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DARK SCENE  作者: 鵫弥
sins
4/19

『sins』Part.4

鷹音由沙を手にかけ奪ったこと...

それは夢ではなく紛れもなく黒乃が犯した事実。

欲望のため手に入れた彼をまさぐろうと伸ばした手さえ震えたのは、

時が経ち、より一層その事実の重さを知ったからなのか。

はたまた後悔か...。

決意が揺らぐほどの現実の暗闇を手探りで彷徨うしかそこに道は無かった。



.....埃っぽいなぁ......。




扉を開けると蒸し暑い熱気と共に微かな埃が舞った。







....物置。


久しぶりに、空けたな...。







夏の気温も手伝ってか、うちの庭にあるこの物置となっている倉庫の中は蒸し蒸しとしている。


普段あまり空けることもないし換気もしていないだろうから、当然といえば当然か。



俺はまだ汚れの少ない白い軍手をはめて仄暗い倉庫の中をまさぐった。




「どこにあるんだ.....?」




あるものを探していた。




こんなに色んな物が乱雑と散らばっていて、何がどこにあるのか全く分からないけど。






寝袋.......。






ちゃんとあるのだろうか....


この中に。




俺は半信半疑で倉庫の中、恐らくあるはずであろう寝袋を探した。


いつかの記憶を辿れば、あるのは間違いないはずなんだ。


キャンプをした時に使っていた....


あの紺色で大き目の、寝袋...。





人一人なら容易に入る。


それも小柄な人ならすっぽりと入るだろう。





......。




そこまで考えて俺は動きを止めた。



自分が何をしようとしているのか。



そんなこと、とっくに覚悟の上...。


そのはずなのに。




「.....。」




これはきっと...迷いではない。


もう後戻りが出来ないと分かった上での、戸惑い。


成功など約束されていない目的への躊躇。



それでも....




俺は再び手を動かし始める。



その不確かな目的の為、自分の為に。


そして、




こんな俺のせいで全てを奪われた、彼の為に....。




「...由沙.....」




こんな風に思うのはただの傲慢。



でももう、戻れないんだ。



俺たちは、最後まで....



友達でいような。由沙...。






頭の中で描いているこの先の予定を浮かべる。



その度に、まったく狂っている、と自分で思う。




今はその狂気じみた道の道中。






ああ、こんな日が来ること。



あの日の俺は思いもしなかっただろうな...。





また虚空に思いを馳せてしまいそうになった所で、再び倉庫の中を探し始めて忘れようとした。



もう、遠い過去に縋ったって無意味だ。



あの日は戻ってこない。



過ぎた時間は取り返せない。


この世の理だ。



いつまでも過去に囚われていたら、いつかあの世に行った時にきっと後悔する。


やることをやってしまったんだ。


もうやりぬくしか...ないだろ。




そこまで考えて不思議と何かが吹っ切れた。



そうだよな...。



俺は結局、あのまま平凡に生きていたって、いつか碌でもない方向へ転がってしまうに違いないんだから。




過ちはどうせ、俺のことを手招きをして待っている。



それが早いか遅いかだけの事だったんだ。



俺はいずれ間違った方へ向かっていくんだろう。





俺は由沙と違って.....




まともじゃない。




そうだよな...。





もしあのまま、あいつと平和に学校生活を過ごしていても....



普通に進級して、普通に卒業して....。



ついには、今度こそ本当に別々の道へ.....



そんな未来を想像したら、やはりいてもたってもいられない。


それこそ、狂ってしまう。


俺は何をしでかすか分からない。




俺は中学の時に由沙と出会ってからは、あいつ無しじゃ生きられない、


完全に依存した状態になってる。



クラスが離れてしまっただけであんなに狂おしく感じていたのに.....


もしそんな未来が訪れたら、どうなってしまうんだろう?



俺は。




由沙という存在に依存し続けた俺は.....。




もっと酷いやり方で、彼を奪っていたかもしれない。




....こんなことに、"もっと酷いやり方"なんて言葉は全くもって適切じゃないが。





今の俺は友人を手にかけた。



その事実に酷いもぬるいもない。





この事が知れ渡れば....




俺はもう日常へ帰れない。





だから.....




そうなる前に........









「...........ん....?」






不意に見覚えのある色合いの物が倉庫の奥から見つかった。



これは...




間違いない。





「....これか」




あった。




捜し求めていた物。



寝袋.......。




いつかの日にこいつで寝ていた時以来だ。



取り出してみるとかなり大きい。


成人男性でもすっぽりと入ってしまえるくらいの大きさを誇っている。



これなら.....





少しだけ心が落ち着いたのを感じた。


こんな状況下でも、落ち着いていられる自分が本当によく分からなかったが。



...とにかくここで広げていても意味はない。



俺はすぐさま寝袋を小さくたたみ、小走りで家の中に戻った。










一階のリビングからは昼食を作る音が聞こえてくる。



今日は休日ということもあり、親が家に居る。



事は穏便に済まさなければならない。





部屋の扉をそっと閉める。



こんな時だから思うが、鍵付きの扉でよかった。





ベッドの上には静かな由沙。



そしてその上から軽いブランケットをかけてある。


目元から膝元まで隠れている。



これで隠しているつもりではないが、念のためだ。




ベッドの横の床にさっき見つけた寝袋を広げる


改めて見るとやはり大きい。


縦の長さは恐らく190cm以上はある。



十分過ぎる大きさだ...。




ベッドにいる由沙を見る。




彼は160cmほどだろうか....


