぁ、見た目は女だからね。いくら性別が変化するという事を知ってるとしても……」
「そうだな……。このシステムも悪くはないってお……、私は思ってるけど……」
「ん? どうして……? 」
「ど、どうしてってか? そりゃ…………」
ハルは言葉に詰まる。
「まぁ、言わなくても良いよ。春樹の思ってることなら分かりそうだしね……」
「それは、嬉しいと思っていいのかな…………? 」
「ふふっ。どうなんだろうね? 」




