第36話
中央広場の喧騒の中で、その男はひどく浮いていた。
周囲を見渡しても、パーティーメンバーらしき姿が見当たらない。
この世界では珍しい光景にラビィ胸の奥がざわつく。
「一人なんですか?」
ラビィが小さく呟く。
つい先ほどユナから聞いた話が、どうしても頭をよぎってしまう。
警戒する空気を察したのか、ジャンヌが一歩前へ出ようとした、その時だった。
「下がっていろ」
低く、だがよく通る声。
ヴラドが一歩、男の前へ進み出ていた。
「貴様、何者だ。
この場で無目的に声を掛ける行為、好ましいとは言えんな」
その言葉には、規律と公平を重んじる者特有の圧があった。
男は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに肩をすくめる。
「少し物言いが物騒ですね。
私は一人ではありません。ちゃんとパーティもいます。今は姿を見せていませんけどね」
「私はMKを探しています」
その単語に、ラビィの指先が僅かに強ばる。
「私の目的はMKたちを葬り去ることです」
「……ほう、葬り去るとな」
ヴラドの視線が鋭くなる。
「今はそれを手助けしてくれるパーティを募っている所です。まだ数は多くはありませんが、いくつかのパーティが賛同し共に戦う準備をしてくれています」
男の言葉は落ち着いていたが、完全に信用できるものではない。
ラビィがそう感じていると、男は何かを思い出したように端末を操作した。
ピコン
ラビィの端末が、小さく音を立てる。
「フレンド申請?」
《ラストからフレンド申請がきています》
「申し遅れました。
私はラスト。MKキラーのラストと申します」
「急にこの様な話をされては疑われるのも無理はないですね」
男は軽く手を挙げる。
「もし詳しく話を聞きたくなった時、連絡をくださればまた会いに伺います。では……」
それだけ言い残し、ラストと名乗る男は人波の中へと消えていった。
しばらく、誰も口を開かなかった。
「……どう思いますか」
ラビィが孔明を見る。
「現時点では判断材料が不足していますな。
ただし、無視するには少々、出来過ぎた存在でもある」
「俺は気に入らねぇな」
コロンブスが腕を組む。
「だが、放っておくのも危ねぇ気がする」
ヴラドは何も言わず、男が去った方向を静かに見つめていた。
「ひとまず、今日は休みましょう」
ラビィの言葉に、全員がうなずく。
一行は中世区画内の宿泊施設へと向かい、部屋に入ると、先ほどの話の続きを始めた。
広場の喧騒から離れたその空間で、ラビィの胸の中には、新たな違和感が静かに芽生えていた。
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