第28話
半蔵が消えてから、ラビィは《クロノス・レガリア》にログインできずにいた。
正確に言えば、できないというより、したくなかった。
端末に触れれば、あの光景を思い出してしまう。
ニヤリと笑った偽物。
倒れ伏した半蔵。
そして、強制ログアウト。
「自分を責めるな」
最後に半蔵が残した言葉は、今もはっきりと覚えている。
それでも、心は言うことを聞かなかった。
学校でも、ぼんやりと過ごす時間が増えた。
授業の内容は頭に入らず、気付けば窓の外を見つめている。
「ラビィ……」
不意に名前を呼ばれ、ラビィは顔を上げた。
そこにいたのは、クラスメイトのユイだった。
「最近さ、ゲーム内で見かけないけど……どうしたの?」
心配そうな視線。
少し迷った後、ラビィはぽつぽつと事情を話した。
パーティが分断されたこと。
半蔵が消えたこと。
そして、自分が何もできなかったと思っていること。
話し終えた頃、ユイは一瞬言葉を失い、それから静かに言った。
「……つらかったね」
それだけだった。
余計な励ましも、無理な前向きさもなかった。
それが、かえって胸に刺さる。
その日の夜。
ラビィは自室で、棚の前に立っていた。
過去の世界でデータ抽出を行った時、半蔵に巻き付けられていた忍装束。
そして、その横には孔明、ジャンヌ、コロンブスに託された物が並んでいる。
視線を巡らせるたび、胸の奥がきしむ。
「……みんな、待ってるのに」
自分だけが、ここで止まっている。
残された三人は、今もゲームの中で自分が再び訪れるのを待っているはずだ。
ラビィは、ゆっくりと拳を握った。
「私が止まってたら……ダメだよね」
半蔵は、旅が楽しかったと言ってくれた。
それを、ここで終わらせてしまっていいはずがない。
新しい仲間を見つける。
もう一度、パーティを組む。
そして、あの時越えられなかった場所へ行く。
「……過去へ行こう、新たなデータを見つけに行くんだ」
それは逃げではなく、再び歩き出すための選択だった。
止まっていた時間が、静かに動き出す。
ラビィの中で、確かな意志が芽生えていた。
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