第12話
酒場の喧騒は相変わらずだった。
木の杯が打ち鳴らされ、笑い声と怒号が入り混じる。その中心で、さっきまで豪快に語っていた男が、胸を張って名乗る。
「俺の名はクリストファ・コロンブス!この時代の海は、だいたい俺が歩いたようなもんさ」
「は、はぁ……」
あまりに堂々とした自己紹介に、ラビィは思わず気の抜けた返事をしてしまう。
誇張なのか本気なのか判断がつかない。
ただ、目の奥にある輝きだけは本物だった。
コロンブスは酒をあおりながら、各地の港の話、交易の駆け引き、船乗り同士の裏話を次々と語る。
聞けば聞くほど、この男が単なる冒険家ではないことが分かってきた。
(……この人、交渉も相当できる)
世界を渡り歩き、金と信用を繋ぎ、船を動かしてきた人間だ。
ラビィの中で、次のパーティーメンバー像がはっきりと形を取る。
意を決して、ラビィは本題を切り出した。
未来のこと、データ抽出という仕組み、自分の目的。そのすべてを、できるだけ分かりやすく説明する。
話を聞き終えたコロンブスは、少しだけ黙り込んだ。そして、にやりと笑う。
「なるほどな。未来か。データじゃなくて、この目で見に行けたら最高だったんだが」
冗談めかした口調だったが、その声には確かな冒険心が宿っていた。
「ま、仕方ねぇ。なら好きに持ってきな」
軽く手を振るように、データ抽出をあっさりと許可する。
「本当に……いいんですか?」
「海に出る理由なんて一つだ。面白そうかどうか、それだけだろ?」
ラビィは深く頭を下げた。
抽出が終わり、酒場を出ようとしたその時だった。
「おい、嬢ちゃん」
呼び止められて振り返ると、コロンブスが小さな石をラビィの方へポイっと投げた。
「前の航海で拾ったやつだ。俺の代わりと言っちゃ何だが、そいつを未来へ持ってけ。」
ラビィが上手く受け止めた石は、磨かれたわけではない、けれど不思議と目を引く綺麗な青い色をした石だった。
「あ、ありがとうございます。」
ラビィはもう一度頭を下げる。
「最後にもう一つ!」
コロンブスは親指で自分の胸を指し、豪快に笑った。
「俺の石いや、意志だ。大事にしろよ!ハッハッハッ!」
「アハハッ!」
思わず漏れた笑いに、酒場の空気がさらに明るくなる。
ラビィは石を握りしめたまま、港町の夜へと歩き出した。
海を越えるのは、船だけじゃない。
託された意思もまた、未来へ渡っていくのだから。
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