1-5 業界人、アイテムボックスを得る
プレゼントギフトには「アイテムボックス」を選択した。
拙い知識ながら、たしか魔法世界においてもレアで有効性はかなりあるはず。
もちろんこの世界においてはとんでもないチートアイテムだ。
これから半年の準備に際しても有効なのは間違いない。
『ではこちらを。魔法の袋になります。時間停止、物量無制限のレアアイテムです。また収納内容の管理のために、精霊が内包されておりますので、詳しい仕様は彼女にお尋ねください』
なんと充実したカスタマーサービス!
精霊付きとはとんでもなくいい選択をしたのかもしれない。
つい大きくガッツポーズをした私に、声の主はこれまでの無機質なトーンからほんの少し感情を含んで言葉を発した。
『ここだけの話、あなたの選択はとても良いものでした。これも【超絶ウルトララッキー】の効果なのかもしれませんね』
「はい、ありがとうございます!」
『では以上になります。何か質問はございますか?』
少しだけ考えた私はこう質問した。
「世界が変わるまでの行動になにか制限はないのですか?」
『はい、特にはございません。少なくともその日を迎えるまで神を含めて我々があなたに干渉することは一切ありません。というよりも干渉したくとも出来ないというのが本当のところです。ですから基本能力をいかに使おうともその魔法の袋をどのように使おうとも自由です。ですがひとつアドバイスをするならば…。能力開示は慎重にされたほうがよろしいかと思います』
「それはどういうことですか?」
『過去に準備期間中につい浮かれてその能力やアイテムを世界に開示した方々がいます。中にはもちろん世界を救うため、危機を知らせる手段としての開示をされた方も。でもその方々はもれなく来たるべき日を迎える前に命を落としました』
「え、神の怒りみたいなことでしょうか?」
『いえ、違います。その力を欲する権力や国々による争奪戦の果てのことでした。守るべき人類は時として信じられない選択をすることがあるのです』
実は早々に世界の危機を証明するのにこの力を使おうとしていた私は軽い衝撃を受けた。
「確かに安易な行動は世界に混乱と争いを生むのかもしれませんね…。ご忠告ありがとうございます。熟慮した行動を心がけます」
『いえ、こちらこそ差し出がましいことを。このようなことを申し上げるつもりはなかったのですがあなたにはついアドバイスを送ってしまいました。それではチュートリアルは以上となります。この世界の終わりまであと半年、悔いのないようしっかりと準備をしてその日をお迎えください』
無機質だった声はいつの間にか優しさを含む声でそう告げたのだった。