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1-2 業界人、世界の終わりを知る



「世界が、終わる」


神様が教えてくれた言葉は、私が心を落ち着かせたと同時に、寸前にいくつか頭に浮かべた答えの中からそう遠くないものだった。


「よくある転生モノではなかったんですね。少し安心したようなちょっと残念なような…。でもなぜそれを私に?」


『いつではなく、なぜと聞くのは君らしいかな。そうだね、それを答えようか。それはね、ずばり、「なんとなく」だよ』


その答えはまったくの予想外だった。


「え? なんとなく?!」


『そう。実は君が神に選ばれし者だった! とか前世からの数奇な運命だった! なんてことはないんだよね。まさに偶然のなんとなく、だよ』


先ほどとは違い、あまりに拍子抜けした答えに私は少し脱力してしまった。


『まあ、完全なるまぐれでもないけれどね。君はほんの少し「なんとなくラッキー」な星のもとに生まれているんだよ。今回は数多い「ちょっとラッキー」に属する人類の中からランダムで君が選ばれた感じだよ』


ちょっとラッキーて。軽い。

まあそれはなんとなく分かるような気もするけど。


「でもそれをわざわざ伝えるということは、世界の終わりを回避できるチャンスが有るってことですよね。だとすると鍵になるのは『いつ』『どうやって』でしょうか」


『うん、カンが良くてありがたいよ。そのとおりだ。どうやら君はとっさの対応力はそれなりにあるようだね』


雑誌の編集をしていればそれなりの修羅場に巻き込まれることは多い。

そんな時こそ編集者の真価が問われる。


とっさの対応力こそこの業界には必要なスキルだと思っている。

言われたとおり、実際に私も突発的なトラブルに対してはそれなりに自信のある方だ。


『さっきも伝えたようにあまり時間もないのでね。しっかり聞いてほしい。心の準備はいいかな?』


姿は見えないまでも明らかに雰囲気がかわったことが神様の言葉からこちらに伝わる。


そして神様はさらに重いトーンで言葉を繋いだ。



『まず終わりの日は12/31の夜だ。深夜0時、新しい年の始まりと同時に、別の世界がこの世界に繋がってしまうんだ。


「……別の世界が繋がる」


よくある転生モノではなかったけれど、どうやら事態は似たものになりそうだ。

新年へのカウントダウンが終わると同時に別の世界が混ざり合うという。


「別の世界というのは?」


『簡単に言えばモンスターの世界だよ。この世界にも並行世界のパラレルワールドなんて考え方があるだろう。ぶっちゃけそれは正しいんだよ。そして隣り合う世界は稀に混じり合ってしまうことがある。それがほんの一瞬であったり、一部分であればいいのだか、今回迎えるそれはかなり大規模なものになると予想されている』


神様曰く、意図的な事象ではないようだ。


『実際、この世界は過去に何度か隣の世界線と混じったこともある。軽いものならモンスターがこちらの世界に迷い込んだりする程度だが、大規模なときは残念ながら世界を救えずに文明が崩壊したりしたこともあったけれどね』


とんでもないことをさらっと言われた。


「ノアの方舟とかアトランティスとか、今も伝わる伝承はありますけど。そういうものですか?」


『そうだね、この世界の伝説は当然過去に実際に起きたことから伝承されたものが多いよ。ということで、いくつか段階はあるけれど、世界が混ざることで最初に大きく変わるのは「物理概念」かな。わかりやすく君たちの世界で例えるなら魔法が使える世界になる』


あぁ、よくある話にどんどん近づく。


『文明的にはこちらほど進んではいない。だがモンスターはこちらでいう猛獣とは比較にならない脅威となるだろう。具体的には最初に現れるモンスターとしてはこの世界でいう「ゾンビ」が世に溢れかえることになる』


「げ、ゾンビですか。これまたわかりやすい」


『まぁネガティブな要素はそんなとこだね。ポジティブに捉えるなら魔法があるんだから同時に死んでしまった人を蘇らせることができる世界にもなるしね』


神様は普通に話すけれど、どうあれゾンビはゾンビ。

とてもポジティブには考えられない。


「ま、魔法が使えるなら人類も戦えるんじゃ」


『あ、それは無理だね。世界が混じったからってすぐに魔法が使えるはずがない。魔素が人類に馴染んて魔法を使えるようになるのは何世代かあとになるだろう。その頃には人類は淘汰されてるよ』


あまりに救いがない。そんなものにどうやって対応できるんだろうか。


「ゾンビのあとは?」


『いろいろ来るね。言えばキリがないけれどわかりやすく強いのはドラゴンとかね。魔王なんてものも存在するよ』


ドラゴンに魔王……。

もっとラノベを読んでおくべきだった。

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