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7-6 業界人、総理大臣と会う



ジョニーのアテンドで在日米軍基地の総司令・マイケルと手を結ぶことができた。


いずれ大統領との面会もある。

私はこの国のトップと改めて会うことを三上さんに打診した。

河東さんにも筋を通したが、今回は三上に任せるとのことだった。


数日後、三上さんから連絡が入り、私は仲田町へ向かった。

非公式というとこで公務を行う官邸ではなく住まいである公邸への訪問である。


「お久しぶりです、落合総理。ファームの会見では大変お世話になりました」


「いやそれよりだよ。婚約おめでとう!」


「あ。あり、ありがとうございます。すみません、あのような恥ずかしい姿を……」


「いや、面白かったよ」


「それが効くんです……。どうかこのあたりで」


「まあわかったよ。ファームはその後どうだ?」


「おかげさまで若者たちが大勢詰めかけてくれています。指導役の地元農家さんともうまくやれているようで、ファームの社員としてそのまま定着してくれる人がほとんどです」


「それは素晴らしいね。これからもうまく進めてください」


「ありがとうございます」


「さて………こうして公邸で会うということはついに私に秘密のエリアを教えてくれるのかね」


「はい。そのために参りました。落合総理、一緒に世界を救いましょう」



―――――――


時間をかけてすべてを伝える。


話を聞いた総理はしばらく身動きせず黙っていたが、ようやく言葉を発した。


「ふぅ………いったい何が出てくるかと思ったらまさかこのような事態だったとは」


「報告するわけにもいかず、お伝えするのが遅れましたことを心よりお詫び申し上げます」


「仕方ないですよ三上幹事長。さすがにこれをあなたから公式に聞いてしまっては動けなくなります」


「お気遣い痛み入ります」


「さてどうしたものか。最大戦力である自衛隊における危惧はモンスターの初撃か」


「はい、感染型ですと詰みます」


「感染者を病人ではなく駆逐対象としてはまとめられないと思います」


「アメリカは国民が自衛手段を持っているが我が国にはそれがない。自衛隊と警察はなんとしても最後まで機能させねばならない」


「おっしゃるとおりです。近く私がツバメ……金沢さんの紹介で在日米軍の総司令とコンタクトする予定です。そこである程度アメリカの考えをヒアリングしてきます。こちらは幅広く検討中としますが、共闘できることを最優先に協議してまいります」


「ツバメくん、ハリソン大統領とのアポイントはいつ頃になりそうだ?」


「三上さんとマイケル……えっとウィルソン総司令が会うのが先になりますが、そこからは向こうも早めてくると思います」


「そうか。どうあれ世界の終わりについて国として議論するつもりはない。そのときに自衛隊の最高司令官である私がどう指揮を執るかだ。その決意をするために君たちのアドバイスがほしい。ツバメくん、これから定期的に議論したい。東京と清山のパスを私にももらえるか?」


落合総理はとてもまっすぐで熱意のある方だ。

とてもいいオーラな出ている気がする。

またいい縁がつながれたのだろう。


落合総理との面会を終えた私はその足で赤坂へ。

河東さんへ報告へいくことにした。


「やあ、よく来たね」


「お身体はいかがですか? 少し顔色が良くないように見えます」


「最近は少し調子が悪くてね」


「出直します」


「いや、構わないよ。休めばよくなるものでもない。時間が惜しい」


「そうですか……では手短に。在日米軍基地の総司令とは共闘で握れました。さきほどの落合総理との面会も上手く進んだ気がしていますが……」


「……どうしたね」


「自衛隊が……少し気になります」


「うん」 


「落合総理は世界の終わりを国と議論するつもりはないと明言されました」


「当然だ。国会に上げたらそこで機能停止する」


「落合総理はその日を迎えたときには最高司令官としての独断で判断すると言われました」


「うん」


「アメリカは常に世界平和を担う責任を自覚しています。それに圧倒的な実戦経験もある。130以上の基地を束ねる司令官との共闘はとてつもない武器になると思います」


「自衛隊にはその覚悟と経験がない、か。仕方ないな。事実彼らは戦争をしたことがないのだからね。国を想う気持ちは疑わない。志の高い者たちばかりだろう」


「はい。そんな自衛隊が世界の終わりの混沌とした中で突然地獄に落とされるんです。いくら最高司令官が正しい指揮をしても、現場に届く前に、中で機能不全を起こす気がします」


「よく分かっているね。その確率は高いよ」


「自衛隊の中に明らかに駒が足りません。自衛隊をいざというときに束ねられる人材が必要です」


「そうだね。……私がツバメの配下の戦力確保には現場のツテを使えと言ったのを覚えているかい」


「はい」


「私が伊東司令を挟んで防衛大臣とツバメを直接会わせなかったのは、つまりそういうことだよ。……私は彼を信頼していない」


――――――――


河東さんは防衛大臣を完全否定した。

河東さんが認めないならそれはもう決定だ。

その人にはなにかが決定的に足りないのだろう。単純な好き嫌いはあり得ない。

必要なら毒ごと飲み干す人だ。


「そんなに、ですか」


「おそらくは自分の思うようにしか動かない。自分にとって都合がいいか悪いか、それしか考えない男だ。まあ平時ならそれでも使える男ではあるよ。実際、予算もうまく通して上手くやってる。だがそこまでだ。世が平和ならそれでもよかったが、世界の終わりに彼が防衛大臣であることは日本にとっては最悪といっていい」


「…………」


「防衛とは中をうかがうものではない。体を張って外をみるものだ。いくら非公式とはいえここまでツバメが派手に米軍とコンタクトを取っていても気づかないのがいい証拠だ。――彼はおそらく国防に興味がない」


「そんなことがあり得るのですか?」


「戦争をする外国ではあり得ないね。でも絶対に戦争をしなくて済む日本ならあり得る話だ。

さて、防衛大臣は梅元という。ここまで私は彼の名前を発したことがあったかい?」


「いえ」


「そしてツバメは一度でも彼の名前をアメリカ側から聞いたことがあるか? おそらくないだろう。

それがすべてを表している」


世界の終わりを伝えて逃げ出してくれたほうがまだ良いとすら言い切った。

これは悪口ではない。

河東さんは人の悪口を絶対に口にしない。

これは悪口ではなく、事実なのだ。


「だからといってこのまま初撃で自衛隊を失っていいと思わないからね。ツバメ、大統領に会う前に私と防衛大臣に会いに行こう。そこで決めるんだ」


「なにをでしょうか」



「自衛隊を乗っ取るかどうか、だよ」




落合 登 65歳。

内閣総理大臣。

実直な性格で三上幹事長からの信頼も厚い。

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