第68話
「あの……一つ、質問をしてもよろしいでしょうか」
闇に包まれた集会場で、ラビィは震えそうになる声を必死に抑え、女へと言葉を投げかけた。
それは孔明から託された、たった一つの問い。
「最近、ノルマが厳しく感じ脱退する者が増えて来ていると聞きました。もし……今後も集団を抜けたい者が続出した場合、どのような対処をなさるのでしょうか」
女はその場で足を止め、ほんの少しだけ考えるように沈黙した。
やがて、ゆっくりと振り返る。
「抜けていく者への対処、ですか……」
その声は落ち着いており、感情の起伏は感じられない。
「我々の情報を口外しないのであれば、特に問題はございません」
そう言いながら、女は集会に参加している者たちを一人ひとり見渡した。
「……ですが」
空気が、僅かに冷える。
「もし口外した事実を、我々が掴んだ場合。その時は、それ相応の覚悟をしていただく必要がございます」
淡々とした口調。
脅しとも取れるその言葉に、数人のプレイヤーが息を呑んだのが分かった。
「まあ」
女はふっと口元を歪める。
「指導者様はお優しい方ですので。滅多なことにはならないと思われますが……」
その微笑みは、どこか不気味だった。
やはり、この女が首謀者ではない。
ラビィは確信する。
これは伝令役、あるいは現場責任者に過ぎない。
「では……本日はこれにて」
女はそう告げると、集会場を後にした。
ざわり、と場内が再び騒がしくなる。
その隙を突き、ラビィは気配を消すようにして、女の後を追った。
寺社跡地を抜け、外へ。
女は迷いなく、ある方向へ歩いていく。
その後ろには、二人の男がぴたりと付き従っていた。
ラビィは慎重に距離を取り、影から影へと移動する。
耳を澄ますと、前方から会話が漏れ聞こえてきた。
「今日、来ていたあのウサギの子……」
女が従者の一人に細い声で言う。
「あの子、何か臭うわね。少し注意するように」
その瞬間、ラビィの背筋に冷たいものが走った。
――気付かれてる……?
思わず一歩、後ずさる。
カッ――
乾いた音が夜に響いた。
足元に転がっていた瓦礫を、踏んでしまったのだ。
「誰だ!」
二人の従者が一斉に振り向き、こちらへと歩み寄ってくる。
闇の中、逃げ場は少ない。
「あっ……」
ラビィの喉から、かすれた声が漏れた。
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