5-⑩ 業界人、航空自衛隊にいく
河東さん、ユカリさん、ナベさんと席を囲んだ。
ヒカリは楽しそうにしていたが、ナマイキナマタメはちっさくなっていた。
後日、彼はクランクアップと同時に坊主になったとヒカリから聞いた。
次の役の為だと願う。
そして翌日――。
私は調布にある航空自衛隊の基地を訪れていた。
「本日は貴重なお時間をありがとうございます。ツバメグループの金沢 燕と申します」
「伊東です。君がツバメくんか。よく来てくれたね。河東さんから聞いた通りの男だな」
伊東司令は自衛官らしくとても精悍な顔をした長身の方だ。
「河東さんに無理を申して司令にお目通りを願いました。河東さんとは以前からのお知り合いでしたか?」
「いまの防衛大臣は……まあ私の直属の上司だったからね。大臣と何度かご一緒させていただいたよ。……お身体のことは本当に残念だ」
「ご存じでしたか。先日も変わらずお元気そうでしたからいまだに信じられません」
河東さんの思い出話などを拝聴する。
聞いたことのない武勇伝も聞くことができて嬉しく思った。
「さて、パイロットを探しているそうだね」
「ええ、そうなんです。どなたかご紹介いただけますでしょうか」
「河東さんからは理由を聞かずに協力してくれと頼まれた。なので君からも詳しい事情は聞くつもりはない。ひとつだけ教えてくれないか。これは国のために役立つことか?」
「はい。間違いありません」
一切の迷いなく、力強く答えた。
「………いいだろう。『沢木陸尉を呼んでくれ』」」
しばらくの後、ドアがノックされ声がする。
「沢木、入ります!」
「ごくろう。やすめ。こちらは金沢さんだ。民間主導で動かしている特別プロジェクトの統括をされている」
「沢木であります!宜しくお願いします!」
「金沢 燕といいます。宜しくお願いします」
「貴君には基地を代表してこのプロジェクトに参加してもらう。これは防衛大臣勅命の特別任務でもある。心して当たれ」
「ハッ! 了解であります!」
「この任務は極秘プロジェクトである。この任に就くことは一切口外ならん。今日を以て貴君を一等陸佐とし、私の直轄とする。明日より金沢さんの下で任に就くように。詳しくは改める。以上だ」
「了解いたしました! 必ず成し遂げてみせます! 失礼いたします!」
私が驚いてるうちに、沢木さんは退室した。
ちょっと大袈裟では……。
防衛大臣勅命の極秘プロジェクトって。
……いや、概ね合ってるな。
「驚きました。こちらも身が引き締まりました」
「何ひとつ嘘はついていない。私にも大臣にも極秘なだけだ。明日、沢木の異動を隊に発令する。
午後13時にはここを出られると思うがどこに向かわせればいいかね」
「では13時に基地の正面ゲートの外に迎えに来る形でいかがですか?」
「いいでしょう。伝えておきます。どうぞ沢木を宜しくお願いします」
「ありがとうございます。最後に……大事な隊員をお預かりするのです。改めてお約束します。彼は日本を、いや世界を救います。その時をどうか楽しみにしていてください」
私は力強く宣言するのだった。
―――――――
翌日、私はふたたび基地を訪れた。
今日はゲートの外で待つ。
クルマはハマーH1にした。
運転はネモ。私は後部座席だ。
13時になり、基地の玄関に大きな荷物を持った沢木さんが現れる。
歩いてゲートの外にやってきた。
私はクルマを降りて出迎える。
「沢木、本日よりお世話になります! どうぞ宜しくお願いいたします!」
「こちらこそ、宜しくお願いします。では行きましょう」
クルマに乗ったところでネモを紹介する。
「沢木さん、ドライバーは私の部下の根本和哉です。ネモ、パイロットの沢木さんだ」
「沢木陸佐です! 今日からご一緒させていただきます!」
「根本です。ネモと呼ばれてます。強そうな方で頼もしいっす! 宜しくお願いしますね!」
挨拶が済み、クルマを発進させる。
「沢木さん、はじめに言っておきます。我々は民間です。隊とはやり方も接し方も異なるでしょう。チームメンバーも素人ばかりだ。馴染むまでは沢木さんにはヌルい現場に映ると思います」
「いえ。そんなことは……」
「気にしなくて大丈夫。事実です。でもこれだけは知っておいてください。我々は本気で日本を、世界を救おうとしています。そのことだけは覚えていてください」
「……! 了解であります!」
「今日から民間勤めだ。あえて言うよ。普段はヌルくていい。やるときはやってもらうし、私たちもそうだ。なのでまずはその口調をやめようか。他のメンバーと被ってるからね」
「な、なるべく努力するで……努力します」
「……がんばれ。今日は東京の拠点に案内するよ。まだ工事中だが形はできてる。メンバーも集めてあるから紹介するよ」
クルマは山間を通り抜け、一般道から入る最初のゲートへ。
ハンドサインを送りゲートが開く。
「ここが最初のゲートだ。目印は虹だよ。赤橙黄緑青藍紫。工事の案内看板に色のついた旗がついてる。7つの入口があるが、入れるところは毎日ランダムだ。今日は青。ハンドサインも7つあるからがんばって覚えてくれ」
「え!? あの……いや、これ」
「さぁ、メインゲートだ。ここはサインなし。センサーで人物特定してゲートが開く」
「え、なにもないですけど」
そのとき、迷彩をほどこした外壁が上下にスライドを開始した。
自衛官の目をも欺けたぞ。すごいな!
光学迷彩の最新版とか言ってたかな。
「上下に開けるのは時間がかかるが万が一外敵にゲートを突破されてもすぐに侵入させずに迎撃するためのものだ。もう少し我慢してくれ」
「……あ、あの………」
口数が少ないな。ヌルくて怒ってるのかも……。
「あとここ以外に大中小の隠しゲートが10カ所あるらしいんだよ。私もまだ半分しか見つけられてない。悔しいから自分で探してるんだよ。一緒に探そうぜ」
「……………」
あー、なんだか遊びみたいに思われたかな。
怒ってるんだろうな。反応なくなったよ。
まあ早く慣れてもらうしかないよな。
「ようやく開いたね。第一拠点へようこそ!」




