第24話
ほら穴の奥へ進むにつれ、空気は次第に冷え、ひんやりと肌にまとわりついてきた。
足元の岩肌は湿り気を帯び、歩くたびに靴底がわずかに擦れる音が響く。
やがて一行は、かつて蛇の魔物と戦った湧水の泉へと辿り着いた。
先へと続く道は無く、透き通った水面が静かに揺れるだけだった。
「前に来た時もここで行き止まりだったよね」
ラビィの言葉に、すぐ返事は返らなかった。
ジャンヌは周囲を警戒するように視線を巡らせ、孔明は顎に手を当てて考え込む。
コロンブスも腕を組み、納得がいかない様子で岩壁を睨んでいた。
「何か、あるはずなんだがな」
ラビィの胸の奥に、かすかな違和感が走った。
理由は分からない。ただ、何かを見落としている気がしてならない。
「もしかして……」
そう言って、ラビィはスキルを起動した。
《兎の直感 発動》
視界が一瞬、淡く揺らぐ。
次の瞬間、何もないはずの岩壁の一部に、薄い光の輪郭が浮かび上がった。
まるでホログラムのように隠されていた、奥へと続く通路が姿を現す。
「隠し通路……?」
ジャンヌが思わず息をのむ。
「なるほど。直感系スキルの真価ですな」
孔明は感心したように目を細めた。
「へぇ……嬢ちゃん、やるじゃねぇか!」
コロンブスも素直に感嘆の声を漏らす。
半蔵だけは何も言わず、静かにその道の先を見据えていた。
「みんな気を引き締めて行こうね。ここからは何があるか分からないから……」
ラビィの言葉に、全員が小さくうなずく。
隠し通路を進んだ先で開かれた空間へと出た。
そこには先へと続く道が二つに分かれていた。
どちらも同じように暗く、奥の様子はうかがえない。
「危険は含みますが、効率を考えるなら二手に分かれるべきでしょうが……はたまた堅実に行くべきか……」
孔明が静かに告げる。
右へと続く、細く曲がりくねった通路。
左へと延びる、わずかに広いが闇の濃い通路。
ラビィは足を止め、仲間たちの顔を見る。
孔明は地形を確かめるように視線を巡らせ、ジャンヌは剣の柄に手を置いた。
コロンブスは気楽そうに見えながらも、足元の感触を確かめている。
半蔵は少し離れた位置で、無言のまま通路の奥を見つめていた。
「慎重に決めるべきだな」
コロンブスの言葉に、ラビィがうなずこうとした、その瞬間だった。
ゴゴゴッ……
低く唸るような音が、ほら穴全体を震わせた。
「え……?」
地鳴りが足元から突き上げる。
次の瞬間、ラビィたちの立つ地面に亀裂が走った。
「危ない!」
誰かの声が響くよりも早く、地面は大きく割れ、通路の境界が崩れ落ちていく。
足場は引き裂かれ、視界が激しく揺れた。
「ラビィさん!」
「嬢ちゃん!」
必死に手を伸ばす声が交錯する中、地面は完全に分断された。
気が付けば、ラビィの立つ側には半蔵の姿。
反対側には、孔明、ジャンヌ、コロンブスの三人。
互いの姿は見えている。
だが、もはや簡単には行き来できない距離が、二つの道の間に生まれていた。
ラビィは荒い息を整えながら、崩れ落ちた岩の向こうを見つめる。
その耳に、落石の音だけが、いつまでも残響のように響いていた。
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