......。




考えるまでもなく、この大きな寝袋には容易に入る。




俺はそこまで考えていた。



けれどその先....



由沙を、この中に.....




入れるとなると.....






やっぱり少し、躊躇ってしまう。




















DARK SCENE 『sins』 part.4






















また、置き手紙が置いてある。




『用事で出かけてきます。お昼食べといてね』




走り書きの文字が、広告裏の白い面に黒のマジックで書かれていた。



俺が高校に入ってからは、親は出かける時も呼ばないし声もかけてこなくなった。




今のこの状況下からすると、好都合以外のなにものでもないのだが...。





すぐさま昼食を済ませ時計を見る。



13時.....。




とある場所に向かうため、俺は一通りの予定をメモ書きする。



..........。




今から外出して、あの場所に向かうとなると時間が早すぎるか.....。


一通り書いた予定を少しだけ書き直す。



まだ家を出るには早い....か。


そう...か........よし。




なんとなくの予想を立てた。



予定通りに事が進んだ場合のケース....。


予定通りに進まず、失敗するケース.....。



どちらにしろ、ある程度これで....大丈夫だろう。



後は.....自分を信じるしかない。




.....。




こんなにも冷静に物事を考えている、今の俺が嫌だ。


嫌いだ。



嫌いだけど...しょうがない。


俺は俺でしかない。



他の誰でもないんだから。





....ひとまず部屋に戻るか....。











「あれ、窓開けっ放しだ....」



部屋に戻ると窓を少し開けたままにしたままだった。


.....いつものくせだ。



夏だからって、開けっ放しは無用心だが....。



由沙.....。



彼が....暑くないように....。


暑さなんて、感じていないだろうけど....。




......。




軽いブランケットをかけられた彼は相変わらず静かだ。


俺が窓を少し開けようが閉めていようが、多分何も、感じていないだろう。



それでも。



俺は窓を少しだけ....開けておくことにした。


こんな暑いのに....可愛そうだから...。



俺は自分の中途半端さに笑いそうになる。




可愛そう.....?




またこんな傲慢な考えをしてしまう。


全ては俺のせいなのに.....。



考えていても無駄だ。






もう行こう...。




俺は部屋の扉を閉め、しっかりと扉の鍵も閉めた。





ここにいたら、何も動き出せないままになりそうで.....。















~~~~~~~~~~







六月の午後の昼間は本当に暑い。


あまり半袖のシャツを着ないけど今日は半袖で外出した。



快晴の空は、強く日差しを放っている。


今日もしばらくはこの調子だろう。




晴れた道を自転車で走っていると、涼香川近くの堤防に差し掛かった。




.......つい数時間前の事だ。




まだ一日も経ってない。



そんな時間の経過に違和感を覚える。



あの瞬間から、現在まで、とてつもなく長い時間が経った気がする。




本当に自分がやったことなのかさえ、疑わしく思えてくる。


或いは、俺自身が何者かに取り憑かれて行った事にも思えてしまう。


それは現実逃避でも何でもなく、心の底から感じる疑い。



俺なんかが、こんなことを、本当に出来てしまった.....のか.....?



俺は.....



俺という人間は。





一体何者なんだ.........?







自分自身がよく分からない。


本当に分からない.....。




いや...



自分自身のことを真に理解し得る人間なんていないだろう。


いつ何を衝動的に考え、行動するか分からない。






人間はそういうもの。







俺は自分に、自分の欲望に従ったまでだ。







由沙を手に入れ.....








そして.....








俺自身も.....死ぬ。






これはずっと決めていたことだ。



それも、由沙を奪おうと思う前から。




自殺願望は随分前から自分の中にあった。


ずっとずっと....この命を消してしまいたいと。


そう思っていた。

 



そして俺は償いきれない罪を犯した。


死ぬに値する人間となった。



俺は死ぬべき人間。



自分の中で、そう決着付けるいい機会になった。





想い続け、依存し続けた、最愛の友人を奪い....



彼と一緒に俺は死ねる。




最後の最後に、贅沢過ぎるほどだ。





由沙.....。




最後まで一緒だよ....。





俺は....お前が何かを拒んでいるのを見たことがないけれど...


きっとこんなことをお願いしていたら、拒否するに決まっているよな。


まあ、お前の事だから.....優しく理由を尋ねて心配してくれたのだろうけど....



お前の心配なんて....俺にはいらない。




お前の存在さえあれば.....もういい。










一緒に死のう.....由沙.....。














堤防の上を自転車を押しながら少し歩いた。


"あの場所"が、いままで通りの青葉を平和に揺らしていた。


その景色はなんにも変わらなくて...。


これからの時を、寂しいほど予感させてくれなかった。






空は.....相変わらず青く晴れ渡っている。






















to be continued...











今回はかなり短くなりました。



前回が長過ぎたというのもありますが...。

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