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冬のくろい影〜ゲントウくんはこれからどうしたらいいか悩んでいます〜  作者: おちゃつばめ
ゲントウとルーナと仲良くするには?編
9/23

第8話「アベリア・ギーラの懺悔」



何かがおかしい


自称アベリア・ギーラはアベリアちゃんなのだろうが、、


にしては言葉遣いが優しすぎる。


俺は今から何が起こることが確定しいる、しかし予想もつかない状況に慄然としている。


俺は刺されるのか?


脈絡もない不安に駆られる。


女は恨みがあると笑顔で刺してくる、というのをどこかで聞いたことがあった。


死ぬのは怖くない。


いや、怖い。


けど、しょうがない。という諦めに近い感情も持ち合わせていた。


「いきなり押しかけて失礼なことは承知で、お願いがあります。少しお話をさせて頂きませんか?」


やっぱりだめだ。


誰だこの人は?


分からない。


いや分かっているが受け入れ難い。


「つまらないものですが、こちらをどうぞ」


何やら高そうなお菓子を差し出してきた。


お店は知っている。


とても高級なケーキ屋さんだ。


お金持ちは違うな〜。


いや、この子はお金持ちでは無いはずだ。


あれ、もしかして毒でも入ってる?



流石にケーキを見過ぎたのか


「満足できるものではないのでしたら、また今度別のものを持ってきますので、気が使えなくてすみません。」


「あぁ〜。いや、大丈夫です。失礼しました。いやこの店のケーキは初めて見まして。」


ほっとしたようだ。


「そうですか。」


「それで何の用ですか?」


あ、話がしたいのか。


「はい。ゲントウさんとお話したいことがありまして。お時間よろしいでしょうか?」


「えぇ、大丈夫ですが。本当に失礼ですがアベリアさんですよね?リーサ学園の」


「はい。そうです。」


やっぱりそうか


「姉妹はいらっしゃいますか?」


「いえ、一人っ子です」


そういえばそれは知ってた。


「そうですか。今のはお気になさらず。時間は大丈夫ですが、場所はどうしましょうか?近くに喫茶店が有りますのでそこでいかがですか?」


「大変申し訳ないのですが、ゲントウさんの部屋ではダメでしょうか?」


へ?


ダメではないが、、


ゲントウはアベリアちゃんの過去のことを知っている。


男の部屋は嫌であろう。


男嫌いなはずだ。


あ。


合点がいった。


喫茶店で俺と二人でいるところを見られたくないのだ。


それは俺も嫌かもな。


「いいですよ。では狭いとこですが。あと呼び捨てで大丈夫です。ゲントウで」


「いえそれは、、、ではゲントウくんで失礼します。」


机にお茶を持ってきて


机を挟むように向かい合う場所で、ゲントウはベットに座り、アベリアちゃんは壁に立っている。


「ゲントウくん。いきなり押しかけて申し訳ございません」


そして腰を落とし座る体制に入る


「あのー。普段の感じの話し方でいいよ。別に誰かに言いふらすようなことしないから。俺も頑張るから」


違和感あるし


と言ってアベリアちゃんを見ると


土下座の体勢をしていた。


「この度は!、、え?」


ゲントウの言葉を聞いて、顔を上げてゲントウと目が合う。


ツーっと涙が左目から流れていた。


あれ、やばい。やらかした。


やっぱり俺がタメ口は馴れ馴れしすぎた?


女心をフェノールから習っておけば良かった。


「え?」


アベリアちゃんは困っているような顔をした。


そして目がずっと潤んでいる


「いや、申し訳ないです。俺は女性と喋る事が余りないので、何が失礼なのか分からない次第で、本当に申し訳ございません。」


「え?いや?そんな、、そんな、、ごと、、ゔっゔっ、、私のほうごぞ、、ちがいま、、す。私が悪いんでず、、ごめんだざぃ!、、、ごべんなざい!ごめん、なざい!ごめんなざい!」


あ゛ぁーっと叫ぶように泣き始め



アベリアちゃんはそこから泣き出してしまった。


一生泣き終わらないかと思える程泣いていた。


時おりごめんなさいと。呟きながら。


懺悔するように。


俺はどうしたらいいのか分からなかった。


彼女は産まれて初めて泣いたかのか、子どものように、無様に、全てを吐き出すように泣きじゃくった。




――――――――――――




「本当に申し訳ございません。」


土下座の体勢のままアベリアちゃんは謝った。


「えーと、大丈夫?」


アベリアちゃんは泣きそうになったのか力をぐっと入れまた謝る。


「私が泣いたのは、同情を誘ったのでもなく、私が未熟だったからなので、お構いなく罰を与えてください。勝手に泣いて申し訳ないです。」


あれー


アベリアちゃん泣いたことに謝ってるのだが!


