プラチナエルフの里
異次元カバンから包みを出して、メモと一緒にエルフに渡すメイト。
「これは?」
「ほんの挨拶がてら外交のために用意しました。メモはレシピです」
「ほう。受け取っておこう。もてなそうぞ、客人」
ギフト君がベンソンの母に付き添い、白い箱の封印は解かれたらしい。
そのまま加工場へ運ばれ、メイトとケビンは客人としてあつかわれた。
鳥の丸焼きが出され、葡萄酒を飲んで急な眠気におそわれた。
目が覚めたのは夜で、部屋を出て月をながめていたメイト。
そこにケビンが起きてきて、メイトを背後からくるむように抱きしめた。
「ベンソンのしでかしたことは、言わないほうがいいと思う」
「そうね」
「おそらくだが、ベンソンの思い人は・・・義理の母親だ」
「うん、少し悲しい恋だね」
「そうだな」
「ベンソンに、もう会いたくない」
「ああ、そうだな」
メイトはケビンの腕を握りしめ、しばらく夜風にひたった。
そして数日後、『ゆめのあと』の装飾完成日。
久しぶりにギフト君に会った。
構図の話し合いでいっぱいだった、と言われた。
「ちゃんと食べていた?」
「大丈夫だよ」
「うんうん」
ギフト君に付き添っているベンソンの母がメイトに言った。
「君が分けてくれたあのハルサメというものは何でできているのかな」
「ああ、春の雨」
「魔法で保存しているのか?」
肩をすくめてみせると、近々調べてみようとベンソンの母はご機嫌だった。
装飾された『ゆめのあと』お披露目。
そこには、思わず目をみはるような、美しいネックレスがあった。
プラチナネックレスだ。
感動しているメイトの首に、ケビンがそのネックレスをかけた。
今日は黒と金色の膝丈ドレス姿のメイト。
「えっ」
「これは君の分、こっちは俺で、あっちはギフト君の」
「ん?」
「ひとつは本物で、もうふたつはニセモノだ」
「なるほど」
ケビンのタートルネックの上着に、そのネックレスはよく似合った。
今日も全身黒のコーディネイトだ。
ギフト君はリボンに『ゆめのあと』をつけて、首に飾っている。
「ふたりとも可愛いよ」
「ありがと~」
「あら、ありがとう」
「おじさま、キモイ」
「ははは」
これからメイトは、『ゆめのあと』の管理人になる。
自分が持っている『ゆめのあと』が本物なのかどうか、知らされないらしい。
ケビンはまた、少ししたら雑務に追われるんだそうだ。
だったら、ジェイミーのお茶会をしましょうと馬車の中で話になった。
異次元カバンからカツサンドを取り出し、食べると眠くなってきた。
気づくと見おぼえのある場所を飛んでいた。
片方に五百本、もう片方に五百本植えられた桜並木、千本桜道。
地面に着地してそこを通ると、家路についた。
花曇りの時、風に舞い、また桜の花びらが儚く散っていく。
言の葉の
三千世界
ゆめのあと
まだ寝ぼけているのか、どこからかそんな詩が聞こえてきた。