第69話
闇の中、従者の足音が確実に距離を詰めてくる。
ラビィは反射的に身体を低くし、逃げ道を探した。
――跳ぶしかない。
スキル〈兎の跳躍〉を使おうとした、その瞬間。
脳裏に、ファーブルから渡された小さな袋の感触がよぎった。
「……そうだ」
ラビィは咄嗟に袋を取り出し、震える手で中身を開ける。
そこに入っていたのは、小さな実をいくつも付けた一本の草だった。
それを見た瞬間、ファーブルとのふとした会話の記憶が鮮やかに蘇る。
「ラビィくん、珍しい植物を見つけたよ!見ててよー。この草はね、こうやって……」
そう言ってファーブルが草をぷるん、と振った瞬間。
――バシュッ!
激しい閃光が視界を埋め尽くした。
「うわっ、眩しっ!!何です、それ!」
「僕もこのゲームの中でたまたま見つけた物だよ。ふふふっ、面白いでしょ」
「全然面白くないですよ!もうっ、ファーブルさんたら!」
「ごめんごめん。初めて見た植物だったから興奮してね」
――これって、あの時の……。
ラビィは目を閉じ、迫り来る従者の方向へ向かって草を振った。
バシュッ!!
一瞬、夜が昼へと変わったかのような強烈な光が周囲を包み込む。
「うわっ!!何だ!?」
怯んだ声が響く。
その一瞬の隙を、ラビィは逃さなかった。
スキル〈兎の跳躍〉を発動し、閃光の中へと身体を躍らせる。
高く、遠くへ。
光が収まった次の瞬間、ラビィの姿はそこにはなかった。
再び辺りは闇に沈む。
そして、閃光が走ったその方向へ、音もなく影が集まってくる。
ラビィのメンバーたちだった。
合流した一行は即座に身を伏せ、息を殺す。
追っ手の気配が遠ざかるのを確認した後、ラビィは小さく息を吐いた。
「……ファーブルさん。助かりました」
その声は、闇の中で確かに安堵を含んでいた。
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