第80話
静まり返った地下聖堂に、ラストの声が落ちた。
「……あの満足そうな顔。もう、大丈夫でしょう」
それは自分に言い聞かせるようでもあり、ここにいる全員へ向けた言葉でもあった。
ラビィは大きく息を吐き、肩の力を抜く。
その肩口では、奮戦し尽くしたドラキュが小さく鳴き、同じく限界だった虎徹、カイザー、ルードも、それぞれの主の側で息を整えていた。
「……終わった、んだよね」
誰に言うでもなく呟くと、膝が笑い、その場にへたり込む。
それにつられるように、他のプレイヤーたちも次々と腰を下ろした。
その時だった。
――コツ、コツ、と階段を下ってくる足音。
「……?」
全員が顔を上げる。
地下へと降りてきたのは、見知った顔ばかりだった。
「ラビィちゃん! やったんですね!」
駆け寄ってきたジャンヌが、満面の笑みで声を上げる。
「嬢ちゃん、やるなぁ! 本当に大仕事だぜ!」
コロンブスは豪快に笑い、ラビィの背を軽く叩いた。
「うむ……ご苦労であった」
ヴラドは短くそう告げ、深く頷く。
「お疲れ様、ラビィくん」
ファーブルはいつもの穏やかな口調で、少しだけ目を細めていた。
「……皆さんも、お疲れ様でした」
ラビィはそう言って、改めて全員を見渡す。
胸の奥に、じんわりと温かいものが広がっていく。
本当に――疲れた。
けれど、それ以上に、確かな達成感があった。
その場に集まった全ての者たちは、しばし言葉もなく、それぞれの形で休息を取った。
アースは興奮冷めやらぬ様子で、カイザーの活躍を身振り手振りでメンバー達に語っている。
ヒロも、メンバー達を労いながら、どこか照れくさそうに笑っていた。
佐助はというと、
「足、引っ張らなかった?」
などとメンバーの一人にからかわれ、
「うるさい、十分頑張ったよ!」
と苦笑して返している。
ユイはミイ、ロウ、ウル、オウ、そしてルードに囲まれ、幸せそうに目を細めていた。
そんな光景を一歩引いた場所から見届けたラストは、胸元に手をやる。
そこにあった一輪のバラを静かに抜き取り、カリスが消えた場所へと放った。
花は床に落ち、静かに横たわる。
「……手向けの花です」
誰に聞かせるでもない、静かな言葉。
地下聖堂には、もう戦いの気配はなかった。
残っているのは、終わりを迎えた者たちの、穏やかな余韻だけだった。
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