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6-4 業界人、ワルモノを釣り上げる



翌朝――。


次々と集まる黒幕(と思われる人々)が廃ホテルに入るのを見届け、作戦を練る。


「とはいえ取れる手段はあんまりないよね」


「会長、よろしく」


「おう」


私は単独で廃ホテルに突入。

あっという間に無力化する。


「ツバメすごいなあ」


「わかってるオレたちでもなにも見えてないからな。中のヤツはわけわからんだろう」


「師匠、カッコよすぎです」


そして捕らえたのはハイクラス10人と、いかにもなんか企んでそうなスーツの男たちが4人。


一味は結束バンドで縛り上げてある。


「採用担当よりひとこと。副会長お願いします」


「みなさん、弊社の採用試験にご参加いただきありがとうございます。昨日の最終面接の結果ですが今回は残念ながらご縁なく不採用となりましたことをお伝えいたします」


一応のセレモニーのあと、全員を尋問。 

今回の企みはどうやら政府絡みだと分かった。


黒幕スーツ組に名刺持参のバカがいたのだ。


「派手に動いたからなあ。三上さんに預けよう。トミー頼む。河東さんにはオレから話す」


―――――――


その後わかったこと。

黒幕は経産省の事務次官だった。


「今回は未然に防げてよかったね。私の動きが軽率だったよ。申し訳ないね」


「とんでもないことです。私から力添えをお願いしました」


「ほとんど国家プロジェクトの開発事業ですよ。河東さんの根回しがなければ何年かけても無理な計画でした」


「開発の手伝いを三上に頼んだ流れで事務次官が嗅ぎつけたようだ。参事官に指示して探らせていたらしい。あとはどこまで上に繋がっているかだ」


「そこは分からなかったのですか?」


「まだこれからだね。誰かの指示なのは間違いない。少なくとも三上幹事長にバレないように動いていたのだからそれなりだろうね。わかったらすぐに教えるよ」


「「よろしくお願いします」」


―――――――


「政治って怖いんだな。それなりの上っていうのは大臣クラスだろ」


「ストレートなら経産大臣。変化球もある。いちばん最悪なのは総理大臣だ」


「えぇ、総理もあり得るのか」


「三上さんはたぶん違うといってたけどな。可能性の話として名を上げた。その評価としては、とても純粋な人で濁った野心がない分、万が一ほかに操られたら面倒」


「難しいよ。読み合いは苦手だ」


「それに長けてるのが政治家だよ。魑魅魍魎の世界だ。誰よりも戦略家なのにそれでいて真っすぐな三上さんがレアなんだよ」


「河東さんもだろうが、芳田さんがいたからだろうな。あのトライアングルはすごいよ」


「なんにせよだ。本当に怖いのはここからだよ。今回は所詮は金絡みの悪巧みでしかない。世界の終わりなんてことが絡んだらこんなもんじゃないだろう」


「信じる信じないの前に、そもそも事前告知が必ずしも正しいとは思えなくなってきたよ。めちゃくちゃになりそうだ」 


「先バレで殺された前任者たちとお前とじゃ能力の前提が違いすぎる。ツバメのはチートだから殺せるヤツはいないよ」


「自分はどうでもいいんだよ。守りたい人が守れなくなるのが怖い。いっそオレたちだけで十王子か森ノ島に引きこもればいいのかもって思うよ」


「無理だな。ツバメがそれを選んだ自分を許せるとは思えんよ。ブレるな。みんながついてる。がんばるんだぞ、ツバメ師匠」


「やめろトミー」


―――――――


私と冨川は河東さんの事務所で三上さんと会っていた。


「調べてみたら今回はお粗末な話だったよ。狙われたのは清山の利権だ。国家プロジェクト並の事業であるのにまだどこにも手垢がついてないことに気づいて甘い汁を吸おうと企んだ」


「邪魔をしようとしたりとかもっとこうなにか悪いこと企んでとかではない感じですか?」


「悪いのは悪いんだけどね。普通これだけの規模の事業ならそれなりなスキームがあるものなんだよ。契約上どこかに金が抜け集まる仕掛けがね」


「私たちのスキームにはそれが無い、か」


「純粋になんの汚れもないキレイな金でこれだけの経済効果を発動してしまった。実際に私の指示で大手のデベロッパーもゼネコンも動いたしね。民間プロジェクトだとはいえ、汚れがなさすぎたんだよ。だがもう大丈夫だ。裏で中途半端に手を貸すのはやめて、表のケツモチを私がやる。ということで公式に国が関与できる出番を作ってほしい」


「ツバメ、冨川くん、ファームしかないんじゃないか?」


「なるほど。三上さん、農水省でお願いします」


「承知した。それがいいだろう」


清山に大規模展開する農業ファームを農水省にバックアップしてもらうことにした。


「あとは医療機関のことだね」


「世界が混じったあと、日本はどうなりますか? 政府は機能するんでしょうか」


「まず無理だろう。交じり方にもよるが各所分断された中で個々に対応するしかなくなる」


「自衛隊もおそらくダメだ。モンスター相手なら猛獣駆除で動けるだろうが、もしツバメが危惧する感染型のゾンビとなれば、感染者を病気の人間として対応するのは間違いない。感染は止められず大変なことになるだろうね」


「やはりそうですか…。情報開示しかないか」


「能力かな。それでもおそらく無理だろうな。結局、それが本物だと認められても、だからといって異世界がやってくることの証明にはならない」


「確かに。だとすると手詰まりですね」


「世界の終わりに国が主導して備えるのは無理だ。いまの国の在り方を壊すことになる。カルトに乗っ取られた国家としか見られないよ」


「三上、防災と国防でどうにかならんか」 


「どちらもその線で検討させてるが、とてもあと3カ月で形になるようなプランを新規で発動するのは無理だ」


「なら進行済みのプロジェクトを少しでも新世界に使えるようにアレンジしてくれないか」


「もちろんだ。惜しまずやるよ、河東」


その後もあらゆる視点で新世界への備えについて議論を交わした。


今後はよりスピーディーにそして大胆に、河東さんを軸にして表と裏の動きが加速する。



だけど時間は足りない――。

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