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冬のくろい影〜ゲントウくんはこれからどうしたらいいか悩んでいます〜  作者: おちゃつばめ
ゲントウとルーナと仲良くするには?編
5/23

第4話「グラタンと家族」






フェノールの家がお金持ちの家だということはすぐ分かる。


というかここら一帯みんなお金持ちだろう


かといって、フェノールの家は過度に派手な印象は受けず、むしろ質のいい家具が適材適所に設置されよく考えられ上品に感じるくらいだ。


ライナも家の高級感に驚いたのだろうか


そわそわしている


「フェノールくんの家ってすごいね」


「嫌になるよな」


「ゲントウくんはそんなこと思ってないでしょ」


「まあな」


玄関の鈴を鳴らす。


チリンチリンと音が鳴る。


反応がない


玄関をノックをするか、、


と思ったところで玄関が開いた


「よぉ、遅かったな〜。ゲントウ。あー。お待ちしておりました。そちらの方は?」


とりあえず軽くフェノールを殴る


「遅れて申し訳ない。ちょっと青春をしてて。こちらが俺の古くからの友人であるライナだ」


「へぇ、女の子を連れてくるとは予想してなかった。それよりなんで殴るんだよ」


お前のせいで遅れたからだ


「ライナです。いきなり来てしまってすみません。今日はよろしくお願いします。」


「いえいえ、1人連れてくるかもしれないのはゲントウの方から聞いてたから構いませんよ。」


「フェノール、その喋り方じゃなくても大丈夫だぞ。ライナはどうせお前にはなびかない。俺が阻止するから」


「別にそーゆーわけじゃない。初対面は丁寧にしてるだけだ。俺はお前みたいに初対面で人を馬鹿にしたりしないんだ。まあ、入れよ。」


「お邪魔します」

「お邪魔します」




ライナが耳元で囁く。心地のいい声だ。


「2人が思ったより仲が良くてびっくりした」


そんなことはない


「ライナがそう思うのは、きっと俺に知り合いが他に居ないからだ」




――――――――――――




「ゲンちゃ〜ん。待ってたわよー!」


フェノールのお母さんが廊下から走ってきた。


「お母様。お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。こっちが友人のライナです。」


「よろしくお願いします」


「あら、可愛らしい子ね〜。どうぞゆっくりしていってね」


「はい。ありがとうございます。」


「ゲントウくんがいいならここに住んでもいいのよ。ノルちゃんは寮に行ってしまって部屋が空いてるのよ。フェリシアも喜ぶわ」


ノルちゃんはフェノールくんのことである。


フェリシアはフェノールの妹ね。


私はどうやらフェノール母に大層気にいられているらしい


「いえいえ、寮の生活も満足いくものですので。」


「そうなの?ゲントウくんに毎日ご飯を手伝って貰いたいのに」


フェノールが遠くから催促してきた。


「ゲントウ!早くご飯作ってくれ。お腹空いた」


「ノルちゃんはキッチンにあるパン食べてていいわよ!」


フェノールの声が聞こえなくなった。


「お母様。皆さん待たせても悪いですし私も今から作りますのでお手伝い願いますか?」


「えぇ、下準備は終わらせてるのですぐやりましょうか」


正直、作り方を教えているのでフェノールのお母さんでも、作ればするだろう。


ただ、フェノール曰く、母はゲントウが作ったのが食べたいらしい。




「私、ちょっと緊張してきたんだけど、ここにいて大丈夫かな」


ゲントウの後ろにいたライナが心配そうに声をかける


「大丈夫って。みんないい人だよ。冷たくするなんてことがあったらフェノール殴っとくから」


「ふふっ。それは、大丈夫だよ。私も料理手伝った方がいい?」


「いや、フェノールの妹と話をしてて欲しい。

いつも俺が話し相手だから料理している間話し相手が欲しいはずだから。

フェリシアちゃんはちょっと人見知りするかもだけどライナは大丈夫だと思う。」


「分かった。フェリシアちゃんと話をしてみる」




――――――――――――




フェリシアちゃんのことはゲントウが図書館で話すこともあったのをライナは知っていた。


フェノールのお母さんのことは聞いてなかったのでドキドキしたがいい人そうでほっとした。


ゲントウくんは優しい人なのになぜか友だちが少なく学校では1人でいることが多かった。


ダイニングにいくとフェリシアちゃんとお父さんと思われる2人が待っていた。


「お父様。フェリシアちゃん。お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。」


ライナも頭を下げる。


お父さんと思われるが答える。


「あぁ、よろしくゲントウくん。」


「フェリシアちゃん。この人は前にお兄ちゃんが話してたライナさんです。料理してる間仲良くしててね」


ライナは自分のことを話してくれたことに驚き、照れくさくなった。


「はじめまして。フェリシアさん。よろしく」


「はじめまして。フェリシアで大丈夫ですよ。お兄ちゃんから話は聞いていました。想像してた通りの優しそうな方で、楽しみにしてました。」


「え、フェノールくんからも聞いてたの?」


「あ、いえ。ゲントウお兄ちゃんから聞いてました。」


ゲントウが横から説明をする。


「フェノールはフェリシアに、フェノールって呼ばれてるんだ。お兄ちゃんは基本僕のことだ」


