第84話
ログインした瞬間、耳に飛び込んできたのは、いつもより何倍も賑やかなNPCたちの声だった。
「一周年おめでとうございます!」
「記念アイテムはいかがですかー!」
「限定フード、今だけですよー!」
街全体が、明らかにいつもと違う空気に包まれている。
通りを見渡せば、至るところに一周年を祝うノボリや垂れ幕。
露店がずらりと並び、食べ物や記念グッズ、ミニゲームまで用意されていた。
「うわぁ、すご……」
ラビィは思わず感嘆の声を漏らす。
「本当にお祭りだね」
「ここまで派手なのは初めてだな」
一行は、いつもとは違う華やかな街並みを楽しみながら歩いていく。
中央広場に近づくと、巨大スクリーンが目に入った。
そこには、今ゲーム内で人気急上昇中の“アイドルプレイヤー”たちが映し出され、笑顔でイベントを盛り上げている。
「わぁ……あの人たち、見たことある」
「ランキング常連だな」
歓声と拍手が、広場を包み込む。
さらに進むと、視界の先に現れたのは――
街の一角を丸ごと占領するほどの、巨大なドームだった。
入口には大きな案内表示。
《一周年記念・開会式典開催中
お気軽にお立ち寄り下さい》
「あれがイベント会場だね」
中へ足を踏み入れた瞬間、圧倒的な人の波に包まれる。
観客席にはすでに多くのプレイヤーが集まり、ざわめきと期待が渦巻いていた。
やがて、場内の照明が落ちる。
次の瞬間――
「クロノス・レガリア、サービス開始一周年記念イベント!」
大きなアナウンスと共に、光が弾ける。
「ここに――堂々、開幕を宣言いたします!」
割れんばかりの歓声がドームを揺らした。
ラビィたちは観客席から、その光景を眺めていた。
すると、背後から落ち着いた声がかかる。
「ふぅ……おや?ラビィさんじゃないですか。お久しぶりですね」
振り向くと、そこに立っていたのはラストだった。
「ラストさん!お久しぶりです」
MK事件以来、久しぶりの再会だった。
「今日は大変そうですね」
「ええ、今回は“もてなす側”ですからね」
ラストは苦笑しながら肩をすくめる。
「一周年イベントともなると、やることが山ほどでして……トホホですよ」
そう言いながらも、その表情はどこか楽しそうだった。
「では、私はこれで……また会いましょう。今度は、ゆっくりお話できるといいですね」
ラストはそう告げ、足早に人混みの中へと消えていった。
その間にも、開会式は滞りなく進み、やがて次の告知が流れる。
《一周年記念イベント・闘技大会についてのお知らせです》
場内が、再びざわめく。
《予選は明日開催。
勝ち残った方は、明後日の本戦へと進出していただきます》
闘技大会――
このイベント最大の目玉。
《本日は、一周年を記念したお祭りを、どうぞご自由にお楽しみください》
アナウンスが終わると、場内は期待と興奮に包まれた。
「いよいよだね」
「明日から本番か」
ラビィは、ドームの天井を見上げる。
「うん……楽しもう。今日はお祭り」
「そして――」
その先に待つ戦いを思い浮かべながら、静かに息を整える。
こうして、
クロノス・レガリア一周年記念イベントは幕を開けた。
そして――
闘技大会、開幕へ。
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