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5-6 業界人、第二拠点に到着する



翌朝。

初めて一緒に起きた。


目が合うとヒカリは嬉しそうに笑っていた。

オレも、笑った。


なにかが変わることもなく自然と過ごせそうだ。

これからも大事な人を守ろうと改めて決めた。

同時に知らない誰かの大切なものも等しく守られることを強く願った。


ルームサービスで遅めの朝食をとり、他愛もない話をしてのんびり準備をして会見場へと向かう。

遠方にもかかわらず会見場は盛況だった。

つつがなく会見が無事に終わった後、私はステージを降りて会場の出口へ向かう。

ひとりひとりに声をかけ御礼を伝えてマスコミを見送ったのだった。


森ノ島を立つ前に、ひと通りの挨拶をする流れでシオとふたりで話せるタイミングがあった。


「シオ、いろいろありがとうな。これから一緒に仕事ができるのを楽しみしてる」


「オレは熱山の市長や。人生かけてる。お前がいてくれて頼もしいわ」


「シオ、次に来たときにふたりで会える時間をもらえるか。話がある」


「……大事な話っぽいな。必ず時間作るわ」


握手をして船へ。私は最後の拠点へ向かった


―――――――――


ハマーを北に走らせて山梨へ。

清山高原まで2時間半で到着した。


近づくにつれ異常なほどの大型ダンプが行き交っていて迷う心配は全くなかった。

最後は10台ほどのダンプに護衛されてるかのように現地入りしたのだった。


「うわあー広いねー!」


後部座席から前に身を乗り出してヒカリが驚く。


巨大なゲートを抜けると広大な土地の遠くに建設中の建物が見える。


「とりあえず見えているところは全部拠点だよ」


「あちこちでなにか作ってるね。そりゃあんだけダンプが走り回るわけだ」


とりあえずいちばん大きな建物に向かって走る。

近づくと手を挙げる冨川がいた。


「おつかれさん、テレビで会見みたぜ。大成功だったな」


「誰かのカンペのおかげだよ。経済新聞の難しい質問にも簡単に答えられたよ」


「なにか問題はなかったか?」


「…週刊真実がなんかしつこかったくらいかな」


「……なんか掴まれたかな。動いたからな」


「社長ー! 私も頑張ったんだよー!」


「オレはとっくに社長じゃないぞ。ヒカリはいつまでそう呼ぶつもりなんだ?」


「だってねえ。ツバメは社長っぽくないし、冨川さんとか呼びにくいよ」


目ざとく呼び捨てに気づいた冨川はニヤニヤしてこちらへ意味深な視線を投げてくる。


「お望み通りのオチだろ」


「なんも言ってないけど? ツ、バ、メ」


「やめていただけますか、社長」

 

「決めたー! トミーって呼ぶね!」 


何も気づかないヒカリが明るくカットインする。

私は吹き出しながら言い直す。


「やめていただけますか、トミー」


「いちばん呼ばれたくないやつだよそれ。カンベンしてくれ」


いいぞヒカリ。ファインプレーだ。


クルマを降りてバギーに乗り換える。

いちいち建物も大きいので内覧もすべてバギーで回るそうだ。

巨大な建物を奥に進むと張り切って指示をしている花川くんを見つけた。


「あ、ツバメさん! ようこそ第二拠点へ!

――じゃあみなさん頼みますですよ――。

お待ちしてました。ご案内しますです!」


花川くんが運転を代わり、冨川は助手席へ。私はヒカリの隣に移った。


いちいち冨川がニヤけてうざい。


「トミー、前を向かないと危ないぜ、トミー」


トミーを流行らせることにした。


―――――――


バギーでメイン棟の内部を走る。


ここはもっとも重要な施設で、備蓄を管理する建物だ。

もし外周を抜かれたとしても強固な作りにしてここは守らねばならない。

いまは時間をかけて厚い外壁作業をしている。

 

「それにしても……想像超えたデカさなんだけど。ここまでデカくしなきゃならなかったのか?」


冨川がその理由と全体的な構造を教えてくれた。

説明がかなり長かった……。


「武器はこの話には関係ない。それ以外の話だ。まず資材は大きく2つに分かれる。この世界で手に入れたものと、新世界になってから手に入れるものだ」


わかる。


「さらにこの世界で手に入れたものを3 つに分けて考えた。まずハジメのマジックボックスで管理しなければならないもの。次に消費期限はあるがある程度は外でも管理しなければいけないもの。最後に期限のない外で完全管理していいもの、だ」


わかる。

 

「集まった量にもよるしバランスは後で決めるとして、まず最後のしばりがないモノはなにも考えず東京と熱山に振り分けたあとは全部ここにぶち込めばいい。食べ物なら缶詰や防災系の長期保存関係だ。ほかは資材だ。木材や鉄、アルミ、あとは車両に交換部品、重機なんかだ」


わかる。


「2番目は新世界直前にツバメがまるごと収納する冷凍冷蔵の倉庫関係だな。山橋さんが確保した倉庫を年末になったらここに倉庫ごと並べる。燃料も同じ考え方で地下にまとめる。ガソリンなんかもこのカテゴリーだ。プロパンの巨大タンクはさすがに外に置くけどな」


わかる。

(いかん、倉庫収納忘れたらえらいことになる。

メモメモ)


「最後に新世界後に手に入れるものだ。ツバメが持ち込むものは問題ないが、ぜんぶお前任せってわけにはいかない。非能力者での生活維持が大事だからな」  


確かに。

途中で私がモンスターに食べられちゃったらアウトだ。


「木材石材の切り出しで大型車両の搬入出にも汎用性のある作りが必要だ。そして一方では農業による収穫物だ。農作物はほぼデイリーで頻繁に出し入れしなきゃいけない。もちろんまとめてラフにやっつけたら警備がおいつかずアウトだ」


そりゃそうか。

考えなかったな。


「ということで、我らが天才花川くんが考えたのが、【メガマトリョーシカ方式】だ。


真ん中にモノを置く。

大量にモノを詰め込む上に、中を縦横無尽に作業車が行き交う。


この時点で相当にデカいハコになるよな。

それをガッチガチに囲む。


あとから追加で入れたいものをその外に置く。

またガッチガチに囲む。


外から大型車両で持ち込む大モノのルート。

毎日届く軽トラの小モノのルート。


あれこれ導線つないでたらこのサイズになりましたとさ。チャンチャンだ」


納得。安全と利便性考えたらこうなるわ。


「説明ありがとう。お前も花川くんも完璧だ。

このまま進めていい」 


「花川くんすごいよ! 天才だね!」


納得した私は巨大建造物を後にした。

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