「呼び捨てなんだ」


どうやらフェノールくんはこの家では意外と権力が小さいみたい。


そして、ゲントウくんはフェノールくんの家族に思った以上に愛されていることが分かった。



――――――――――――



「それではお召し上がりください」


「はい。いただきまーす。」


献立は《ゲントウ特製グラタン》と《若鶏とレタスのサラダ》、《コーンポタージュ》とシンプルなものになっている。


「ゲントウくん流石だわ。とても美味しいわ。お婿に来てくれないかしら?」


「お母様、いつでも作りに来ますから、お婿はちょっと…」


「うむ。ゲントウくん。とても美味しいよ。お婿に来ないか?」


「お父様。以下同文です。」


「ゲントウお兄様。とても美味しいです。本当のお兄ちゃんになってくれませんか」


「考えておくよ。」


「フェリシア!俺という完璧なお兄ちゃんがいるだろう!」


「フェノールはそのまま寮でずっと生活してください。私はゲントウお兄様で十分ですわ」


「ゲントウくん。楽しいね。」


「あぁいい人達だっただろ?」


「うん。本当に。あと、ゲントウくん。」


「うん」


「グラタンありがとう。美味しかったわ」


「お安い御用ですよ。ライナお嬢様」



――――――――――――



「それではお邪魔しました。」


「お邪魔しました。」


「本当に泊まっていってもいいんだからね」


「いえ、ライナと一緒に寮に戻りますので」


「お兄ちゃんと、ライナお姉様また来てください!」


「うん。」


「また来ます。フェリシアちゃん。」


「夜くらいから気をつけて2人とも。また、学校で」


「おう!また明日!」


「さようなら。」


「それではお父様お願いします」


「うん。学校前までで良かったかな?」


「はい。お願いします」


時間も遅いということで、お父さんが船で近くまで送ってくれることになった。


「最近は物騒な話が多いから2人とも明日からも夜は気をつけなさい」


「はい。わかりました。」


シャドウ絡みだろうか、、、


船に乗るとお父さんは静かに漕ぎ出した。




「ゲントウくん。なんか温かくて良かったね。」


獣人なのを心配でもしてたんだろうか?


「そうだな。家族っていいよな。」


「………うん。いいよね。」


「ライナの両親にも会いたくなってきたな。」


「私もとても会いたくなったわ。」







ゲントウの両親は、ゲントウが小さい頃亡くなった。



リーサ学園の寮に行くまではライナの家に居候していた。



ライナはゲントウの両親が亡くなってからずっとゲントウの心配ばかりをしていた。



料理や洗濯を積極的に手伝ってくれていた。



変わらず、明るく接してくれるが、無理してるようにも感じる。



迷惑かけないように、そんなことばっか考えてるようにも見えた。



ゲントウくんがリーサ学園の中等部に入学しようとしている話を聞いた時には、両親も驚いていた。



私も驚いた。



彼はまだ12歳になったばっかだった。



またゲントウくんを1人にさせてしまうと思い、ライナはリーサ学園に入学することを決めた。



本当は中等部のタイミングで入学したかったが



私の学力では厳しく、親の反対もあり3年が経った高等部からの入学になった。



その間、定期的に手紙が送られ、年1回は顔を見せに来てくれた。



意外と元気そうにも見えた。



私は早く彼と一緒に学校に行きたかった。



リーサ学園はゲントウくんもいるし、友だちも出来ればなんてことないだろうと思った。



それでも両親の居ない生活に埋めることが出来ない寂しさを感じていた。



毎日お父さんとお母さんに会いたいと思った



ただの一人暮らしなのにこんなに辛いだなんて




そう思うと同時にゲントウくんの気持ちは私では計り知れないと、



そう思った。



かける言葉も未だに分からない。




そんなゲントウくんに対して私にしてやることがまだ見つからない。



彼にできなくて私にできるものが見つからない。



ただ、いつ彼が崩れていってもおかしくない。



ゲントウくんはそんな不安定さをずっと持っていた。



私は無力だといつも落ち込んでいた。



自分を責めていた。



そんな落ち込んでいる私に、彼はいつも穏やかで優しく話をしてくれた。



優しさが申し訳なく感じることも多々あった。



歯がゆかった。





学校でゲントウくんを見かけるといつも真剣な表情をして、彼の周りには緊張の空気が包んでいる。



話しかけては、早く彼の笑顔が見たい。



私は早く安心したい。



大丈夫だよね?



もしかしていま、辛いことでもある?



不安でもあるのかな?



学校は楽しいのだろうか?



本当の気持ちを私に打ち明けてるのだろうか?



私と一緒にいるのは楽しいだろうか?





話しかけると


私の不安を吹き飛ばすように、彼は私に気付いて毎回笑顔を向けてくれた。



私の幸せの1番の瞬間だ。



彼は真っ直ぐに優しく笑う。



空気が明るくなるのが分かった。



私は彼のその眩しさに全ての感情を奪われる。



穏やかな、温かい時間だ。



今日はそんな笑顔を沢山見られた。



ほっとした。



羨ましくもあった。



ただ、やっぱり嬉しかった。



今晩はよく寝れそうだ。







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