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1-3 業界人、覚悟を決める



世界が混ざり魔法が存在する世界になり、最初にゾンビが現れる。

そしてドラゴンや魔王なんて存在も……。


「残された時間で備えよってことですね。で、どの規模で備えればいいんでしょうか」


『つくづく冷静でありがたいよ。でもそれは君の求める理想によるんだよ。「自分と自分の大切な人だけを守る」のか、「なるべく多くの人類を救いたい」のか。この世界は終わるけれど、混じり合った新しい形で世界は続くんだ。人類をどの程度残そうとするのか、その選択において君が背負うものは大きく変わる』


神の答えには少しだけ驚いた。


あまり詳しくはないものの、雑誌編集者として知る限りこの手の物語には神ないしどこかの王様から求められる成果がはっきりしていると思っていたからだ。 

ほんの少し考えたあと、私は答えを返した。


「正直、急すぎて判断がつきません。ですが、いま答えなければいけないのなら『できるだけ助けたい』ですかね。分け隔てなく救うなんて神様でもなければとてもじゃないけど自信はないです。

だからといって知り合いだけ生き残ればいいとも思えない。もちろんいざという時は知り合いを優先しちゃうと思いますが」


『当然だろうね。それを咎めたりはしないよ。では混ざる別の世界についてはどう考える?』


「どうやら向こうも混ざりたくて混ざるわけではないんですよね? だとしたら積極的に敵対して滅ぼそうとは思いません。もちろんゾンビと分かりあえるとは思いませんが。選べる道がみつかるなら、共存を目指すべきだと思いました」


『なるほどな。よくわかった。ある程度の情報は伝えたね。時間も少ない。ここで最終選択をしてもらおうか。守るものが少なければ生き残る可能性はグンとあがる。だが救うものが増えるなら、ましてあちらの世界も含めて含めて多くを救うというならリスクも増える。さて君はどうしたい?』


ほんの少しの躊躇を経て、私が出した答えは……

やはり同じものだった。


「変わりません。私は聖人ではないけれど、できる限り共存を選び、多くを救いたいと思います」


『よくわかった。では君に特別な力を与えよう。望むものを言いなさい』


神は唐突にそう告げた。


「へ? 選ぶとか、与えられるとかじゃなく?」


『さっき伝えた通りだよ。君が望む選択によるんだ。つまりは君が望む力を与えることになる』



これは困った。


エンタメ出版社とはいえどラノベには詳しくない。

アニメ化された有名作品を何話か観た程度の知識しかない。


『さあ、力を決めなさい。あまり時間がない』


「すみません、でもどんなものを選べばいいのか……もうちょっとヒントもらえたりしませんか?」


『限られた人間を救う道を選ぶなら三択だったのだがね。あるいは別の世界を滅ぼして全人類を救うというなら俗に言う勇者や英雄といったシンプルな選択でコトが足りたのだが』


「そういうの先に教えてくれたらいいのに!」


とはいえ、ゾンビはともかくも悪気のない向こうの人たちを滅ぼせばいいなんてことを前提にはできない。

なにがあった? なんのラノベを観たんだっけ。

スライム!? いや、あかんやろ、あの世界の最強格はドラゴンとかだっけ……いやいや、私がモンスターになってどうする!

魔法か、魔法だな! ってあれだよな、ロールプレイングゲーム的な発想で選んだらいいのか?

いや、有名なやつでも黒魔法とか、白魔法とかいろいろあったような。

あー、せめて選択式ならよかったのに。

考えても正解はわからず、時間ばかりが過ぎて焦っているところに神様が無情な言葉を告げる。


『なんだかパニックになっているところ申し訳ないが、私が顕在できる時間がもう残り少ないのだが。あと30秒ほどでタイムアップだ』


神様、ここにきてさらにパニックを誘発させるようなことを言うとは。

のんびり話してたこれまでの時間はなんなんだ! 


よし、落ち着こう。

こんな時の対応力でこの業界でのし上がったんだ。

考えろ、想定外のトラブルシューティングは得意だったはずだ。思いつく最適解をみつけるんだ。がんばれ私! てかもう時間ないだろこれ。よし、決めた。


「【超絶ウルトララッキー】で!」


神様も見えないけどおそらくは口をあんぐりと開けたままフリーズしているのだろう。


『え、なんだその選択! ちょっと待ちなさい、他にもいろいろあるんじゃないか? それじゃあまりにも曖昧すぎて、もっとこう―――』


プツン


無情にも時間切れのようだ。

明らかに世界の空気が変わり、神様の存在感は喪失している。

最後、明らかな選択ミスを匂わせて。


日頃、ささやかなラッキーで生きてきた私として思わず咄嗟に選んだものだったが、言われてみれば確かにとしか言いようがない。


灰色の時が止まった世界で、膝をつき放心状態の私に、またもや声が響く―――。



『神との謁見時間は終了しました。これよりチュートリアルに移行します』

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