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冬のくろい影〜ゲントウくんはこれからどうしたらいいか悩んでいます〜  作者: おちゃつばめ
ゲントウとルーナと仲良くするには?編
8/23

第7話「山あり谷ありライナは可愛いなり」

シャキッ!シャキッ!



玉ねぎを切る。あらかじめ玉ねぎを冷やしていたので催涙物質が出ることは少ない。


玉ねぎを切り終わったタイミングで、カットしたベーコンと一緒に火を入れて焼き色が着くまで炒める。


野菜炒めにしては心もとないフライパンの中に牛乳と小麦粉を入れる。


先程までの寂しい状態から一気に見栄えが良くなる。


この工程をしている時、ゲントウはいつも料理に運命的な魅力を感じる。


どれも元を辿れば野菜、動物、香辛料全て野性的な見た目をしているのに、人の手で加工し、決まった工程をすることで、パッと見ただけでも本能的な欲望が発生する。


今回は1度時間を置いて温め直すため少し焼きを甘くして完成させる。


3人分程度のグラタンが完成し、容器に移し替えリーサ学園の調理場からフェノールの寮の方の部屋に持っていく。


壁を4回ノックする。


バタバタっと音がして玄関のドアが空く。


金髪の爽やかな男が髪を濡らして出てきた。


「わざわざありがとう。ゲントウくん。」


「いや、主催したのに体調を崩した俺が悪い。」


「無理に作らなくてよかったのに。」


「昨日、材料買ったから無駄になるより良い。」


「今は体調大丈夫なのか?」


「割とよくなった。少し頭痛がするが」


「今日、せっかくだしちょっとでも顔を出したらどうだ?」


相変わらず、フェノールの優しさが痛い。


「いいんだ。治りかけが肝心だから。うつす訳には行かない」


「いつまでキツかったんだ?朝キツかったなら作らせて申し訳なかった。」


「朝は大丈夫だった。昨日は一日中辛かったが、朝起きたらだいぶマシになった」


「おまえはそういう人を心配させることをしない方がいいと思うぞ。もう少し周りを頼ってもいいと思う。」


「気をつけるがしょうがないこともあるからさ」


「嘘をつく時はバレないようにしてくれ。他のことも心配になるから。」


「そんな事する気は無いが、できるだけ頼るようにする。ただ、人に迷惑かけるのは苦手なんだ。」


「ファシリアとライナちゃんを困らせないようにな。悩みならいつでも聞くぞ。」


「そうだな。そうしたら、できればあんまり学校で声をかけないでくれると助かる。フェノールと俺では身分として釣り合わない。本人がどう思おうと周りからよく思われない。」


「そんなことお前も思ってないだろ。俺がお前が他人と関わることでお互いによっていいことしかないと思うけどな…。良い奴だからな。」


「俺が良い奴なわけあるか。迷惑がかかるのは目に見えてる。自分にとって1人の方が楽なことが多いのは間違いなんだ。もちろん、フェノールの家族とも関係を切りたいわけじゃない。ただ、学校だとよく思わない人もいるってだけだ。」


