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ゾンビが交ざる新世界までのカウントダウン 〜業界人が気まぐれな神からもらったチート能力で無双しながら現実世界を救う物語  作者: opocho


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4-1 業界人、業界人と語る



私とタクスケはテキサスから約ひと月ぶりに日本へ帰国した。


久しぶりの日本はさらに夏が進んで猛烈な暑さになっていた。


まずは六本木へ。

タクスケの店でネモとヒカリが集まる予定だ。

おおよそのことは連絡済みだが顔を合わせて話しておくことにした。


「ツバメさーん!!」


店に入るとさっそくヒカリが飛びついてきた。

散々注意しても懐きクセが治る気配がないのは困ったものだがこれが20歳の娘だと思えば、世の父親が羨む光景だろう。


「おつかれさまっす! お帰りなさい!」


ネモも仕事を円満に辞めてこれからはチームの動きに専念してくれる。

私が最も頼りにしている部下だ。

きっと活躍してくれることだろう。


集まったメンバーで改めてここまでの進捗を報告し合う。

波乱万丈だったテキサス攻略についての報告を終え、日本組の話を聞く。


「オレは仕事を辞めたあとは言われたとおりにひたすらキャンプ道具を集めてたんすけど……。もうめちゃくちゃ楽しかったっす! 結構いい感じで集まりましたよ! お金を気にせずアウトドアグッズを買い集められるなんて幸せすぎましたよ! あざすです!」


整理された購入品をリストにして渡してくる。

ノリは軽くお調子者に見えて、こういうこところはキッチリ仕事をしてくれるのがネモというやつだ。


「私はね、社長に引退の相談をしたんだ。最初はびっくりしてたけど、真剣なことはわかってもらえた。ごめんだけどツバメさんが絡んでることは社長には言っちゃった。世界が終わることは話してないけど、なんか大きな理由があるのは伝わってると思う」


「冨川とは向こうでも連絡を取り合ってたよ。単なる我儘じゃないことはわかってくれてる。会って話すことになってるから安心してくれ。今晩アポを取ってあるよ」


その後はリモートを繋いでテキサス組と居残り組の顔合わせをした。


ゴロー、アンナとアンジーはヒカリのことを知っていて大喜びだった。

向こうでも日本のドラマが放送されていてヒカリは大人気だったようだ。


そしてサバゲー好きなネモはマイクに食いつき、最後は彼のことを「師匠」と呼んでいた。

言葉が分からなかったようなので「マスター」って意味だと言うと『ジェダイかよ!』と爆笑していた。


紹介も終わり、今後について確認し合う。


日本でやることはまずは拠点の決定。


来週には不動産会社に行き、山橋さんが集めてくれた候補地の資料を見ながら打合せをすることを伝える。


そしてテキサス組のミッションを居残り組に説明し、今後、思いついた必要物資かあればテキサス組にリクエストすることを決めたところで今日のミーティングは解散となった。


そして私は冨川社長への説明のため、同じ六本木にある事務所に向かった。



―――――――



タクスケの店から乃木坂に向かい5分ほどで見えてくる大きなビルがヒカリの所属するプロダクションだ。


受付でアポを伝え、ゲストバッジをもらい最上階の社長室へ向かう。

エレベーターを降りると秘書が待っていてくれて、そのまま応接室に案内される。

ほどなくして冨川社長が応接に入ってきた。


「ツバメさん、おかえりなさい! わざわざご足労いただき申し訳ありません」


「こちらこそ、貴重な時間をありがとうございます」


挨拶トークをしているとドアがノックされ飲み物が届く。

秘書が退席したところで冨川社長がくだけた口調に切り替わる。


「ま、ここからはラフにいこう」


「そうか? 仕事に関わる話だがいいのか?」


冨川とは仕事を超えた間柄だが、公私混同はしないことがお互い暗黙のルールになっていた。


「ツバメ主導じゃないのは聞くまでもなくわかってるからな」


「どこまで聞いてる?」


「すぐにでも引退したい。理由は自分からは言えない。ツバメさんから聞いてほしい、とだけ」


「その内容でよくオレを信じられるな。聞こえ方によっちゃ明らかに男女のトラブルじゃねーか」


「ないない。ツバメなら先に仁義きるよ」


「ほんとオマエ買いかぶりすぎだろ」


「で、何があったんだ?」


「……お前にはそのままいうよ。……今年いっぱいでこの世界が終わる」



「…………そうか。終わり方は?」


冨川はひと呼吸おいただけで疑うことなく話を進めてきた。

私もストレートに答える。


「異世界と交じる。モンスターが溢れかえる」


そしてしばらく考え込んでから聞いてきた。


「まじるっていうのは漢字で書くなら混じるか? それとも交じるか?」


「変なとこから聞くんだな。そうだな、完全に溶け合ってほしくない。願わくばそれぞれの形は残したい。だからそう聞かれるなら『交じる』だな」


またしばらく考える。


「急にテキサスに行ったのはそれ絡みか?」


「ああ、金と武器を集めてきたんだ」


「………わかった。オレも仕事を辞める。チームに入れてくれ」



―――冨川はこういうやつだ。


神様の話もしてないしアイテムボックスも見せてない。

それでこの決断をする。



この業界は義理人情が基本だ。


ヤクザの言葉だがそのとおり、そもそも芸能はヤクザとは蜜月だったと聞く。

今では反社を排除するのが大前提の社会となり業界も変わったと言われているが芸能創成期を支えた関係がほんの数年で切れたとは思えない。


もちろん私も悪事は容認しない。


だがヤクザにも悪くないヤクザもいるんだろうなとなんとなく理解している。

言いたいのは成り立ちからしてこの業界では義理人情が大切だということだ。


頼む、受ける、そしてお返しする。


あの人の頼みだから受ける。

そこには絶対的な信頼がある。


あの人の頼みだけど受けられない。

そこには断固たる覚悟がある。


もちろん妥協もあれば打算もある。

謀略もあれば裏切りもある。

生き馬の目を抜くと例えられるくらいこの業界は厳しい。

だがその底には脈々と紡がれる貸し借りがある。


話が逸れたが、言いたいことはシンプルだ。


この業界において。

間違いなく誰よりも義理人情に厚い男が、たったいまその世界を裏切ったのだ。



ありがたい。

絶対に裏切らない本当の仲間がここにいた。

私は誰よりも信じられる右腕のチーム入りを喜んだ。






冨川 洋

45歳。独身。日本を代表する芸能プロの代表。

ツバメとは業界同期で新人時代からの付き合い。

学生時代は武道に明け暮れた。

空手、剣道の学生チャンピオン。

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