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冬のくろい影〜ゲントウくんはこれからどうしたらいいか悩んでいます〜  作者: おちゃつばめ
ラケナリアと仲良くするには?編
12/23

第11話「シバタ先生」



ゲントウの小さな手が血で赤色に染っている


もはや誰の血なのかも判別できない


頭の中全ての負の感情が最大で


今の精神状態を一言で表現できないほど頭の中はぐちゃぐちゃである


とにかく最悪である


最悪でも足りないくらいだ



血は既に乾ききって肌が乾燥し痒くなる


ボロボロになったゲントウにもっと悲惨な状態の母が励まそうと穏やかな笑みを浮かべて視線を向ける


涙を溜めている瞳は辛そうにも嬉しそうにも見える


そして希望の無いこの惨状には、似つかわしく無い優しい言葉をゲントウにおくる


「誰も本当は悪くないのよ。あなたは悪くないわ。私は大丈夫よ。辛くても長生きしなさい。」


お母さん


行かないで


ごめんなさい


僕が悪い子だから


1人にしないで



ゲントウは心の奥底で小さく叫ぶが体に届かない


母と子は少しずつ距離が離れていく


ゲントウの呼吸は荒くなり動こうとするが


ただその状態を見届けることしかできない





「ゲントウくん!ゲントウくん!もう授業終わったよ」


ここ数日おなじみの茶髪娘が目の前にいる


「授業終わるまでずっと寝てたけど大丈夫?顔色悪そうだけど」


「ああ、大丈夫だよ。寝不足なだけです。昼休み仮眠とったらすぐ良くなる」


「そう?ならいいけど」


「それより何か御用でしょうか?」


「ゲントウくん。私が誰か分かってる?名前覚えてる?」


分かっているが、こう改めて聞かれると不安になる。



「ルーナさんでしょ。名前を覚えてるか、わざわざ確認しに起こしに来たの?」


「覚えてるならいいわ。あなたが初めましてみたいな態度とるから気になったのよ。声をかけたのはそれが目的ではないわ」


「ではなにか?」


「今日の放課後、時間あるかしら?ちょっと付き合って欲しいのだけれども」


ゲントウは急いで周りを伺う


この前、足をかけてきた男子生徒が居るのを確認し憂鬱な気分になる


傍から見えば男女のデートのお誘いとも取れる話に多くの生徒が意識を向けている


気がする、、


「えーと、何をするんでしょうか?」


「何するかによっては付き合ってはくれないって言うことなの?」


あたかもそれが悪い?と言う感じに少し不快感を感じていた。


「そーゆーことではないけど、、」


「じゃあいいじゃない。時間はあるの?ないの?」


答えは決まっている


「申し訳ないです〜。今日は〜ちょっと用事が〜」


と言いながら教室をソサクサと出ようとする。


「そう。ならしょうがないわね」


教室の出口付近にいる男子生徒の塊に警戒しながら刺激しないように廊下に出る



ゲイに近づくな。襲われるぞ。



と、男子生徒の集団とゲントウにだけ聞こえるくらいの大きさの声がした。



男子生徒A、B、C、D達がねちゃっと笑う



このクラスは敵しかいないと想いがゲントウの歩くスピードを早くする




急募 平和で穏やかな日々



あなたの優しい心分けてみませんか?


