第52話
佐助が個室を去ったあと
MKが活発化していること、強制ログアウトが相次いでいること、そしてゲームを離れるプレイヤーが出始めているという現状を聞いたジャンヌが静かに呟く。
「……想像以上ですね」
コロンブスも腕を組み、珍しく軽口を叩かなかった。
その時、孔明が顎に手を当て、ふと思い出したように口を開いた。
「以前……“ラスト”と名乗る人物がいましたね。自称MKキラーとか」
その名を聞き、ラビィは一瞬だけ表情を曇らせた。
確かに、あの男は不自然だった。
だが同時に、今の話と無関係とも言い切れない。
「……まだ疑いは拭えません。でも、一度ちゃんと話を聞きたいです」
そう決めたラビィは、その場で端末を操作し、ラストへと連絡を送った。
翌日。
ラビィの端末に返信が届く。
そこには丁寧な感謝の言葉と共に、会える日時の了承、そしてこう続いていた。
――こちらを警戒しているのは当然でしょう。ですから、場所はそちらで指定してください。
「……やっぱり、用心深い人」
ラビィはそう呟き、最近戦国区画に借りた一行の拠点を指定することにした。
地図データを添えて送信する。
そして指定日当日。
拠点で待つラビィたちの前に、ラストは一人で姿を現した。
「本日は、お時間を設けてくださりありがとうございます」
そう言って、彼は深々と頭を下げた。
まだ疑っているであろう相手に対しても、その態度は崩れない。
全員が席に着いたのを確認し、ラストは静かに話し始めた。
「いきなりですが本題からお話します。まずMKたちを指揮している主導者がいます。彼らは……ある手段を用いて、意図的にメンバー消失を引き起こしていると言われています」
場の空気が一気に張り詰める。
「その方法は、MKたちに共有され、実行されています。主導者本人の目的までは、まだ完全には掴めていませんが……」
ラストは一度言葉を切った。
「その主導者の正体は掴めていません……がクロノス・レガリアそのものに、強い恨みを持っている人物だと聞いています」
ラビィは息を呑んだ。
ただの愉快犯ではない。もっと根深い何かがある。
「そこで、ラビィさん。あなたにいくつか質問をさせてください」
視線がラビィに向けられる。
「クロノス・レガリアの“絶対ルール”について、何かおかしいと感じたことはありませんか?」
「そして……なぜ、私はメンバーを連れていないのか疑問には思いませんでしたか?」
突然の問いに、ラビィは言葉を失った。
思わず孔明を見るが、孔明も小さく首を振る。
分からない。
ラストの事は分からないが、ゲーム内のルールは今まで当たり前として受け入れてきたことだった。
ラストは、ほんの少しだけ微笑んだ。
「では、ヒントを一つ。ラビィさんのご友人、ユイさんのことを思い出してみてください」
その言葉に、ラビィの脳裏にユイの姿が浮かぶ。
明るくて、優しくて、いつも変わらない彼女。
「ユイちゃんの……違和感、ですか?」
考え込むラビィの隣で、孔明の瞳がわずかに見開かれた。
「……なるほど」
小さな声だったが、確かな気づきの色がそこにはあった。
静かな拠点の中で、点と点が、ゆっくりと線になり始めていた。
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