9-4 12月25日 7 世界への開示
12月25日深夜0時
―――この日は名古屋の空間が歪んだ。
ここまで4つのエリアに事象が起きたが、日本は少なくとも3つが海まで範囲が及んだ。札幌はギリギリ範囲外だがそんなものはこちらの勝手な予想だ。
『島国だから仕方がないとはいえ……自衛隊の海軍にはかなりの負荷がかかりそうだな。ツバメ、大丈夫か』
「どの程度のモンスターが出るのかによりますが……そればかりはわかりませんからね。海と空は燃料を食います。弾薬もそうですが。精製工場の維持も最大の課題です」
私が備えてきたのは備蓄だ。
三拠点だけなら何十年でも耐えられる備蓄はしたが、日米全軍の維持ともなれば基本的な考え方が変わる。備蓄ではなく、製造し続けなければいけない。
『大丈夫だ落合総理。横須賀には第七艦隊がいる。彼らは太平洋を制する世界最強の艦隊だ』
「心強いです。ハリソン大統領」
『すべて叩き潰すから安心してほしい。それよりもだ』
「世界首脳会議ですか」
『ああ。同盟国以外、ほとんどの国が不参加だ。緊急開催は見送られた。国連にも「知る者」が必要だったな』
「……厳しいですね」
『困るのは彼らだ。放っておけばいいんだよ』
『そうはいかんだろ、アンダーソン』
こいつはある意味で全くぶれない。
徹底したアメリカ至上主義だ。
至上主義の前に付く言葉がアメリカであるうちはまだいいのだが……それが歪んだ形に変わらないことを願う。
ジョニーにはアンダーソンにアラートが鳴ったことを伝えておいたので注意はしてくれると思うのだが。
『よし、少なくともこのあと日米の連名で首脳たちには情報を開示しよう。あくまで大規模災害の恐れあり、としてだ』
『一方的な通知にしかならないのか。それだと各国の温度感が掴めないな。せめて話し合いにできればよかったのだが』
『同盟国には世界の終わりについてを開示してはどうだ』
『いや、いくら同盟国とはいえそれを事実として飲み込むには無理がある。「大規模災害へのアラート」の方が対策は進むかもしれません。少なくとも私の配下はそのほうが動きやすい』
警察機関を組織するFBIのトーマス長官の意見だが確かにそれには一理ある。
『では首脳への通知はそのように。直接反応があった国とは話し合いを進めて、温度感によっては世界の終わりを開示していこう。明日からは私と落合総理でこれに当たろう。もう時間がない。分担して効率よく動く時期だ』
『これだけ動けば情報も漏れるでしょう。その対策も必要だ。すべてを知る我々の足元が揺らいでは話にならない。日本はどの機関が情報管理にあたるんだ?』
ミラー副大統領の問いに私が答える。
「統合幕僚監部は三上さんが幕僚長です。幹事長という立場も使えるしコントロールできると思います。防衛大臣政策参与として冨川にもサポートさせます」
『わかった。こちらは私が指揮を執る』
『いや、情報戦です。CIAに仕切らせてもらいたい』
『CIAは情報集約のみに専念しろ。全体の指揮と決定はミラーだ』
ハリソン大統領の決定で日米の担当は決まった。
「明日、日本ではアメリカと同時に非常事態宣言を出す。防衛大臣、頼むぞ」
「わかりました。ギアチェンジですね」
明日には大規模災害に備えて非常事態宣言を発令する。
自衛隊は緊急時の指揮命令系統へ移行済みだ。
国民に提示する緊急時の避難計画も完成した。
そして大統領と総理は世界首脳会議の代わりに世界的規模での大規模災害の恐れがあることを共同声明で発信した。
それは強力なアラートだったが、信じる国と信じない国に分かれて、その割合は明らかに後者が多かった。




