1-4 業界人、チュートリアルに進む
「これよりチュートリアルに移行します」
神様の消えたあとに、突然、無機質な声が響く。
「え!? どういうことですか?」
『神より与えられし特殊能力の選択は終了しました。続いて基本能力のセッティングを行います」
基本能力のセッティング!?
もしやまだ取り返しが効くんじゃね?
『以下のコースからの選択をお勧めします』
『A.攻撃特化』
『B.防御特化』
『C.バランス型』
なるほど。わかりやすい選択だな。
攻め滅ぼすなら攻撃だろう。
だが守る前提なら防御、あるいはバランスを選ぶべきか。
ん、ちょっと待て。いまなんて言った?
仕事柄、相手が話した言葉には敏感な方だ。
先ほどの説明に気になるフレーズがあったことに気づく。
「ちょっと質問があるのですが。『以下のコースからの選択を "お勧め" します』ってことは、他にもコースもあるってことなのかな?」
『はい、お勧めしたコースの他にひとつ個性的なシークレットコースがあります』
「どういうものか、教えてもらえますか?」
『はい、シークレットコースは簡単に言えば度を超えたハイリスクハイリターンとなっています』
度を超えたって。どんだけよ。
「ちなみにどのような感じです?」
『最初の3つのコースには神からのチート能力のほかに+100の能力補正が確定します。これは世界トップレベルの基本能力を1としてその100倍とお考えいただければわかりやすいかと』
ふむ。それはとんでもないメリットだ。
ましてそれに神様のチートが上乗せされるのだからとてつもない能力を発揮するだろう。
『そしてもうひとつのシークレットコースにおいては大当たりかハズレかのルーレットを回していただいて能力確定となります』
「え、確かにリスクはあるけれど50%で大当たりならそんなに悪くないと思うのだけど」
『確率は50%ではありません。確率でいえばハズレ9,999に対して大当たり1の割合になっています』
神様はバカなのかな。
―――――――
シークレットコースはハイリスクハイリターンを遥かに超えた鬼仕様だった。
確実にハズレだろこれ。誰が選ぶんだよ!
てか、なぜそんなコースを用意したのか。
「いや、誰も選ばないよねそれ……」
『こちらは神の指示でつい先ほど追加になったコースになります』
「え?!」
つまりは私のために新設されたコースということか。
【超絶ウルトララッキー】という前代未聞の選択をみかねた神様がアレンジしてくれたに違いない。
神様ありがとう。
あとさっき馬鹿っていってごめんなさい。
「ではシークレットでお願いします」
『承知しました。ではこちらのルーレットをお回しください』
言葉とともに目の前に現れたのはハズレ9,999に対して当たりはたった1つしかないルーレット。
正直、当たりは目に入らないほどの薄さだ。
それでも私は迷いなく次々にルーレットを回していった。
――――――
結果。
HP→999,999
MP→999,999
攻撃 →9,999
防御 →9,999
魔法→9,999
スピード→9,999
運→∞
特殊スキル→超絶ウルトララッキー
とんでもないチートが完成していた。
――――――――
『おつかれさまでした。これで初期設定は終了となります。続いてアイテム選択に移行します』
「アイテム選択?」
『はい、世界の終わりに備えて何かひとつ、神の力でアイテムを差し上げることが可能です』
「具体的にはどのような…。差し支えなければ過去にどのようなものが選ばれたのか教えてもらえませんか?」
『勇者の剣、英雄の盾、魔法の杖、賢者の石など神の力が宿った神器を選ぶ方が多かったですね。文明によっては、飛行船や鉄道、船などを選ばれた方もいらっしゃいました』
なるほど。少しイメージが出来たような気がする。
それなりに文明が進んだこの時代に乗り物の類は無いな。
そして別の世界はこちらほどの発展をしていない。
銃などの飛び道具は向こうで有効でもこちらでは軍にはあるし国によっては簡単に一般人が手に入れることも可能だ。
勇者の剣がモンスター相手にどれだけチートでもマシンガンの連射を防げるかというと確信がない。
これは思ったより選択が難しいかもしれないな……。
「あ、そういえば魔法! いつから使えるようになるんですか? 本来は魔素が馴染むまで何世代かかかると言われたんですが、私は魔力を持ってますよね? 魔法が使えると思っていいですか?」
『はい、使えますよ。但し魔素がないこの世界ではまだ使えません。世界が混じってから使用可能になります。但し基礎能力はこのあと時間が動いた後にすぐ有効となります』
うーん。モンスター対策として半年寝かす覚悟で戦闘用に神器を選ぶか、準備期間の半年に有効な神器の選択をするか。
迷った末に私が選んだアイテムは―――
「アイテムボックスをください」