第34話
ログインの感覚は、久しぶりだった。
視界がゆっくりと開き、足元の感触が戻ってくる。
そして、目の前に立っていたのは
「……孔明さん」
名を呼んだ瞬間、胸の奥に溜め込んでいたものが一気に溢れ出した。
孔明、ジャンヌ、コロンブス。
そして、その隣には見慣れない長身の男が立っている。
けれど、今はそんなことどうでもよかった。
「……っ」
声にならないまま、ラビィの目から涙が零れ落ちる。
次の瞬間、柔らかく包み込まれた。
「……よく、戻ってきましたね」
ジャンヌの腕だった。
何も言わず、ただ背中を撫でてくれるその仕草に、ラビィは堪えていた嗚咽を漏らす。
「ごめんなさい……っ、私……私のせいで……」
みんなと分断されたあと孔明たちに擬態した魔物に襲われ、その戦いで自分の危機意識低下のせいで深手を負った事。
そんな自分を庇いつつ半蔵が戦い勝利をおさめるも取り返しのつかない結末になった事。
言葉は途切れ途切れで、何度も詰まりながら、それでもラビィはすべてを話した。
孔明は静かに目を伏せ、コロンブスは腕を組んだまま天を仰ぐ。
二人とも多くは語らない。
「無愛想なやつだったが……あいつらしい、最期だな」
それだけを、コロンブスは低く呟いた。
ラビィの呼吸が少し落ち着いた頃、ジャンヌさんがそっと身体を離す。
ラビィは目元を拭い、小さく頭を下げた。
「あっと、えー、紹介しますね。新しい仲間です」
そう言って振り返ると、先ほどから堂々と立っていた男が一歩前に出た。
「我が名はヴラド。ヴラド・ドラクレアだ。
未来では吸血鬼ドラキュラと呼ばれているらしい」
一瞬の沈黙。
「……いや、それ自分で言うんですか」
思わずラビィがツッコミを入れると、ヴラドは肩をすくめ、薄く笑った。
「気に入っていてな」
場の空気が、ほんの少しだけ緩む。
その変化に、ラビィは気づいた。
ヴラドなりに、この沈んだ雰囲気を感じ取っての振る舞いなのだと。
「ありがとうヴラドさん。あっ、それと……」
ラビィは端末を操作し、もう一つの情報を共有する。
「サブメンバーを一人、追加できるようになってました。
あまり考えたくは無いですが……もしもの時にも、すぐに入れ替えられるみたいです」
孔明が静かにうなずく。
「失った後に与えられる仕組み、というわけですか。皮肉ですが……意味はありますな」
話はまだ尽きなかったが、立ち話を続けるには長くなりすぎる。
「一度、ギルドに戻りましょう」
ラビィの提案に、全員が同意する。
歩き出す直前、ラビィは一瞬だけ立ち止まり、胸の奥でそっと呟いた。
私、戻ってきたよ。半蔵さん。
もう、立ち止まらない。
この場所から、また始める。
新しい仲間と共に。
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