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第31話

一度、現代へと帰還したラビィは、自室で深く溜息を吐いた。

ヴラド公の条件、吸血鬼ドラキュラ伯爵の書物。

それを手に入れるためには、ヴラド公の居た時代からさらに進める必要がある。


検索端末を操作し、いくつもの年代と地域を絞り込んでいく。

やがて一つの情報に辿り着いた。


十九世紀末。

イギリス、ロンドン。

「見つけた!ここだ」

すぐさまラビィは遡行装置を操作する。


次の瞬間、ラビィの視界は石畳とすすけた街並みに変わった。

行き交う人々、馬車の音、空気に混じる紅茶と煙の匂い。

ここで一冊の本が生まれ、そして売られている。


ラビィは街を歩き、書店を巡り、人に声をかけ続けた。

吸血鬼、ドラキュラ、その名を口にするたび、怪訝な顔をされる事もあったが、それでも諦めなかった。


そして、ようやく辿り着いた一軒の書店。


だが、棚を見渡しても目当ての本は無い。

店主に尋ねると、申し訳なさそうに肩をすくめた。


「今しがた、最後の一冊が売れたところでね。ほら、あの紳士だよ」


店の外へ視線を向けると、一人の男が本を抱えて歩いていく姿があった。


ラビィは慌てて店を飛び出した。


「すみません!」


呼び止められた男は振り返り、穏やかな目でラビィを見た。

事情を説明し、その本を譲って欲しいと頼むと、男は少し考え込む。


「うーん……では、条件を一つ。

一緒に紅茶ティーを楽しんでくれるなら、譲ろう」


そうして二人は、ロンドンの街並みを見下ろせる喫茶店に入った。


紅茶の香りが立ち上り、静かな時間が流れる。

会話の中で、ラビィはこの物語が必要な理由を、包み隠さず話した。


ある人物のために、この本が必要である事。

それが自分自身のために繋がる事。


男は興味深そうに耳を傾け、やがてカップを置いて、静かに言った。


「物語というものはね。

人の恐怖と願い、その両方から生まれるんだ」


その言葉は、不思議とラビィの胸に深く残った。


約束通り、本はラビィの手に渡された。

だが男は立ち上がる前、もう一度その本を差し出すよう求める。


巻末を開き、ペンを取り出し、さらさらと何かを書き記す。


「楽しい時間だった。ありがとう」


そう言って男は去っていった。


ラビィは本を開き、書き込まれた文字を見て、息を呑む。


そこに記されていた名は

ブラム・ストーカー。


「……えっ、本人だったの!?」


静かな喫茶店に、ラビィの小さな声が響いた。

ここまでお読み下さり本当にありがとうございます!


更新日時は毎日致します。

平日:7時頃、12時頃、20時頃の1日3話

土、日、祝:12時頃、16時頃、20時頃の1日3話

で行います。


少しでも

面白かった。続きを読んでみたい。頑張って。と思われた方、よろしければブックマークもお願いします!

感想などもお待ちしております。

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