ふぅーとフェノールは一息吹いた。


「ゲントウはもっと他人を信じろ。問題は心を開いていないことあるように感じる。いつかお前の味方は待ってるだけになり、辛くなる時が来るぞ。そうなる前に、、」


「分かってるよ。」


「そうか、ならいい。長く喋って申し訳ないな。」


「そうだな。モテない所作だったぞ。」


「それは困る。今日はありがとうな。せっかく作ってくれたのに説教っぽくなっちゃって」


「俺が悪いからしょうがない。」


「お前はなぁ〜。まあいいやありがと。」


「うん。また明後日の学校でな。」



ゲントウはスッキリとした。


鏡を見ると肌が2歳若返ったようにツヤツヤだ。


いわゆる、人と話すだけで気持ちが楽になる!ということではなく、本当にモヤモヤが解決したと思ったからである。


もう終わる。


静かな日常が始まると。


これでいつも通り。


今回は自らのアクションが多くて全く大変だった。



頭の中で偉い人が″大儀であったぞ”と、褒めてくれた。


ベットに横になり深い眠りにつく。


母の夢を見た。


母と一緒に料理をしている。


「ゲントウ、料理を1番美味しくするのは食べてくれる人なのよ。美味しそうに食べてありがとうと言って貰えるだけでいつでも頑張れるのよ。」



「ゲントウが料理を作る時は真っ直ぐな気持ちで作りなさい。そうしないといつかご飯の時間が辛くなるわ」



お母さん…


僕は悪い子です。


もう一生良い子になれないみたいです。


楽になってはダメなのです。


美味しい食事なんてしてはいけないのです。


「ゲントウ、誰も本当は悪くないのよ。」


「ゲントウ、あなたはきっと色んな人に愛されているわ。」


「ゲントウ、愛してくれている人を憎しみで見失わないで」


「ゲントウ、あなたなら大丈夫」


「私がいるわ」


ゲントウはペンダントを握りしめる


憎しみなんて別にないんだ、、


お母さん


――――――――――――



玄関から音がしてゲントウは目覚めた。



時刻は夕方くらいだろうか


あまり、いい目覚め方ではなかった


玄関の鈴が壊れているため呼ぶにはノックしないと聞こえないようになっている。


コンコンと2回ノックがした。


誰だ?


知り合いでは無いのはわかった。


コンコンと、またノックの音がする。


緊張で力が入る。


おかしい。


来客の予定は無いはずだ。


ベットに潜って音が聞こえないように音を塞ぐ。


どれくらいの時間だったのだろう。


10分ほどに感じたが、実際は1分も経ってないのかもしれない。


また、ノックの音がした。


今度は4回なった。



フェノールだということが分かり、緊張の糸が解れる。


ドアを開けると乾いた髪の金髪爽やかボーイがいた。


何か話したそうなそんな顔をしていた。


「どうぞお入りください」


――――――――――――




「ゲントウ、ご馳走様。大好評だったぞ」


「おう。今日はどうだったか?」


「うーん。そうだな。ヴァイオリン久しぶりに弾いた。」


「そうじゃなくて、ご飯はどうだったか?」


女性陣がメロメロになっているのが容易に想像できる。


「美味しかったよ。みんなでグラタン食べて」


「そんなに量は多くなかったはずが、」


「おう、だから女性陣に作ってもらった。アベリアちゃんが普段自炊してるから料理上手ってのが意外で、酒のつまみみたいなのばっかだったけど美味しかったよ」


「そうか」


1番の成果だ。


「その時、お前に伝えたいことがひとつできてな」


「なんだよ」


「俺は料理が上手な女の子は結構好きらしい」


「やっぱりそうだと思っていたが、けどわざわざ俺に言うひつよ…」


「って、言ったらゲントウはどんな反応するのかなって」


「えっ、、?どういう、、」


フェノールが近寄る


「ゲントウやっぱり俺に隠してることあるだろ?今日帰る途中でたまたまルーナちゃんに会ってな色々話を聞いた」


ルーナか


色々察しているらしい


強く隠したいとは思わないが


「そんなことは無い。わざわざ言う必要があることはない。」


「そうか、無理言う必要も無い。俺はお前を信じている。

あと、よく分からん勘違いを訂正しとこう。俺は別に料理が上手な人が好きというわけではないぞ」


え?あれ?やばい!


