Prologue
はじめまして。赤辻康太郎と申します。小説の投稿は初めてなのでいたらない所が多々あるとは思いますがこれからよろしくお願いします。
Prologue
春。それは或者にとっては出会いの季節。また或者にとっては別れの季節。また或者には始まりの季節であり或者には終わりの季節。幾つもの感情が混ざり合う変化の季節である。そしてここに、新たな一歩を踏み出した少年たちがいた。彼等に訪れるのは栄光の賛美か、はたまた絶望の狂乱か、全ては今始まる
私立戦場学園。各学年300人、全校生徒900人の比較的最近出来た進学校である。だが最近出来たにも関わらず入学を希望する受験生は後を絶たず、毎年受験倍率が三桁を超えるほどの超人気校である。今年の倍率も実に268倍と県内一の倍率であった。
そして今、それほどの激戦をくぐり抜けた一人の少年が自らの学舎へと続く九十九折りの桜道を歩いていた。
「ふわぁ。だりぃ。眠ぃ。帰りてぇ」
おい待てとツッコミたくなるような台詞を吐きながら少年は坂道を上っていた。
彼の名は『神前秀貴』。今年から、というか今日から今上っている坂道の終点にある私立戦場学園に通う新入生の一人である。なのに既に通いなれた我が校に登校するような雰囲気を醸し出していた。
「はぁ。いつまで続くんだ、この坂」
非常にけだるそうにぼやいてはいるが坂道の長さは500m程しかないが細かく折れ曲がっているので多少は長く感じるかも知れない。しかし今をトキメク若人が新学期そうそうこれはいかがなものか。
「……まぁしゃあないな。此処に来ればいずれ、ってアイツは」
秀貴は前方に自分と同じ様に歩いている少年を見つけ小走りで駆けはじめた。
「よ、アキ。三日ぶりだな」
「あ、秀貴。おはよう」
秀貴が『アキ』と呼び掛けた少年の名は『加納洸』。秀貴とは小学校からの友人の一人である。
「こんな時間に登校とは、また夜中までゲームしてたな?」
「そういう秀貴こそ、夜遅くまで本読んでたんじゃない?」
二人は互いに肯定しあい、雑談を交えながら上っていった。
「おはようございます。新入生のお二方」
二人が校門に着くと校門の近くに一人の紳士が立っていた。いや、紳士というのもどうかと思うかもしれないが、糊の効いたグレーの三つ揃いのスーツを着こなし白くはなっているが手入れの行き届いた口髭や頭髪をしている初老の男性を、紳士以外の表現法を少なくとも二人(と作者)は知らなかった。
「ようこそ。戦場学園へ。私ここで生徒指導をしている『麦田嘉仁』と申します。以後御見知りおきを」
「あ、加納洸です。よろしくお願いします」
「神前秀貴です」
生徒に対するとは思えないほど丁寧に自己紹介する麦田に、二人とも驚きながら慌ててお辞儀を返した。
「加納さんに、神前さんですね。何か分からない事があれば何時でも生徒指導室に来て下さい。美味しいお茶とお菓子を持ってお待ちしていますよ」
と言って麦田は右手を差し出した。二人とも「よろしくお願いします」と手を握り返したが、手を握った時に思わず戦慄してしまった。何故ならその手は端から見ても分からない位に筋肉質だったからだ。秀貴は改めて目の前の紳士を観察したが、本当にこの手の持ち主かと疑いたくなるほどそうは見えなかった。
「私の顔に何か付いてますか?」
「い、いえ。何でもないです」
「そうですか。では新入生の方はそのまま体育館に行って下さい。あと20分程で入学式が始まります。自由席ですので空いている席に座って待機していて下さい」
「分かりました。秀貴、行こう」
「ああ。じゃあ麦田先生、また」
「はい。また後ほど」
二人は麦田と別れ体育館に向かった。
「……秀貴、約束覚えてる?」
おもむろに洸が秀貴に問いただした。秀貴まるでその質問を予期していたかの様に
「当たり前だ。お前こそ本番でしくじんなよ」
と右拳を軽く突き出した。
「分かってる。そっちこそしっかりね」
洸も自分の右拳を軽く突き出し、互いの拳を合わせた。
今、彼らの学園生活が始まった。
取り合えずプロローグです。不定期更新なので次が何時になるか分かりませんが頑張りますんでよろしくお願いします