ここでしか得られない達成感があります

どんなものでも構いません

やる気のある平和はゲントウまでご連絡ください







――――――――――――





朝、シバタという士官クラスの先生に呼び出されたので先生のいる部屋に向かう。


シバタ先生の授業を受けることはほとんどないが縁あってよく話す方の先生だ。


向かう途中、廊下を出てふらふらと力の無い歩き方をしている女の子とぶつかってしまった。


女の子の方はゲントウと目が合うなりひぃっと一瞬驚いて、失礼だと思ったのか咳払いをして強ばった笑みを浮かべてきた。


「ごめんなさい。私ぼーっとしてて。」


「こちらこそ俺も不注意でした。」


とお互い謝った。



俺はやはり怖いオーラがあるのだろうかと小さなショックを受ける。


ゲントウは士官クラスの教室の前を通りできるだけ目立たないように移動する。


特別棟では主に士官クラスの教室と先生の部屋がある。


ゲントウがここに向かう目的は先生の方にある


【シバタ】と書いてある扉をノックをせず入る


「よく来たな。入れよ」


中に入ると急いで扉を閉め窓際の大きな椅子に座っている人物に話しかける



「あんたが読んだんだろう?今日、俺を呼んだ理由はなんだ?不良先生」


「まあ、立ち話もなんだから座れよ」


態度がデカめの先生は、背が高くガッチリとした体型というよりはスラッとしている。


眼光は鋭く生徒からも恐れられているらしい。


「別に構わないが、できるだけ早く用事を終わらせてくれよ。疲れてんだ、いろいろあっ」


喋るのを遮るようにシバタ先生のほうから勢いよくボールが飛んできた


避けることは出来たが後ろの窓を気にしてキャッチを判断した。


想像したよりもボールは軽くゲントウの右手を弾き前にこぼれる


ボールを拾いたくなったが次の攻撃を警戒しシバタの方に目を向ける


「この程度のボールをキャッチできないなんてお前は確かに疲れてんな。体だけじゃなく心も疲れて、なんか悩みでもあるんだろ」


「いや、ただの寝不足だ。それに思ったよりボールが軽くて意表をつかれたんだ」


どうせ何か仕掛けてくると思って警戒はしてた。


シバタと話している時が気が抜けなくて1番疲れる。


「ゲントウ。お前はもうちょい周りの人間を頼れ。自分で何とかしようとし過ぎだ。」


「なんの事でしょう?」


「どうせまた、昔のことで悩んでんだろ。話してみろよ」


唐突な提案だったが、心当たりはあったのでとぼける態度はやめた




どうやらこの人はなんでもお見通しみたい


「シバタさんはなんでも俺の事分かるな。別に大丈夫だよ」


「え!本当に昔のことで悩んでたのか?」


「そうだよ」


この人はカマをかけたようにも見えるが、本当に分かっているようにも見えて、本心がつかみにくい。


「溜め込まず味方に話してみろよ。」


そうだな。少しは楽になるか


「別に大丈夫だ。」


罪は多くの場合許される。


俺も許されて楽になりたいと思う。


ただ、許されたいと思う心があるということがいけないようにも感じる。



「味方を大切にな。それに自分も。」


「おう」


「また話に来いよ」


「いや、めんどくさい」


カッカッっとシバタが笑う



じゃあまた、と言って出ようとした時



コンコンっとノックの音がする



「どうぞー」


「失礼します」


あ、知ってる人


「もう少し待ってね。この子ともうすぐ話終わるから」


「はい。お構いなく先生」


と入ってきた生徒がゲントウをみてあっと声を出す


「ゲントウくんなんでここにいるの?」


「ルーナさんこそ。シバタと、いやシバタ先生と知り合いなの?」


「なに。君たち知り合いなの?」


シバタの質問を無視してルーナさんに話しかける


「俺はこのやさぐれ先生から朝呼び出しかかって来てるだけだ。もう用事は済んだから大丈夫だよ。」


「そうなんだ。それより昼休みの時間休まなくてもいいの?」


「これから取ろうかと」


「もしかして、放課後時間ないって言ったのは嘘だったの?」


完全な嘘ではない。


寮のご飯を作らないといけない。


「こいつ、7時までは時間あるからそれまで大丈夫。」


シバタ、余計なことを


「そうなの?ゲントウくん」


「まあ、そうだけどそんなに時間はないから、、」


「じゃあ私、放課後校門で待ってるから」


「待ってるから」


「シバタ先生は黙ってて。じゃあ、少しだけでもいいなら」


「わかった。ありがとう」


はぁぁーめんどくさい


最近、ライナよりルーナと話してる気がする


「それでは失礼します。シバタ」


「呼び捨てすんなよ。」


「まあ、ありがとう。」


「お礼はライナに言っとけ。あんまり心配させるなよ」



ライナか、なるほど。



――――――――――――




フェノールの本名はフェノール・ルピンと言う


ルピンが姓である


そんなルピン家の会話は妹のフェリシアちゃんから始まることが多い


「フェノール、ゲントウお兄ちゃんは次はいつ来るの?」


「ゲントウは最近女の子の相手で忙しいからな」


「それ本当なの?フェノールがゲントウお兄ちゃんに余計なことを吹き込んでないでしょうね」


「何言ってんだ。あいつも男だ。女の子とイチャイチャしたいんだよ。」


「フェノールと一緒にしないで。その人はライナさん?それとも別の女の人?」


「別の女子だよ。2人くらいがゲントウに興味を持ってるな。」


「そうなのか。彼女じゃないよね?」


「ああ、違うはずだ。」


「可愛い?ゲントウお兄ちゃんは好きなタイプ?」


「可愛いいぞ。ゲントウが好きかは分からん。」


「そっかー。よく考えたらフェノールは女の子なら誰でも可愛いから参考にならないね。これから家に来ることが減ることないといいけど。2人もかー。怖いなー。」


「まあ、俺はカッコイイからもっとモテるけどな」


「キモイ。そんなこと言うやつのどこがカッコイイの?ゲントウさんの方が28倍カッコイイよ」



「ゲントウくんに春が来ましたか」


フェノール母はしみじみと言った。


「何とかうちのフェノールと遺伝子交換して息子になってくれないかな〜。血って努力で繋がればいいのに」


フェノール父は心底残念そうに言った。


「父さん。ゲントウと遺伝子的に本当に家族になりたいのか。俺はもう要らないの?」


「フェノールはもう要らない。とっとと女の家にでも行けば」


「フェリシア〜。せっかく家で晩御飯食べてるのにみんな酷いよ〜」


「フェノールよ。ジョークだ。お前のことはちゃんと愛しておる」


「おおお!父よ!」


「ゲントウ君のグラタンには負けるがな」


「なるほど。次会うときは俺はチーズが似合う男になって戻ってくるよ」


「ちゃんといい焼き色つけるのよ」


「了解です。マザー」







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