第94話
小柄な猿田彦は、その身体を活かしてぴょんぴょんとリングを跳ね回る。
左右上下、縦横無尽。
佐助が狙いを定めようとするたび、視界からするりと外れていく。
「ちっ……!」
だが佐助も、いつまでも戸惑ったままではない。
呼吸を整え、攻撃へと意識を切り替える。
何度も交錯するうち、徐々に猿田彦の動きが見えてきた。
――次だ。
猿田彦が高く跳び上がった、その瞬間。
佐助は迷いなく踏み込み、空中の猿田彦をがっちりと掴み取る。
「なっ――!」
そのまま離さず、佐助は一気にリング際へ。
そして――
「うわああっ!」
猿田彦を、リング外へと放り投げた。
「あー……」
情けない声と共に、ベチャッと地面に落ちる猿田彦。
会場から、思わず噴き出すような笑いが起こる。
佐助は肩で息をしながら、一言吐き捨てた。
「ったく……紛らわしいんだよ!」
「プレイヤー場外! 勝者、佐助&虎徹……消失済みのため、佐助の勝利!」
勝者コールが響き、佐助はふぅと一息ついた。
「続きまして! 第1回戦・第4試合!」
リングに現れたのは、ユイとルードのペア。
観客席からは、ラビィの声援が飛ぶ。
「ユイちゃん、がんばってー!」
続いてコールされたのは、バッツとアナ。
だが、姿を現したのはバッツ一人だけだった。
「あれ? もう一人は?」
会場がざわついた、その時。
ズズッ……ズズズッ……
何かを引きずるような、不穏な音が響く。
そして現れたのは――体長五メートルをゆうに超える、巨大なヘビだった。
「……ぎゃっ!」
ユイが思わず悲鳴を上げる。
リングを覆い尽くすほどの巨体で、アナは静かにとぐろを巻いた。
「それでは……試合開始!」
アナはくねりながら、ユイとルードを睨みつける。
「うぅ……ヘビ苦手……」
ユイは今にも泣き出しそうな声で呟く。
「ハハハ! こんなに可愛いのにな!」
バッツはそう言って、アナの鱗をぽんぽんと撫でた。
次の瞬間、バッツがユイへと突っ込む。
ユイは咄嗟にルードの背へ飛び乗り、攻撃をかわした。
「ユイちゃん、前っ!」
ラビィの叫びに、ユイが反射的に前を見る。
そこには――顎を外し、あり得ないほど大きく口を開けたアナの姿。
バクン!
ユイとルードは、そのまま一瞬で飲み込まれた。
「勝者! バッツ&アナ!」
勝者コールが鳴り響く。
転送エリアに現れたユイとルードは、アナの唾液まみれだった。
「ふわぁぁぁん……」
ユイはついに堪えきれず、泣き出してしまう。
ルードはそっとユイを咥え、自分の背に乗せると、そのままリングを後にした。
実況が声を張り上げる。
「これにて、第1回戦全試合終了!」
スクリーンには、更新されたトーナメント表が映し出される。
【第1回戦 勝者】
・ラビィ+ドラキュ
・アース+カイザー
・佐助+虎徹
・バッツ+アナ
複数戦は、いよいよ準決勝へと進んでいく。
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