7-⑫ 業界人、アメリカ大統領と会う
ついにアメリカ大統領との面会である。
当初、非公式で行われるはずだったこの会談は、私が防衛大臣になったことで当然公式のものとなった。
ホワイトハウスでの対面である。
同行したのは冨田だ。
総理は連れていけない。
国対国の構図が強くなり本音が引き出せなくなる。
それは三上幹事長も同じだ。
その点、冨川は民間企業であるツバメグループの副会長であり、政策参与という事務方であることもいい具合の配合である。
そしてアメリカ側のアテンダーは大統領と個人的な仲を持っているジョニー・スミスだ。
本国の中将でこれまで影で私を全面バックアップしてくれた恩人である。
そして公式な訪問となったことでマイケル・ウィルソンも同席してくれることになった。
日本の米軍基地総司令である。
「さすがに緊張するな。ホワイトハウスか。まさかここに来ることになるとはなあ」
「非公式か公式か、どっちが良かったんだろうな」
「会えばわかるよ。人を見る目には自信がある」
「オレは非公式のつもりだったけどな。ツバメが日本の防衛大臣になったからには公式推しだ」
「なぜだ?」
「もともとジョニーが動いた時点でジャックはツバメを認めるはずだった。それに日本とアメリカが取るべき道はとっくに決まっている。世界の終わりに、まして同盟国が腹の探りあいをしても無駄だ。ツバメなら探り合い無しで物事が進む。だったら公式で即決すべきだ」
「そうだな。時間もない。本音でいいだろ。もしもの時は単なる就任挨拶で終わればいい」
そして私はアメリカ大統領・ジャックハリソンと顔を合わせたのたった。
『やあ、ツバメ、よく来てくれた』
「お招きありがとうございます大統領」
お互いに歩み寄りまずは握手から。
「まずはハリソン大統領、私の就任に際してはあのような温かいメッセージをいただきありがとうございました。おかげで自衛隊は私をすぐに受け入れてくれました」
『気にするな。ツバメのことはジョニーからしつこいほど聞かされた。絶対に彼を摑んで離すなってね。それとこれは就任と婚約のお祝いだ。受け取ってくれ』
そういってハリソン大統領が手渡してきたのはなんとクルマのキーだった。
驚く私に彼はニンマリと笑う。
『私が使っていた移動車だ。世界に1台だぞ』
「ええ! 本当ですか?」
『これだよ、見てみろ』
おもむろに携帯を出し、動画を見せてきた。
完全なプライベート動画だ。なんかすごい。
そこに映っていたのは1台の大型車両。
ハンヴィーが小さく見えるほどの威圧感だ。
『フォードをベースにカナダで作ってもらったものだ。コンクエスト・ナイト・XVというクルマの大統領仕様だぞ。プライベート用に欲しくて買ったんだが、妻もこどももゴツくてキライだというんでね。ツバメにあげるよ』
「これ! いいんですか!?」
『マイケルからツバメは装甲車が好きだと聞いてね。使ってくれ』
「大統領。私の携帯もご覧ください。このクルマに憧れていたので写真が保存してあります!」
会談は最初から楽しくスタートした。
「私もプレゼントを用意しました。頂いたものと比べられない程度のものですが」
そう伝えて渡したのは陶器だ。
「たいした値はつきませんが、陶芸家だった私の曽祖父の作品です。私は父から受け継ぎました。大統領が以前、陶芸好きとおっしゃってる動画を見て思い出して持って参りました」
『いいのか!? 見事な作品だな。すごい!』
大統領は子供のようにはしゃいで喜んでくれた。
スタートは最高だ。
国を背負ってなければもう友達と呼び合えるような距離感だ。
まずは表のテーマから。
日本が今までとは別次元でのパートナーシップをアメリカに求めていることを伝えた。
この意志は私のものだけではなく落合総理からも支持を受けた方針であることも添えて。
