第60話
次のログイン後、ラビィは新たなサブメンバー候補を決めたことを皆に告げ、明日にでも過去へ向かうと伝えた。
その人物は、今後の戦いにおいて間違いなく大いなる力を発揮してくれる。
ラビィの意見にメンバーたちも異論はなく、静かに頷いた。
翌日、ラビィは遡行装置を操作する。指定座標は十九世紀、フランス。
ジャンヌのデータを抽出した時とは、空気も街並みもまるで違う時代。
石畳を踏みしめた瞬間、ラビィは思わず息をのんだが、目的は観光ではない。
今回もまた、ただ一人の人物を探すための旅だ。
いつものように聞き込みを始めるものの、有力な情報は得られなかった。
学者、教師、研究者……それらしい名前は挙がるが、決め手に欠ける。
気づけば時間だけが過ぎ、ラビィは公園のベンチに腰を下ろして一息ついた。
何気なく周囲を見渡した、その時だった。
子供たちの輪の中に、ひとり大人の男が混じっている。
年齢は中年ほど、服装は質素だが、目は不思議なほど生き生きとしていた。
男は子供たちと同じ目線で地面にしゃがみ込み、虫網を手に何かを探している。
しばらくして、男は満足したように立ち上がり、こちらのベンチへと歩いてきた。
ラビィの隣に腰を下ろすと、男は内ポケットから小さなメモ帳を取り出し、何事かを書き留め始める。
気になって、ラビィはそっと視線を落とした。
そこには、捕まえた昆虫の形状、動き、環境、行動の癖まで、びっしりと細かな文字で記されていた。
間違いない。
ラビィは意を決して声をかける。
「あの……もしかして、ファーブルさんですか?」
男は顔を上げ、少し驚いたように目を瞬かせると、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ん? そうだよ。何か用かい?」
その口調は、まるで隣にいるのが大人ではなく、子供であるかのように自然で、気取ったところが一切なかった。
ラビィはこの瞬間、探していた人物に、ようやく辿り着いたのだと確信する。
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