6-5 業界人、農業ブームを画策する
三上幹事長は防災と国防の視点で政府を動かし、「結果的に」新世界への備えとなるように働きかけてくれる。
私たちは農場ファームの本格推進に農水省のバックアップを得て動くことになった。
「―――とまあ、そういうことで河東さん、三上さんと当面の動きを決めてきたよ。スパイ事件はある意味で結果オーライだ。みんなお疲れさま!」
「って言われても私はバーベキューしただけだよ。キャンプ楽しかったねー! またやりたいな」
「不正に協力した委託業者は徹底的に懲らしめるわ。ツバメ社の採用面接で不正カンニングって見出しでニュースにしてやる」
山橋さん、怒ってるなあ。
とにかくスパイ事件がドス黒いものでなくてよかった。
拠点破壊とかシャレにならない。
「で、私たちが直接取り組むのが農業ファームの立ち上げだ。冨川よろしく」
「これまでは地元の組合や農家の方々と町おこしとしての協力関係を築いてきたが、これからは農水省もバックアップする大型プロジェクトとして動かすことになった」
「「「「おおー」」」」
「まずはツバメグループで清山高原の米や野菜のブームアップキャンペーンを張る。もうすぐ森ノ島のイベントが始まるからそれが終わったらタレントはみんなこっちで動いてもらう」
「オッケーだよ! 農業体験の番組やりたーい。家庭菜園を全国で流行らせてやるんだ! あとオリジナルパッケージの野菜の種とかもいいなあ。生写真入れて売ろうよー」
「それいいな。タクスケ、商品化してネモの商社に流させてくれ」
「わかりました!」
「メンバーカラーにちなんでメンバー野菜を決めよう! 羽山さんに相談しよーっと!」
ヒカリ、絶好調だ。いけいけ!
「ネモはメディア企画担当。記者会見の段取りと農業体験番組の売り込みよろしく。熱山が埋もれないようにメディアを動かすタイミングはうまくやってくれ」
「了解っす。羽山さんと動きます。ツバメさん、尺が伸びるならセット売りもオッケーっすよね」
「もちろんだ。ファームの完成記念には総理も来る予定だ。そのへんも匂わせて動いていいぞ。麹町テレビの鉛足ダッシュにも絡んでもらえ。福島と山梨の横断企画も悪くないだろ。あとワイドショーの帯企画はゲットしろよ!」
「懸念は農水省と組合の折り合いの悪さだが、そこはオレがなんとかまとめてみせる。三上さんも配慮してくれるだろう。ファーム自体はほぼ完成しているし当日は微調整だ」
「微調整はどんなものっすか?」
「大きく設計をいじることはないよ。足りないものといえば、コンテナハウスをメディアのためにいくつか追加配置するくらいか。駐車場なんかは空き地を使えばいいだろう」
ファームを含めて居住地など一般人の活動エリアと、防衛に関する機密エリアはもともと離して設計していた。
ファームにメディアを入れるのは大きな問題ではない。
だがスパイ事件の例もある。
機密エリアへのネズミの侵入には注意が必要だ。
「懸念点は拠点の移動制限だ。花川くんにはそこの対応を検討してほしい。機密エリアへの侵入を防ぐセンサー類の導入とかな」
「ファーム入場に際しては専用入口を作ってコントロールするつもりでありますよ。そこでナノナノGPSの組み込まれた取材パスを着用させるであります。番号ごとに位置特定ができますよ。ファームからの距離に応じてこっちにアラートが鳴る仕組みにしますです。現場ではもちろん無音ですので動きがバレてることにスパイは気づきませんですな」
「「「「「「おおーー」」」」」」
さすが天才。懸念点は相談前に解決してた。
そしていよいよ森ノ島と熱山のコラボイベントの準備が佳境を迎えていた。
私たちは明日から森ノ島へ戻る。
―――――――
清山ファームの計画を整えた私たちは森ノ島のイベント準備のために熱山へ向かう。
今回は時短のために沢木のヘリで移動することにした。
「やっぱり速いな。クルマとは比べものにならない」
「そりゃそうですよ師匠! アパッチとスタリオン使えばもっと速くなりますよ」