「え?そうなの?じゃあ、どんな女の子が好きなんだ?」


「普通に可愛い子とか、優しい子とか、形綺麗な子とか」


俺は体を四方から引っ張られる感覚に陥る


そんなに引っ張られては心までもがちぎれてしまいます〜。


どうやら俺がやったことはアベリアちゃんにとってもフェノールにとってもなんの意味もなかったみたいだ。


俺を、また脅しに来るのかなアベリアちゃん



解決出来なかった。



せっかくストレスなく行けると思ったのに



「それは申し訳ないことをした」



「ひとつ聞きたいが、ゲントウはなんで俺が料理が上手な人が好きだって思ったんだ?」



「あー、それは簡単だ。お前はマザコンだろ。」


気持ちの悪いタイプの


「フェノールのお母さんも料理が上手だったから。お前はそれをよく自慢してたし。てっきり」


ため息が聞こえた。


「ゲントウって意外と頭悪いとこあるよな…」


「お前に言われたくない」


確かにフェノールに色々話を聞いていたらこんな失敗はしなかっただろう。


しかし、俺にとって人に頼るというのは勇気と体力が必要


その壁は厚く高い。


「お前でもできないことはある。1人で何とかしようと思うな。アベリアちゃんのことは俺に任せろ。何があったかは本当は知らんが迷惑かけないように取り合ってみるから」


「なんのことかよくわからんが別にアベリアちゃんのことなんか俺は気にしてない!そういうなら、可愛いとか、自信になるような事言ってあげればいいよ。」


「それなら今日言った。」


「あ?」


「アベリアちゃんに、君は可愛くて、優しくて、綺麗な胸で魅力的だよって」


優しい子という所に引っ掛かる。が、


相手がフェノールだと優しいのだろう


女はフェノールに甘いな。


ただ、発言の別な所に問題がある気がする。


「フェノールよ。彼女でもない女の子にそんなこと言うなんてやめとけ。それに女に騙さられていることに気づけ。

いつか恨みを抱えた女の子に刺されるぞ!

そして、発言がとても気持ち悪い。俺はお前にひいている」


こいつはどういう恋愛遍歴を持ってんだ?


「お前さっき俺に言わせようとしたくせに。俺は本当のことを、言ったまでだ。」


まあ、これで俺に嫉妬してくることもないだろう


助かったのは事実だ。


そもそもこれからフェノールが俺を誘うことはないと約束できたし。


嫉妬の原因は自分の自信のなさだ。


不安になると人は嫉妬する。


埋めてあげるだけの何かが必要だった。


俺を見下すか


自分に自信をつけるか


そんだけ好きな人に褒められたら大丈夫だろう。


できれば、アベリアちゃんの方がゲントウくんより好きと言ってほしかった、が。


流石に不自然だ。


「フェノールの気持ち悪いのが再認識出来て良かった。俺はフェノールの鬱陶しい誘いを断る方法を悩んでただけだ。もう大丈夫だ」


「完璧な人間はいないってことよ。俺はお前が頭が悪いということが分かって嬉しかったよ。」


「そうか、用がないならもう帰れ。俺は長居させれるほどお前のこと好きじゃないからな」


もう、何を言っても俺の作戦は無駄になりそうだが、


バレてんだろ、お前に


「俺は言うこと素直に聞けるくらいゲントウのこと好きだがな」


じゃーなーっと言って嵐はストレスと共に去っていった。


明日は一日中寝よう。


フェノールに少しの感謝をして



――――――――――――




人生は山あり谷あり



悪いことがあっても必ず良いことが来ると言われている。



ゲントウはこの言葉に詐欺のようなカラクリを感じる。



まず(谷)がある。


その次に(谷)′がある。


この場合、その次の(谷)′はまだ最初の(谷)の可能性があるのでは、と考える。


最初からずっと(谷)が続いてるだけなのでは


次の(山)までは必ず(谷)だろう


よって連続する(谷)′=(谷)


(谷)”=(谷)も同様である。


Q.E.D│



雨が降るまで雨乞いみたいな


迷子の息子を探した親が迷子とか


男は浮気をするとか


女は嘘をつくとか


ライナは可愛いとか


なんちゃって♡





ゴホン。




つまり、なにが言いたいかと言うと


ライナは可愛いということ。



ではなく、予想通りに行かない事は沢山あるということ。


一日中寝れると思ったら、来客が居たということ。



――――――――――――



想像してなかった人物が家に来た。






ノックの音がした。


回数を振り返る。


コンコンコンゴン


4回だ


フェノールか。


今日はせっかくの休みだし帰ってもらおう。


ドアを開ける


「フェノール、申し訳ないが今日は疲れてて、、て?」


「突然押しかけてすみません。フェノールくんから部屋を聞いて来ました。」


フェノールにしては声が高い。


女性だとわかるのに3秒かかった。


丁寧な挨拶をした女性は、アベリアちゃんのそっくりさんだった。


双子がいたのか?


姉?妹?


どっちでもいいか、、


どちらにせよ、アベリアちゃんとは違う柔らかな印象を受ける。


「えーと、どちら様でしょうか?」


「え、はい。私はアベリア・ギーラと言います。謝りたいことがあって伺いました。」


あれ?本人?



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