第62話
未来へと戻ったラビィは、ゲーム端末にログインするとすぐに新たに取得したデータの登録作業を行った。
端末に《データ登録完了》の文字が表示され、続いて詳細画面が展開される。
腕力/知識/俊敏/愛情/耐久/交渉/悟性
25/98/60/50/27/60/95
固有スキル名:ファーブル昆虫記
スキル内容:溢れんばかりの知識と愛情で昆虫と植物に相対する
表示された数値を見て、ラビィは思わず目を見開いた。
圧倒的な知識量は予想通りだったが、それ以上に悟性の高さが際立っている。
公園のベンチで、昆虫と植物を語るあの姿を思い出し、ラビィは苦笑しながら小さく頷いた。
……納得だ。
「じゃあ、メインメンバーに……」
そう思いかけて、ラビィの指が止まる。
知識と戦術を司る孔明。
パーティの心を支える癒しの存在、ジャンヌ。
行動力と交渉力に優れたコロンブス。
そして、全ての数値が高水準で安定しているヴラド。
誰か一人を外す
その決断を、自分一人で下すには重すぎた。
ラビィは一度、ファーブルをサブメンバーのままにログインし、皆と話し合うことを選んだ。
拠点に集まっているメンバーに、まずファーブルのデータを無事に抽出できたことを伝える。
そして続けて、メインメンバーとして迎えるために、誰と入れ替えるべきか悩んでいることを正直に打ち明けた。
一瞬、沈黙が落ちる。
最初に口を開いたのはジャンヌだった。
「私で良いわ。皆の役に立てるなら」
それに被せるように、コロンブスが首を振る。
「いや、今回は俺の方が適任じゃねぇ。知識面じゃ足引っ張るだけだ」
ヴラドは腕を組み、静かに言った。
「ラビィ君の一存に文句を言う者はいない。自分で決めてれば良い」
視線が孔明へと集まる。
孔明は少しだけ目を伏せてから、穏やかに口を開いた。
「ヴラドさんの言う通り、最終的に決めるのはあなたです」
そして続ける。
「ただ、今回外すとするなら……知識から知識への交代が、最もバランスを崩しにくいでしょう」
「後は、じっくり考えなさい」
ラビィは深く頷き、皆に礼を告げると、その日は一度ログアウトした。
現実世界で一人になり、孔明の言葉を何度も反芻する。
そして、静かに決断した。
知識から知識へ。
孔明からファーブルへ――メインメンバーチェンジ。
操作を終えたラビィは、引き出しの奥から、かつて孔明から受け取った竹簡を取り出した。
初めての頃から今まで、ずっとそばで支え、導き、教えてくれた存在。
その姿を思い浮かべ、胸がきゅっと締め付けられる。
「孔明さん……今までありがとう」
「少しだけ、ゆっくり休んでて」
それは誰にも聞こえない、ラビィの心の中の言葉だった。
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