第39話
アースの指差す先。
そこにあったのは、海に半ば沈み、半ば乗り上げるように横たわる巨大な難破船だった。
思わず息を呑む。
その大きさは異様で、甲板の上に城が一つ建ってもおかしくないほどの規模をしている。
船体には無数の傷跡が刻まれ、帆は裂け、マストは折れ曲がりながらも、まるで意思を持つかのようにそこに“在り続けて”いた。
「……なっ、何あれ!?」
ラビィの口から、思わずそんな声が漏れる。
周囲にいた他のプレイヤーたちも同じ反応だった。
2、3組船へと近づく者たちも居るが、他は誰一人として近づこうとはせず、海岸線から一定の距離を保ったまま、ざわざわと不安げな視線を向けている。
ラビィたちも様子を確かめようと、一歩、また一歩と前に出ようとした。
その瞬間、アースが慌てた様子でラビィの腕を掴む。
「待ってくださいラビィさん!
やっぱり……やめましょう。
あれ、絶対に普通じゃないです……!」
震える声。
その必死さに、アース自身が感じている恐怖が滲んでいた。
だがラビィは足を止めず、振り返る。
一瞬だけ唇を噛みしめ、それからアースの肩にそっと手を置いた。
その手は、わずかに震えている。
「大丈夫」
自分に言い聞かせるように、ラビィは微笑んだ。
「何かあったら、私たちが助けるから」
その言葉に、アースは一瞬だけ迷い、それから小さく頷いた。
ラビィ、孔明、ジャンヌ、コロンブス、ヴラド。
そしてアースのパーティは、連なって巨大な船へと向かっていく。
それを合図にしたかのように、周囲にいた他のパーティも動き出した。
最初は様子見だった者たちが、少しずつ、少しずつ距離を詰めてくる。
海辺の空気が、明らかに変わっていくのが分かった。
次の瞬間だった。
ギギギ……と重苦しい音を立てながら、巨大船の側面から一本の橋がせり出し、砂浜へと架かる。
同時に、視界に強制的にウィンドウが表示された。
《一定数のパーティを確認。》
《これより多人数レイドクエストを開始します。》
「多人数……レイド?」
誰かが呟いた。
ざわめきは一気に膨れ上がる。
ラビィはアースの肩に置いた手を離し、周囲を見渡す。
「ほら、私たちだけじゃない。
一緒に戦ってくれる人、たくさんいるよ」
怯えた表情のアースをなだめながら、ラビィはゆっくりと橋へ足を踏み出した。
続いて、アースのパーティも覚悟を決めたように後に続く。
こうして、ラビィたちは巨大な難破船へと乗り込んでいった。
この先に待つものが、何であるのかも知らぬまま。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございます!
更新日時は毎日致します。
平日:7時頃、12時頃、20時頃の1日3話
土、日、祝:12時頃、16時頃、20時頃の1日3話
で行います。
少しでも
面白かった。続きを読んでみたい。頑張って。と思われた方、よろしければブックマークもお願いします!
感想などもお待ちしております。




