9-9 業界人、ここにきてパレそう
12月28日朝10時。
避難勧告が発令された中でも、東京にはまだ多くの都民が残ったままで避難は滞っている。
都庁の議事堂では都知事が避難を促す配信動画の撮影の準備が行われていた。
映像会社のスタッフのほか、都知事とゲストMCのアナウンサー、ヘアメイクやスタイリストなど、合わせて10人のコンパクトな撮影であった。
配信前に最後のリハーサルをしようと現場が動き出したその時、銃を所持した男たちが議事堂に乱入してきたのだった。
銃撃音で混乱する中、取材クルーのひとりは警察に中の様子を知らせようと思いつき、隙を見て生配信のボタンを押したのだった。
―――――――
家族4人で朝ごはんを食べたあと、私は沢木のヘリで官邸に向かっていた。
その時、私のアラートが強く反応した。
「沢木! ホバリングだ。このまま待機!」
すぐに統合作戦司令室へ連絡する。
「スクランブルだ。総理と幹事長、冨川へ回線を繋いでくれ」
すぐに回線が確保される。
「こちらツバメ。強いアラートが来ました。情報収集をお願いします。こちらの現在地は調布上空」
5分後。初報が入る。
『新宿で爆発確認。都庁だ』
「大臣機3分で現着見込み。使えるヘリポートは?」
『確認中。………海王プラザホテルが使用可能。作戦本部は隣接道路に設置予定」
ヘリポートに到着したタイミングで続報が入る。
都庁周辺の駐車車両が次々と爆発。
直後にテログループから入電があった。
現在、都庁の都議会議事堂をテログループが占拠しており、第一本庁舎と第二本庁舎の爆破告知をしているという。
要求は緊急事態宣言の解除。
神の御業に抵抗するなど許さない。
新興宗教組織の犯行だった。
―――――――
「全体概況は理解した。人質は?」
「緊急事態宣言下ですので一般人はいません。職員のみです。都議会議事堂では取材が予定されており、都知事含め15人が拘束中、庁舎の職員はまもなく退避完了見込みです」
「実際の人質は議事堂だけで、庁舎は建物が人質みたいなもんなのかな。爆弾処理は?」
「退出は認められていますが庁舎への立ち入りは認めないと。誰か入れば爆破すると言ってます」
「わかった。ちょっと庁舎見てくる。このまま回線開いといて」
「はい?」
私はそのまま歩いて作戦本部を出る。そして超速で庁舎へ進入した。
アラートをダウジングのように使ってすぐに爆弾をみつける。
「こちらツバメ。テレビ通話だ。このまま処理班と繋いでもらえるかな」
「え!?……あ、動画きてます。繋ぎます」
「こちら対策本部。……どいうこと? 大臣が庁舎に入っちゃった? どうやって―――え? もう繋がってる? えー、こちら対策本部です」
「防衛大臣の金沢です。動画は見えてますか?」
「え、本当に大臣です? てか何やってんすか」
「悪い、時間ないだろ。これ爆弾なんだけどどんな感じ? これ持ち運びできるやつかな。動かしたらだめ?」
「処理班に代わります。―――大臣、見えてます。リモコン式ですね。―――感知はありません。大丈夫です、動かせます」
「わかった。このあと第二庁舎のもピックアップしてから持っていくよ。5分で公園空けといて」
「え? あ、はい。了解しました」
5分後、爆弾を抱えた私は公園で爆弾処理班にそれを預けた。
呆気に取られる公安らしき人に尋ねる。
「議事堂はどうなってる?」
「いまSATが犯人グループと交渉中です」
「わかった。SATはそのまま待機させといて。ちょっと制圧してくるよ」
そう伝えると議事堂へ移動。
包囲していたSATに軽く挨拶してから中へ突入。
秒で犯人グループを拘束した。
事件は無事に解決できたのだった。
―――――――
私は総理と三上さん、冨川と官邸で話していた。
「いや……早期解決はよかったよ。おつかれさま」
「総理、どうやって話をまとめたら?」
「ツバメやり過ぎだ。なんて発表するんだよ」
「時間がもったいないと思ってさ。咄嗟に判断したんだよ。ごめん」
「まあ、解決も早すぎてどのメディアも現場には間に合わなかったようだ。国民大移動中だしな」
結局その場はそれで落ち着いた。
だが――――。
配信されていた動画が話題になってしまった。
「防衛大臣」が「銃を持ったテロリスト」を「生配信中」に「単独」で「生逮捕」したのだ。
キラーワードが多すぎてめちゃくちゃだ。
生配信は犯人確保とともにもちろん終了したのだが、すぐに切り取られて拡散された。
とんでもない勢いでバズる動画の拡散はもう止まらない。
ツバメはまたも注目を浴びてしまう。
そしてそのあとが良くなかった。
「なんかおかしくないかこれ」
当たり前のことだ。
超速ゆえにツバメの姿がカメラに捕らえらることはなかったが、唐突に映りまた消えていくそのたびに犯人が拘束されていくのだ。
そこには防衛大臣の姿がしっかり映っていたのだった。




