表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

第8話

「……何者だ」


低く抑えられた声が、首元から直接響いた。

刃はわずかに触れているだけだが、そこに込められた殺気は疑いようがない。


「なぜ、俺を探っていた」


半蔵は多くを語らない。

ただ必要な言葉だけを落とす。その沈黙の重さが、質問以上にラビィを縛りつけていた。

ただの町娘に見える存在が、自分という“影”を追っていた。

それだけで疑うには十分だった。


敵対組織 甲賀こうがのくノ一

そう思われても無理はない


ラビィの指先が、わずかに震える。

それでも、逃げなかった。逃げられないのではない。ここで嘘をつけば、もっと深く斬り込まれると、本能で分かっていた。


「……わたしは、敵じゃありません」


声は小さかったが、言葉ははっきりしていた。

戦や情報収集を目的としていないこと。誰かの命を奪うために来たのではないこと。

ラビィは、知っていることを飾らず、正直に語った。


半蔵は黙って聞いていた。

呼吸の乱れも、動揺も見せない。

ただ、刃の角度だけが、ほんの僅かに変わった。


「……甲賀の者ではない」


忍刀にんとうが、すっと引かれる。

闇に溶けていた緊張が、ようやく解けた。


「ならば、真の目的は何だ」


改めて向けられた問い。

ラビィは一度息を吸い、言葉を選びながら答えた。


「あなたの“在り方”を、″写し″として持ち帰りたいんです。

戦い方じゃない。生き方や、技や、その存在そのものを……」


しばしの沈黙。

やがて、半蔵は小さく息を吐いた。


「忍びの技は教えぬ」


それだけを告げてから、続ける。


「だが……その“写し”とか言う物を持ち帰るというのなら、止めはせぬ」


ラビィの胸が、大きく跳ねた。

データ抽出の承諾。これ以上の言葉はいらなかった。


抽出は静かに行われた。

光も音も最小限。

半蔵は身じろぎ一つせず、ただ影のようにそこに在った。


「終わりだ。もう、行くぞ…」


そう言い残し、半蔵は(かかと)を返す。


次の瞬間、そこには誰もいなかった。

風が揺れ、闇が元の形に戻るだけだ。


「す…すごい……」


ラビィは思わず声を上げた。

自分の聴力でも気付けなかった存在。その能力を持つ人物のデータを、確かに手に入れたのだ。


「やった〜!!」


喜びが込み上げ、思わず両手を上げる。

その瞬間――手首に違和感。


「……え?」


いつの間にか、忍びの衣が、きつくも緩くもなく巻かれていた。


「いつの間に!?」


驚きで目を見開くラビィの前で、闇は何事もなかったかのように静まり返っていた。


影は、最後まで影のままだった。

ここまでお読み下さり本当にありがとうございます!


更新日時は毎日致します。

平日:7時頃、12時頃、20時頃の1日3話

土、日、祝:12時頃、16時頃、20時頃の1日3話

で行います。


少しでも

面白かった。続きを読んでみたい。頑張って。と思われた方、よろしければブックマークもお願いします!

感想などもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