ハリソン大統領はその意向に大きく頷き、これまで以上の支援を約束してくれた。
さあそして本番はここからだ。
軽く深呼吸をしてからジョニーとマイケルを見ると、彼らも頷いてくれた。
「ハリソン大統領、ここまでは日本の防衛大臣としての所信表明と公式な会談でした。ここからはひとりの友人としての時間がほしいのです」
『なら私のことはジャックと呼べ。話はそれからだな。よし、バーに移ろうか』
公式な会談は終了し、ほかのスタッフや取材陣などはここで外れる。
ジャック、ジョニー、マイケル、私と富川。
限られたメンバーでの第2ラウンドが始まった。
『さあ、ここからだな。まず聞いていいか? ツバメ、キミは何者だ?』
いろんな意味で直球だ。さすがは大統領たな。
「私は人間ですよ。但し普通じゃありません。いつ気付いたのですか?」
『ジョニーがあそこまで言うんだ。なにかある。だがどんなに調べてもキミは単なるビジネスマンだ。ただ、キミを悪く言う者がひとりもいなかったのは流石だと思ったがね。そしてジョニーは軍の武器や資材をツバメに横流ししたいと言ってきた。進退をかけてこれはアメリカのためになると断言した。これで、決まりだ』
「そうでしたか。わかりました。最初にお伝えします。私は絶対に裏切らない。なぜならジャックと私はお互いに間違いなく良縁だからです」
『クルマをもらったからかい? 甘いぞ』
「ハハハ、それもありますね。でもそれとは別の理由です。ジャック、私は特殊な能力を持っています。人との縁がわかる」
『どういうことだ?』
「人の善意と悪意がわかります。不幸な出来事も直前なら予知できます」
『………まだ信じられないな。ツバメがいいやつなのはわかるけどな』
「オーラみたいなものが見えるんですよ。感覚的なものですけどね。ジャックのはすごい。絶対的な自信と責任。そんなものを強く感じます。誰よりも力強いものだ」
『悪い気はしないよ。ありがとう』
「この感覚はお伝えできませんが、ジャックに私の力を見せても安全だという確信もあります。なのでまずはお見せしますね」
私はバーカウンターを指指し、それを消した。
―――――――
『ワハハハ!すごいなツバメ!次はこれ消してくれ』
あれから私はこんな調子で……遊ばれていた。
狭いところではつまらないと連れ出されて、今は武器庫にきている。
戦車や飛行機などを消しては戻してを繰り返していた。
『あー楽しかったよ。これは核の後始末も頼めるのか?』
「ちょっと待ってくださいね………なんか核がわからないみたいですね。物理的なものなら大丈夫だと言ってますね」
『誰と話してるんだ?』
「精霊です。アイテムボックスに憑いてるんですよ」
『ワオ! 見たいぞ! 会えるのか?』
「新世界になれば会えるみたいですよ。そのときに挨拶するって言ってます」
『残念だな。楽しみにしてると伝えてくれ』
『どうだジャック。仲間になれと言った意味をわかってもらえたか?』
『ああジョニー、そのとおりだ。まあ勝てるイメージが湧かないな。こんなのは初めてだ』
そこでジャックは大統領の顔になる。
『ツバメ。改めて礼をいうよ。新世界の情報には本当に感謝する。私たちも事前に準備ができるのは大きいよ。日本にも協力は惜しまない』
「覚えておいてほしいのは、相手も望んで交ざるのではないということです。やみくもに敵対するのは避けて、共存を試みたいと思ってます」
『ああ、わかっている。だがそれも相手次第だ。そして私たちの世界にも面倒な国がある。そこが暴れたらアウトだ』
初回の打合せは完璧だった。
私たちは固い握手をして次回のアポを決めたのだった。
ジャック・ハリソン
アメリカ合衆国大統領。
気さくな性格だが世界のリーダーとしての信念は揺るがず、強い。
ツバメとほ初対面から厚い信頼関係で結ばれる。




