第64話
ファーブルの言葉が、ラビィの中で何度も反芻されていた。
MKはただの悪ではない。そこには、人の意思がある。
弱さも、欲も、逃げ道を探す心も含めて。
それに気づいてしまった以上、ラビィはもう、単純に「倒せばいい」とは思えなくなっていた。
悪い事は悪い。
それでも、もし誰かがそれを煽り、主導しているのだとしたら。
まず止めるべきは、それを“主導”している者だ。
そう考えたラビィは、次の日、学校でユイを見つけると、以前話題に出た「MKをしているらしい人物」について心当たりがないか尋ねてみた。
ユイは少し考え込み、やがて頷いた。
クロノス・レガリアの中でそこそこ有名なプレイヤーである彼女は、校内の事情にもそれなりに詳しい。
話の内容から数人に絞れそう、と言って、ラビィにいくつかの名前を挙げてくれた。
その情報を頼りに、ラビィは一人ずつ話を聞いて回った。
一人目は何も知らず、二人目もただの噂話。
そして三人目……ラビィの直感が、静かに確信へと変わった。
その男子生徒は、最初こそ警戒していたものの、ラビィが問い詰めるのではなく、ただ話を聞く姿勢を崩さないと分かると、ぽつりぽつりと口を開いた。
首謀者の正体は知らない。
ただ、週に一度、メンバーを消失させた人数に応じて、メールで報酬が届くのだという。
レアなアイテムや、L。それが続ける理由だった。
だが最近は、ノルマのようなものを課されるようになり、正直、嫌気がさしているとも打ち明けた。
もう普通のプレイヤーに戻るつもりだ、と。
ラビィは、それがいいと思う、とだけ答えた。
これ以上、無理に踏み込む必要はない。そう判断し、礼を言ってその場を後にしようとした、その時だった。
「そういえばさ」
呼び止められ、振り返る。
その男子は、少し迷うような表情を浮かべてから言った。
「今度、ゲーム内で大々的に集まるらしいよ。MKの……決起集会、みたいなやつ」
自分はもう参加しないつもりだけど、と前置きしてから、場所と日時、そして参加するための合言葉を教えてくれた。
「情報、欲しいなら……そこに行けば何か分かるかも」
ラビィは静かに頷き、今度こそその場を後にした。
胸の奥で、歯車が一つ、確かに噛み合った音がした。
次は、現場だ。
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