第29話
過去遡行を決めてから、ラビィは何度も新たに加える人物を模索していた。
検索端末を使い色々と条件を変え、時代を変え、表示されるデータを黙々と追っていく。
「……強い人、だよね」
半蔵が抜けた穴は、あまりにも大きい。
索敵、奇襲、冷徹とも言える程の冷静さ……
どれも今のパーティには決定的に足りていなかった。
ラビィは条件を絞り込む。
戦闘に特化していること。
前線に立てること。
そして……ただ強いだけではないこと。
「ナポレオン……」
戦術眼は申し分ない。
だが、孔明がいる今、役割が重なりすぎる気がした。
「宮本武蔵……」
純粋な剣の強さは魅力的だ。
けれど、孤高すぎる印象が拭えない。
「呂布奉先……」
圧倒的な武勇。
だが、その力は同時に不安定さも孕んでいた。
誰を選んでも、戦力としては間違いない。
どれも魅力的で、どれも申し分ない。
それでも、胸の奥は静かなままだった。
「戦うだけの人、じゃ……違う」
ラビィは小さく首を振り、次のデータを開く。
「……何かが、足りない」
ラビィは条件を一つ、また一つと加えていく。
戦闘能力。
統率力。
極限状況での判断力。
そして、最後に
「生き延びた者」。
検索結果が更新される。
一覧に並ぶ名前の中で、ひとつだけ、指が止まった。
派手な功績は多くない。
だが、記録には不思議な一貫性があった。
幾度も追い詰められながら、決して折れなかったこと。
恐怖を与える存在として語られながらも、
その行動の根底には「守る」という意志があったこと。
「……この人」
画面を読み進めるごとに、胸がざわつく。
英雄とも、怪物とも書かれている。
賛辞と恐怖が、同時に並んでいる。
「戦うためだけの人じゃない……」
それは、強さの記録ではなかった。
生き方の記録だった。
失うことを知り。
裏切りを知り。
それでも立ち続けた、ひとりの人間。
ラビィは、そっと端末に手を置く。
「この人……一緒に、進めそうな気がする」
理由は説明できない。
けれど、迷いはなかった。
ラビィは一度だけ深く息を吸い、静かにうなずいた。
止まっていた時間を動かすための、次の一歩。
その先に待つのが、どんな過去であろうと。
ラビィはもう、目を逸らさなかった。
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