第20話
一行は、森の奥に口を開けるほら穴の前に立っていた。
中は闇に包まれており、入口から数歩先すら見通せない。
それでも奥へと続く通路があることだけは、わずかに感じ取れた。
試しに足を踏み入れてみるが、すぐに限界が来る。
視界が無いまま進むのは、さすがに危険だった。
「一度、外に出よっか……」
ラビィの言葉に、皆が頷く。
ほら穴を出たラビィは、森の地面に落ちている乾いた枝を拾い上げたものの、すぐに困った顔になった。
「うーん...火、どうやって起こすんだろ」
首を傾げるラビィの横で、孔明が静かに前へ出る。
慣れた手つきで石と枝を使い、やがて小さな火花が散った。
少しして、枝の先に小さな炎が灯る。
「わ……すごい」
感心するラビィの声に、孔明は穏やかに笑うだけだった。
その瞬間だった。
ラビィの端末が、軽い電子音を立てる。
《アイテム獲得:松明》
《無限使用可能》
「え?」
表示に戸惑いながらも、ラビィはそのアイテムを使用してみる。
すると、ポン、と音もなく、手の中に松明が現れた。
孔明が起こした火は、枝が徐々に燃え、熱もはっきり伝わってくる。
だが、アイテムとして現れた松明の炎は、近づけても熱を感じない。燃え尽きる様子もなかった。
「……なるほど、そういう事か」
孔明が小さく呟く。
「これなら、先に進めるね」
ラビィは松明を掲げ、再び一行はほら穴の中へと足を踏み入れた。
暗闇の先は、やがて少し開けた空間へと変わる。
そこには、岩の間から湧き出る澄んだ水が、小さな泉を作っていた。
松明の光を反射し、静かに揺れている。
「綺麗……」
喉の渇きを覚えたラビィは、自然とその湧水へと近づく。
その瞬間。
「ウサギ!」
短い声と同時に、ラビィの手首が強く引かれた。
体勢を崩しながら振り向いた先で、半蔵の鋭い視線が水面を射抜いている。
次の瞬間、湧水が波立ち、その中からぬるりとした影が姿を現した。
長い胴体をくねらせる、ヘビの魔物だった。
ラビィは息を呑み、すぐに半蔵へと視線を向ける。
「あ、ありがとう、半蔵さん」
「ぼーっとするな。来るぞ!」
半蔵にそう言われ、ラビィは自分の腰元へと手を伸ばした。
ナイフを抜き、ぎゅっと握りしめる。
守られるだけでは終わらない。
ラビィは一歩、前へと踏み出した。
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