「スタリオンはめちゃくちゃ運べるんだろ」
「機内にはフル装備の兵士で55人ですね。吊り下げで16トンいけるそうですよ」
「16トンて何人だろ。そのへんもシミュレーションしておかないとな」
花川くんにマイクつきのヘッドホンをつけるよう指示してスタリオンでの難民搬送計画を伝える。
「吊り下げ式に対応した、人を運ぶのに特化したカーゴを作りたいんだ」
「まず乗せるハコをどれくらいの強度にするかでありますね。エレベーターの制限人数はひとり体重65キロで計算するですよ。それに身体ひとつで避難ってことはないでありますからね」
「ヘリは離着陸にかなり揺れますからね。ハコはそれなりに大型になるでしょうね。普段ヘリで運ぶものは戦闘車両とかですから、大勢の人を運ぶなら……イメージはバスかなあ」
「なるほどであります。着席型で考えましょう。揺れや回転の対策にスタビライザーは必須でありますな。うん、やってみますですよ」
天才花川と話しているうちにあっという間に森ノ島へ到着した。
―――――――
森ノ島にもともとあるヘリポートには汐田市長と初岡オーナー、魚崎代表が出迎えにきてくれた。
前回すっかり打ち解けていた私たちは初メンバーたちを紹介しながら歩いてホテルへ向かった。
用意された会議室で改めて状況のすり合わせを行う。
まずは森ノ島について初岡オーナーから。
「屋外のイベントステージはみなさんから提案いただいた図面どおりに完成しました。驚きましたよ。ついでに地下施設まで作ってくださるとは」
「いま国が防災に力を入れてますからね。ついでにやっちゃいました。助成金をたっぶりもらいましたので資金についてはご安心ください」
次は汐田市長だ。
「行政はなんとかなりました。公共機関、自家用車への対応含めて市の受け入れ体制は万全です」
「シオありがとう。この期間じゃ市政の理解も大変だったんじゃないか?」
「そりゃ反対はあったけどな。民間主導のイベント企画への対応、で押し切ったよ。このリターンを見過ごすのかと熱弁したら納得してくれた。反対派たちも今じゃ先頭走って準備してくれてるよ。大丈夫だ」
「市街のホテルのほうはどうです?」
これには汐田市長の部下が答えてくれた。
「今回は大型ホテルはほぼ乗っかりましたが、さすがに中小規模までは手が回りませんでした。参加希望をしてくれたところには売店にノベルティを置いてもらうことで納得してもらいました」
「それはいいですね。グッズは足りてますか?」
「大丈夫です。根本さんの商社から追加搬入が来てます」
「ホテルのアレンジは進んでますか?」
「メンバーのみなさんがリハーサルでお越しになるたびにノリノリでやってくれましたよ! ヒカリさん、ヒカリルームも完成してますからあとで見てくださいね」
抜けた人気のヒカリルームは大型施設中心に50室を用意した。
Jungleとsweetsはメンバー10人がひとり10部屋ずつを担当した。
今回は時間的に壁紙や内装をいじるような施工は一切していない。
寝具や部屋の小物類をインテリアデザイナーがメンバーカラーを活かしてコーディネート。
あとは本人が書いたイラストを絵画やポスターにして飾ってある。
森ノ島で新たに撮影した未発表のグラビア写真を使った等身大のポスターが額装されて飾ってあるのだが、それも部屋ごとに異なっていて全部観るのだとファンは聖地巡りをするつもりだとか。
最後に魚崎代表。
「ツバメさんが仕掛けた配信企画がバズったんだよ。考案したフードメニューがとんでもないヒット商品になったんだ。最初は島内限定だったが船の順番待ちが問題になってダイヤをいじっても捌けなかった。今じゃ市街でも提供するようになったぞ」
メンバーが漁師に弟子入りするシリーズ配信企画で顔出ししていた魚崎さんにもファンがついてるらしい。
武骨な容姿と意外とかわいい性格のギャップ萌えらしい。
きちんと経済効果も出せている。
作戦はうまくいきそうだ!




