第66話
決起集会当日の朝。
ラビィはまだログインしていなかった。
目覚めは浅い。
それでも、不思議と頭は冴えていた。
いよいよ今夜、クロノス・レガリアの中でMK達の決起集会が行われる。
その事実は、恐怖というよりも、避けられない現実として胸に沈んでいる。
もし失敗したら。
もし見抜かれたら。
もし……
そこまで考えて、ラビィは思考を止めた。
考えたところで、もう戻る道は無い。
逃げないと決めた時点で、自分は確実に前へ進んでしまったのだ。
放課後。
帰宅したラビィは迷いなくログイン準備を整える。
視界が切り替わり、拠点の一室に立つ。
ジャンヌ、ヴラド、ファーブル、孔明。
全員が揃っていた。
「今夜の作戦を説明しましょう」
孔明の声は静かで、しかし揺るぎがない。
すでに軍師としての顔だった。
「まず一点。集会場にメンバーを連れたプレイヤーがいるのは不自然です。潜入はラビィさん、あなた一人です」
ラビィの胸がドクンと鳴る。
覚悟はしていた。それでも緊張は隠せない。
「残った我々は集会場周辺に待機。不審な人物、集会後に動きを見せる者を監視します」
そこで、ファーブルが手を軽く挙げた。
「うん、少しいいかな?」
全員の視線が向く。
「周囲で待機している僕たちメンバーには、必ずやって欲しい事があるんだ。まずラビィくんが集会場内に潜入してから入って行くプレイヤー達の顔をなるべく覚えて欲しいんだ、後々の対策を取るのに必ず必要になってくるはずだから」
「ええ、その通りです。ラビィさんに、作戦以上の負担はかけたくありませんので。ヴラドさんもジャンヌさんもよろしくお願いしますね」
二人は孔明、ファーブルを見つめ頷く。
「そして最も重要な点です。ラビィさんには、集会の場で“ある質問”をしていただきたい」
ラビィは息を整え、頷く。
「内容はこうです。
最近ノルマが厳しくなり、集団を抜けようとする者が出ている。その者達を首謀者としてはどう考えているのか」
空気が張り詰める。
「首謀者本人は、その場に現れない可能性が高い。ですが、この問いを投げれば、場を仕切る責任者が必ず反応します。その人物を特定し、集会後に尾行。首謀者へと繋がる道を探る。あなたの鋭い聴力が必ず役にたちます」
孔明は一拍置いた。
「無論、危険は伴います」
その言葉を、ラビィは遮った。
「やります」
声は震えていなかった。
怖さはある。
だが、それ以上に“止めたい”という気持ちが勝っていた。
ファーブルがラビィを見て、にこりと笑う。
「大丈夫。君はもう、ちゃんと考えて進んでる。無鉄砲じゃない。それはとても大事なことだよ」
孔明は静かに頷く。
「……ありがとうございます、ラビィさん」
最悪の場合、ラビィは消失する。
だが彼女はプレイヤーだ。再ログインは可能だ。
それでも、“何も知らなかった自分”には戻れない。
この一歩は、確実に自分を変える。
ラビィはそれを理解していた。
やがて、ゲーム内の空がゆっくりと夕闇に染まっていく。
「そろそろ時間ですね……」
孔明の言葉を合図に、全員が立ち上がる。
それぞれの役割。
それぞれの覚悟。
この夜は終わりではない。
戻れない場所へ進む、はっきりとした分岐点だった。
ラビィ達は、決起集会場へと向かった。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございます!
更新日時は毎日致します。
平日:7時頃、12時頃、20時頃の1日3話
土、日、祝:12時頃、16時頃、20時頃の1日3話
で行います。
少しでも
面白かった。続きを読んでみたい。頑張って。と思われた方、よろしければブックマークもお願いします!
感想などもお待ちしております。




