第33話
端末の画面に、新たなデータ反映の通知が浮かび上がった。
《データ同期完了》
ラビィは小さく息を吸い、表示を進める。
ヴラド・ドラクレア
その文字を見た瞬間、胸の奥がわずかにざわついた。
あの城で会った、あまりにも規律と誇りに満ちた男の姿が脳裏に蘇る。
続いて、パラメータ画面が展開された。
腕力 / 知識 / 俊敏 / 愛情 / 耐久 / 交渉 / 悟性
ヴラド : 66 / 73 / 73 / 75 / 75 / 80 / 70
数値を一つひとつ追いながら、ラビィは思わず目を見開く。
どれも高水準だが、特に交渉と愛情の数値が印象的だった。
ただ強いだけではない。人の上に立つ者の在り方が、数字として刻まれている。
さらにスキル欄が開く。
固有スキル
串刺し公
周囲に畏怖を示す、恐怖の象徴となる存在。
「あれ?最初から、固有スキルもってる」
ラビィが呟くと、画面の隅に補足説明が表示された。
プレイヤーの累積クエスト達成数が一定以上に達しているため、抽出対象は初期状態から固有スキルを保持します。
「そっか……」
自分が積み重ねてきた時間が、こういう形で影響している。
ラビィは少しだけ、胸を張りたくなった。
次に、自分自身のステータスを確認する。
だが、そこには違和感があった。
半蔵が抜けたことも、ヴラドが加わったことも、ラビィ自身の数値には一切反映されていない。
「あれ?」
思わず首を傾げ、ゲームヘルプを開く。
プレイヤーパラメータは初期設定時のみ反映されます。
以後の成長補正は、同行するパーティーメンバーとの冒険履歴によって変化します。
「つまり……」
これから先、誰と歩むかで、自分も変わっていく。
ラビィは静かに画面を閉じた。
そして、もう一つ。
未確認項目の通知が点滅している。
解放項目
サブメンバー枠 1名
ラビィは息を止め、詳細を開いた。
サブメンバーはログアウト時に限り、メインメンバーと交代可能。
メインメンバー消去時は強制ログアウトとなるが、再ログイン時にサブメンバーへ即時切り替えが可能。
「……保険、みたいなものか」
半蔵の姿が、脳裏をよぎる。
もう二度と、あんな形で誰かを失いたくない。
それでも。
立ち止まり続けるわけにはいかない。
「……待ってて」
誰に向けた言葉か、自分でも分からないまま、ラビィはログイン操作を行った。
早く、会いたかった。
孔明さんたちに。
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