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9-8 業界人、家族4人で幸せをかみしめる



結局、明け方まで飲んでしまった。

とにかく楽しかった。


キャンピングカーに戻ってヒカリと休む。

そして気になっていたことを聞いた。


「河東さんはどうだ?」


「こちらにきてからはすごく安定してるってお母さんが言ってたよ」


「そうか、それはよかった。気になってたんだ」


「毎日私がツバメの分も一緒にいるから安心してて大丈夫だよ!」


「明日会うのが楽しみだな。早く寝ないと」


「だめだよー。みんなも楽しみにしてたから我慢してたけど、これから婚約者の時間だよ!」


なんてかわいいんだ。

やはりポケットに入れておきたいぞ。


寝たのは朝になってからだった。

うむ。幸せだ。


―――――――


ちょっと眠って7時に起きた。

少し早いが河東さんと朝ごはんが食べたかった。

午後の仕事に備えて酒は控えめにしたし。 

前から徹夜は余裕だったがこの身体になってからは寝なくても大丈夫っぽい。


メモを残してヒカリを起こさないように気をつけながら家を出て病院棟へ向かう。


部屋付きの看護師さんに部屋へ案内してもらう。

おふたりとも起きているそうだ。

部屋に入る前に食事のことを聞いてみた。

食は細いがまだ自分で食べられるそうだ。

ちょうどそろそろ朝食の時間だ。


「失礼します。河東さん、ツバメさんがお見えですよ」


看護師さんが声を掛けると奥様が嬉しそうにこちらへやってきた。


「まあまあツバメさん、お疲れでしょうに」


「母さん大丈夫ですよ。昨日帰ったのが遅かったものですから遠慮しましたが待ちきれなくて。こんな早くから来ちゃいました」


「さあ、顔見てやって。昨日から楽しみにしてたのよ」


河東さんはもう自分だけでは動けないようだった。


「親父、ただいま。具合はどうだい?」


「……おかえりツバメ。……今日はちょっと身体が重くてな。……このままで許してくれ」


ベッドの横にあった椅子に座りながら声を掛ける。


「家はどうかな? 居心地はどう?」


「……すごく気に入ったよ。今日みたいに動けなくても庭が見えるのは嬉しいものだね」


「そこはヒカリとこだわったんだ。よかった」


「縁側がお気に入りなのよ」


「そうなんだね。でも寒いから気をつけないと」


「そう言っても気分がいいと出たがるのよ。暖かくしているから大丈夫よ」


「親父、あんまり母さんに心配かけるなよ」


そこに朝食が運ばれてきた。

持ってきてくれたのはヒカリだった。

 

「ヒカリ、起きれたのか」


「当たり前だよ! ツバメが起きたのわかったから私たちの朝ごはんにはお弁当作ってきたよー!」


「ありがとう。じゃあ椅子持ってきてみんなで食べよう」


私はベッドの位置を少し動かして、河東さんを囲むように椅子を並べた。


「今日は家族4人が揃ったね。パパよかったね!」


「パパ呼びになったのか!?」  


「せっかくお父さんができたからね。いろんな呼び方を楽しんでるんだよ。今日はパパの日!」


「ヒカリちゃんのおかげで毎日楽しいわ。この人も毎日喜んでるのよ」


「……ツバメには勿体ないかもなあ」


「違うぞ親父、ヒカリにオレが勿体ないんだよ」


「うわあ、ママ、ツバメがなんか言ってるよ」


「ヒカリちゃんはこんなにいい子なのにねえ」


「それはそう。いい子なんだよなあ」


「……ツバメの照れ屋も少し治ったな」


「言われてみれば! 最近はすぐ仲良くしてくれるかも。前なら素直に褒めてくれるまでだいぶ時間かかってたよー」


「……ツバメよかったな。ヒカリはお前を照らしてくれる太陽だな」


いつか私が思った言葉だ。

器用に仕事が出来てもこんなに感情を出せる相手はいなかった。

ヒカリのことを自分の太陽だと認めたときから、明らかに私は変わった。

仲間のおかげもあるけれど、きっかけは間違いなくヒカリだ。  


「まぁ、そうだね。ヒカリはオレの太陽だよ」


「また認めた!」


「ツバメ、人生でいちばん大切なことを教えよう。それは愛する人に愛されているかどうかということだよ。覚えておくといい」

 

この人はもう、本当に。

とんでもなく重い大切なことを教えてくれる。

シンプルだけどそのとおりだ。


「……覚えておくよ。なら親父も幸せだな。母さんが一緒にいてくれてよかったな」


「あぁ。間違いなく幸せだ。これが人生だ」


その言葉を一切詰まることなく言い切った。

この人は本当にかっこいい。勝てないなあ。


4人で食事を囲む。

寒い冬だけど――窓ガラスの向こうの庭はぽかぽかと暖かく、春のように見えた。

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