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DARK SCENE  作者: 鵫弥
sins
2/19

『sins』Part2

由沙を連れて涼香川へ訪れた黒乃の目的は、その最愛の友である由沙を殺すためだった。

由沙の身を我が物にせんと黒乃が謀った罠に、由沙は落ちてしまう。



今は何時ぐらいだろうか.....?



未だに空は暗い。まだ夜明けはこないだろう。







この辺りには大した明かりもない。

人通りも皆無。









問題無いな。





常日頃から細心の注意を払う態度が培われているのか.....

我ながら用心深いというのか、臆病というのか....


しかし今日は......

今日は失敗なんて許されない。

見つかれば俺は......








どうなる.....?






その際の口実も考慮しなければ....

人が倒れているのを見つけた、とでも言うか.....


いや、馬鹿らしいな。


考えることがもう馬鹿らしい。

俺は最悪なケースしか想像できてない。

誰にも見つからなければそれでいい。

こんな時間帯だ。

こんな地域だ。

出歩く人もいなければ車も通らない。





大丈夫だ。

此処から自宅まで約1キロ程度しかない。

すぐ辿り着ける。



見つからなければいいんだ。




「見つからなければ........由沙......」




肩に抱きかかえた親友を見上げる。



眠っている時のような、安静な表情をしている。


でも...やっぱり.....違う.........







静かだ。










DARK SCENE  『sins』Part2














住宅地の坂道に差し掛かった。


ここまで、俺が由沙を抱きかかえて歩いている姿を誰にも目撃されていない。

このまま坂を上っていればすぐ自宅だ。


それにしても.....

本当に誰もいない時間帯なんだな。

廃村のような静けさだ。



ふと後方を振り返ってみる。



「.......」



誰もいないか.....?


尾行されていないか恐れを感じてきた。

いままでずっと振り返らず歩いてきたが......大丈夫だろうか.......

振り返らずに.......歩いて.........



由沙と一緒に歩いている時を思い出した。

俺はあの時も一切振り返らず歩いたが、

由沙はどんな顔をしていたんだろう......


肩に乗った由沙の顔を見た。



「由沙.......」


もう何を問いかけても返す事は無い。

綺麗で繊細な由沙の顔は、眠っているようだ。

無言で不動の俺の友達....

最愛の......親友だ........



思い返すといつ頃だろうか........

俺が由沙のことを好きだと感じた瞬間は.......




由沙とは中学に入学した際に出会った。

当時、友達もそこそこ出来てきて、学校生活に馴れてきた頃か.....

文化祭か何かの出し物に折り鶴を作るということになって、

折り紙の一つも折れない俺の隣にやってきて..........



(「教えてあげよっか?」)



笑顔でそう言ってきてくれたのが、由沙との出会い。

俺はうれしくって、それから鶴を折るのがとても楽しかった。


その日から俺は積極的に由沙と話す様になっていた。

由沙は友達が多くて、よく別のクラスにいってしまってたから、あまり多く話せなかったな。

それでも俺が話しかけたらいつも笑顔で応じてくれてた。

それだけじゃなく、俺が居眠ってノートを取り逃した時は快くノートを写させてくれた。

苦手な数学の勉強も手伝ってくれたっけな....



進級してからの二年生、三年生。由沙とはクラスが離れてしまった。

その二年間の間.....全くと言っていいほど会わなくなっていたな。

俺は普段友達と接する中でも、常に由沙の事を考えていたのかもしれない。

休憩時間に由沙のいるクラスまで何度か姿を探しに行ったこともある。

でも、いつも由沙は他の仲間と楽しそうに話している。

その姿を見る度、胸が苦しかった......



高校受験を控えた三年生の三学期、偶然にも受けた高校が由沙と同じで喜んだんだ。

俺は落ちない様に死にものぐるいで勉強した。

それは由沙も同じだっただろう。

でも俺は.....

由沙と離れたくない.....その一心で勉強した。




........この頃からか.....


俺は、由沙が好きだった。

恋愛感情のようなものだろうか。

胸が締め付けられる思いでいっぱいだった。

由沙は男なのに.........

....でも自分をおかしいとは思わなかった。

疑り深い俺でも、これは素直な気持ちだと思った。







今は、由沙と同じ高校に通っている。

俺としては.....この上なく嬉しい事だ。

家の近い俺と由沙は毎日一緒に登校している。


でも............


一緒にいられるのは登校時だけだ..........

学校に着いたら..............




由沙は別のクラスへと向かう.................

クラスが違うだけで、とても距離感を感じた。


俺はクラスで友達がいない。

今もずっとそうだ。


中学からの知っている友達は僅かにいたが、みんな別のクラスだ.....









孤独な気持ちでいっぱいだった。








でも由沙は......

違った。


由沙はクラスですぐ友達を作り楽しそうだった。


中学の時と同様に、高校のクラスでも人気があったのだろう。

俺は楽しそうにしている由沙のクラスへいつも行けなかった。



廊下をふらふらしては、自分の席で突っ伏して眠っていた。



それでも、下校時はいつも由沙と一緒だ。

もうそれだけで嬉しかった。




俺は由沙に好きだというこの特異な気持ちを明かしていない。

でも由沙は.....気付いていただろうか........

いつも帰るとき、先に校門まで来て待っている俺を....


おかしい奴と思わなかっただろうか....?










「なあ...由沙.....」




止まった表情の由沙に問いかける。





「本当に.......これで良かったのかな........」









後悔は感じていない。

あの時の様に、自分の気持ちに従っただけなんだから。




でも、由沙の気持ちを......

考えてやれなかったな....













————————なあ、由沙







            お前は俺の事、好きだったのかな。





















静かに玄関の扉を閉じた。


親が起きるかもしれない。

こんな時間に外出していたなんてバレたら......



それにこの姿を見られたら.....

それ以上は想像できない。

今は見つからなければいいんだ。

見つからなければ.....





床にそっと細身の身体を降ろした。



本当に....静かだ......

肌が凍てつく様に冷たい.....

この静かな由沙の姿は、俺の一生の罪だ。

俺の罪の象徴だ。



嘆く事はない。

俺自身で行ったことだから。




由沙の身はそのままに、俺は誰もいないであろう居間に向かう。




真っ暗な居間に明かりを点す。

するとテーブルには一つの紙切れが置いてあった。





『どうせメール見ないだろうから これ置いとく

 メール見なさいよ!』





親の置き手紙だった。

俺は急いで携帯を開く。





新着メール一件。







『出掛けてくるから、早く帰って寝なさい』






母親だった。



どうやら、夜中の外出はバレていたらしい。


でも親がいなくて良かった。

これで......





再び由沙の身体を抱きかかえ階段を上がる。

今度は流石に腰にきた。

もともと体力の無い俺だからかもしれないが、

階段を上り終わる頃には限界を感じた。



空いた手でドアを開け俺の自室に入る。


窓が開けっ放しで涼しい風が入ってきていた。

部屋の最奥にあるベッドに由沙の身体を寝かせた。

それと同時に疲れ果てた俺は床に倒れ込んだ。




「はあ..........はあ...........」










終わった。





これでもう....

















由沙を



大好きな由沙を




俺は.....













「はは......はははは................あはは」






















手に入れたんだ。






























「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」










笑いが止まらなかった。




由沙を手に入れた悦びと、

自分の犯した罪の滑稽さに。










狂気に笑う俺とは対称に、

由沙は相変わらず静かだ...


















to be continue...















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