第70話
従者たちの捜索を、どうにか振り切った。
息を殺し、瓦礫の陰に身を潜めながら、ラビィは胸を撫で下ろす。
「ハァ、ハァ……」
その時、ふと違和感を覚えた。
周囲に集まってきた仲間たちの中に孔明の姿がない。
「……あれ? 孔明さんは?」
ラビィの問いに、ヴラドが静かに答える。
「女だ。孔明は、あの女が怪しいと睨み尾行を続けている」
その言葉に、ラビィは息を呑んだ。
無事でいて……そう願うしかなかった。
―――場面は変わる。
従者たちがラビィの捜索へと散った、まさにその瞬間。
責任者の女は、何かを察したかのように表情を強張らせ、踵を返して走り出した。
「……やはり、勘が鋭い」
物陰からそれを見ていた孔明は、迷わず後を追う。
距離を保ち、気配を消しながら。
女は廃村のフィールドを抜け、隣接するフィールドへと駆け込んだ。
そこは――墓地フィールド。
月明かりに照らされた無数の墓標が、不気味な影を落としている。
女は足を緩めることなく、墓地の奥へと進み、やがて一つの建物へと逃げ込んだ。
古びた教会だった。
孔明は教会の壁際へと近づき、耳を澄ませる。
しばらくして、中から声が聞こえてきた。
「カリス様。決起集会の方は、滞りなく終わらせましたが……」
先程まで集会を仕切っていた、あの女の声だ。
「帰りの道で、我らを狙う**賊**と思しき者の尾行がありました。
今、下の者たちが捜索を続けております」
一瞬の沈黙。
やがて、低く落ち着いた男の声が返ってきた。
「ご苦労だった」
その声には、焦りも動揺もない。
ただ、淡々とした冷たさだけがあった。
「……では、外の者を排除しようか」
その言葉を聞いた瞬間、孔明の目が細くなる。
――見えた。
首謀者へと繋がる、確かな糸が。
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