話が見えん。


「あのー。何か謝られないといけないことを俺はされたのでしょうか?」


「本気で仰ってるのですか?」


敬語やめて欲しい。


「私は自分勝手な理由で、あなたの大切なお金を奪いました。それだけでなく酷いことも言いました。こちら奪ったお金をを返します。これで許されるとも思いません。倍にしてお金を返させていただきました。どうぞ受け取り下さい。」


なるほど。


これが喫茶店を嫌がった本当の理由か


お金はまずいよな、怪しい雰囲気が出てしまう


「えーと。あれはなんとも思ってないからいいよ。アベリアさんそんな悪いことしてないよ」


「お金が足りないと言うのであれば、この身体好きにしてもかまい、、、、?え?どういう意味ですか?」


え?なんて言った?


この子なんて言った?


「だから気にしてないから。怒っても無いし」


「本当に気を使わなくて大丈夫ですので。お金も受け取ってください。同情は無用です。この酷い女に制裁を」


同情もしてないって、、、


「お金も要らない。制裁もない。あなたは何もしてない。いつも通りの生活を送ってください。」


「まず、お金は受け取っていただかないと」


話聞かない系か?


ルーナみたいに女の子は話聞かないのか?


「そのお金は、実は俺が窃盗して奪ったものだから、俺のお金じゃない。貰えない」


「そういうことであろうと、私こそ恐喝して奪ったもので、私が貰うなど絶対許されないことです。」


「あー。じゃあ、フェノールにお金あげて。俺はフェノールから窃盗したから。」


「それでは、ゲントウさんからフェノールさんに渡してください。ゲントウさんのお金ですのでどう使おうと文句は言えません。ただ、私の願いとしては是非ゲントウさんに受け取って頂きたいです。」


さん付けになってる。


めんどくさいな。


これ以上の増額が出来ないと言うことはもうお金がないということだ。


貰えないな。


フェノールに介してこの子に渡そう。


「うーと。まず何を悪いと思ってるの?」


「ゲントウさんのお金を暴力で奪いました。」


別に暴力は脅威ではなかったが。


「いやいや、俺は君にお金をあげたんだ。なんでお金が欲しかったの?」


少し恥ずかしそうにしたが、すぐ元の顔に戻り


「フェノールさんと一緒ご飯に行くのに毎日では、お金が足りなくなってしまったのです。」


もう敬語はやめないみたいだ。


「素晴らしい純愛だ。可愛いもんじゃないか!いつも一緒にご飯が食べたいだなんて」


流石にこれは納得しないだろうな。


でも本当に俺はそんなにこの動機は悪いとは思わない。


「そんなことは無いです。私はゲントウさんを見下し、何も文句も言えないだろうと冷静に悪事に働いたのです。」


正解じゃないか。


あなたの方が上であろう。


「恋愛してる乙女なんて冷静なわけないでしょう」


この言葉を、フェノールに、聞かれたくねえ。


俺が恋愛を語るとは。


絶対馬鹿にされる。


「確かに通常の精神状態じゃなかったことは間違いないです。でも、ゲントウさんにはとても自覚的に近づいたのです。」


「でも、そう思っている本人が気にしてないならもういいんじゃない?」


「そういう訳にはいきません!」


そうか、そういう訳にはいかないのか


ゲントウはショックを受けた。


人生がより険しいものになるのが分かった。


「それに人のものを奪ったのです。償いとしてそれ以上のものを返さなければいけません。私が納得できません」


ゲントウはアベリアを部屋に入れるんじゃなかったと心の底から思った。


「じゃあ、君。もし俺が人を殺したら俺は死んだ方がいいと思うか?」


「え、、、、分かりま、、せん。」


「人を殺したらどうやったら償いができると思う?」


「…。」


「とりあえず、俺は不可逆的なものは元に戻らないことを知っている。今の俺は許すことも許されることも明確なルールはない!自己満足できるかどうかで決まることも多い。人生は続いていくんだ。過去の為に今があるのではなく、未来のために今があると俺は思う。俺はできるだけこれからみんな楽しくあって欲しい。自己嫌悪だけのせいで次の幸せを諦めて欲しくない。どうしてもというなら考えがある。もし、俺がルールを決めていいのなら従って欲しい。いいか?」



「はい。」



アベリアは涙をため、口を噤んだ。




「罰はこれからの自分の幸せを考えること。その方が辛いかもしれんが、従ってもらう。」


「はい。ありがどう、、ござびまず、、あ゛ぁーゔっゔっ、、、」





被害者が許すと決めたのだ。




あとは自分を、許せるかどうか。




それでこれは終わりなのだ。






なるほど




確かに



優しい子だね




アベリア・ギーラさんは









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